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安倍総理の志は死なない!!

東京の緊急事態宣言、疑われる「露骨なバッハ対策」

 どう考えても「五輪」の影がちらつく。政府が新型コロナウイルス特別措置法に基づく3度目の緊急事態宣言を東京、大阪、兵庫、京都の4都府県に発令する方針を固めた。主要メディアでも報じられているように対策本部を23日に開いて正式決定するという。


 10都府県に「蔓延(まんえん)防止等重点措置」を適用している最中だが、4都府県に対してはより強い効力を促す同宣言を発令することになる。発令期間は26日から5月9日までの2週間を軸に調整される見込み。


 しかしながら、この大型連休に焦点を当てた期間設定を巡っては国内の各方面から「コロナ対策ではなく、東京五輪対策だ」などと皮肉交じりの猛反発を招いている。それはSNSやネット上で飛び交う意見を目にしても明白であり、とにかく国民の怒りがひしひしと感じられる。


東京都の緊急事態宣言、「最長でも5月16日まで」
 4都府県の中に、関西の3府県に加えてシレっと東京が組み込まれたことも国民全体、特に東京都民の不信感を広げている。すでに有識者の間から「感染爆発」と警鐘が鳴らされている大阪府の21日の新型コロナウイルス感染者数は1242人で過去最多を更新。医療施設の病床は逼迫しており、同じ関西の兵庫県と京都府も同様に危機的な状況へと追い込まれている。


 その一方、東京の21日の感染者数は843人。決して少ない人数ではないが、2度目の緊急事態宣言が発令された直前の1月7日の感染者数が2520人であったことと比較すると今回の上昇ペースは幾分緩やかなようにも思える。それでも東京都の小池百合子知事は「先手先手の対応が必要不可欠」「スピード感を持って」などと述べ、大阪府・吉村洋文知事の後を追うようにして緊急事態宣言の要請を政府側に行う姿勢を見せた。


 しかも吉村知事が宣言の発令期間を「3週間から1カ月が適切」と要望しているのに対し、小池知事は「ずっと長いと、また途中で慣れが来てしまう。できるだけ効果が高く、だらだらしない方法が良い」と否定的な見解を示しつつ26日発令で最長でも3週間後の5月16日までとする対案を示して牽制した。


IOCバッハ会長は5月17日に来日予定
 小池知事は「ゴールデンウイーク前のタイミングで(宣言を)ピシッと出すことが必要だ」とも力強く口にしたが、これらの言葉に同調する都民は正直に言って多くない。緩やかな上昇で関西ほどの「感染爆発」となっていない東京都が、やや不自然なタイミングにおいて緊急事態宣言の対象エリアに組み込まれたのは「あの要人が来日する前にジワジワ上がり続けている感染者数の上昇を是が非でも抑え込んでおきたいからだろう」との見方がもっぱらである。


「あの要人」とは、来月17日に来日予定となっているIOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長だ。


昨年11月に来日し、都内で組織委の森喜朗会長(当時・右)とともに記者会見に臨んだトーマス・バッハIOC会長(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)© JBpress 提供 昨年11月に来日し、都内で組織委の森喜朗会長(当時・右)とともに記者会見に臨んだトーマス・バッハIOC会長(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)
 来日中には菅義偉首相や小池知事との面会も調整されている。「何としてでも東京五輪を強行開催し、成功させたい」というのが政府、都の2トップの共通理念。世界中から視線を注がれるバッハ会長の来日時に万が一、東京都が「感染爆発」を引き起こして緊急事態宣言発令へと追い込まれるような流れになってしまったら、開催地・東京のイメージは地に落ちて安全面にも深刻なダメージを残すことになってしまう。


 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会(組織委)に属する関係者は「そんな最悪のシナリオだけは、多少の犠牲を払おうとも避けたいという思惑が政府と都の中にはある。次のバッハ会長の来日が東京五輪開催決定の“最後の一押し”になると踏んでいるのです。つまり、ここでの失敗は許されないということ」と解説している。


「バッハ対策」の緊急事態宣言は逆効果を生む可能性も
 なるほど、確かに小池知事が「最長」と位置付けている宣言解除日のリミットはちょうどバッハ会長が来日する前日の来月16日だ。ここまで分かりやすいぐらいに露骨過ぎると、3度目に東京都へ発令される緊急事態宣言が国民の間から「コロナ対策」ならぬ「五輪対策」もしくは「バッハ対策」などと揶揄されるのもうなずける。


 こうした東京五輪開催とバッハ会長の来日を念頭に置いていると疑われる次の緊急事態宣言発令には組織委の内部からも強い難色を示す声がジワジワと強まりつつある。特にここ最近「パフォーマンス性」まで顕著な形で露になってきている東京都・小池知事に対しては“開催慎重派”の前出・組織委関係者が実際に「宣言発令によって、都民ひいては国民全体から東京五輪開催への不満が爆発する結果となりかねない。もう少しうまく調整してもらわないと完全な逆効果となってしまう」と苦言を呈し、こうも続けている。


「とにかく小池さんは“やっています感”を余りにも出し過ぎ。菅首相ら政権中枢とも『東京五輪開催』の共通理念があるとはいえ、それ以外は隙間風が吹く政敵同士だから歯車がまるで噛み合っていない。バレバレのパフォーマンスを続けているだけでは東京五輪開催反対の声をどんどん強めるだけだ。


 今、東京五輪は政府と都のトップ2人が意地の張り合いをしながら“開催ありき”で突き進む傾向が強まっている。主役であるはずのアスリートは蚊帳の外に置かれ、大会組織委員会に属する幹部クラスでさえもなかなか意見が通りにくい状況となっているのは非常に気がかりだ」


組織委と政府・東京都、噛み合わぬ歯車
 思えば21日、組織委幹部がメディアのコメントに窮する出来事もあった。この日開かれたIOCの理事会に組織委・橋本聖子会長、武藤敏郎事務総長らがオンラインで参加。23日で開幕まであと3カ月と迫る東京大会の準備状況等に関して報告した後、海外メディアから「仮に大会中に緊急事態宣言が出されたらどうなるのか」との質問が向けられたものの武藤事務総長は「仮定のご質問への回答は控える」と言葉を濁した上で「我々は徹底したコロナ対策を講ずることで開催に向け準備している」と抽象論を述べるにとどまった。


 組織委は東京五輪開催に奔走しているようでいながら、実のところでは政府や都と歯車が噛み合っていないことを、この幹部の言葉によって図らずも証明してしまった格好だ。


 しかもコロナ絡みで東京五輪の重要案件に入るはずの「大会期間中における緊急事態宣言発令時の対応」について「回答を控える」という“失態”も世界に発信してしまった。組織委幹部が本来ならば明らかにしなければいけない大事なことを口籠ってしまったのだから「やはり政府や都のトップと意思疎通がうまくいっておらず、話し合いもできていないのではないか」と疑念を抱かれても仕方があるまい。


 4都府県への緊急事態宣言発令は果たして効果が現れるのか。少なくとも「五輪・バッハ対策」と冷ややかな目を向けられている東京都への有効性はどうしても疑問が拭えない。