Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

実態も知らずに飲食店への協力金を攻撃の対象にするのはやめよう

 From 室伏謙一
  @政策コンサルタント
   /室伏政策研究室代表


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 「新型コロナウィルスの感染拡大」を理由とした緊急事態宣言、東京や大阪、兵庫、京都から始まり、まるで「バスに乗り遅れるな」とばかりに各地に拡大されていきました。そもそも今回の緊急事態宣言が始まった段階では、ゴールデンウィーク明けの5月11日には解除されることとされていましたが、5月31日まで延長され、期限を目前に控えて更なる延長も取り沙汰されています。


 今回の緊急事態宣言においては、飲食店に酒類の提供をしないことが要請されました。しかし、飲食店において酒類を提供すること、飲酒することと新型コロナへの感染、感染拡大との関係性についてはなんら根拠は示されておらず、なんとなくのイメージで全てが語られていることについてはご承知のとおり。そうなれば、「いい加減にしてくれ」とばかりに、自分たちの生活を守るため、なんと言われようと店を通常どおりに開けて、酒類を提供する店が出てくるのも自明の理。


 それでもまだ十分な補償、すなわち失われた粗利の補償が行われていれば素直に応じた店がほとんどだったでしょう。しかし、一日6万円の協力金ではとても補償にはなりえません。実際、今回の緊急事態宣言再延長が取り沙汰され始めたことに関し、「正直これ以上はキツイ」、「もうヤバい」といった声も聞こえてきています。特に深夜まで営業していて、深夜の時間帯も繁盛しているようなお店の場合、その時間帯の売上への依存が大きい場合等は、時短営業による影響はかなりのものでしょう。


 ところが、「協力金を1日6万円をもらってウハウハな店がある」、「1日6万円は通常の1日の売上よりも多いので儲かっている店がある」といった話が一部で報道されて以降、「6万円はもらい過ぎだ」、「協力金6万円は無駄遣いだ」などという話が散見されるようになりました。


 更に店の規模が小さければ1日6万円はもらいすぎなどという奇妙奇天烈な話まで飛び出す始末。


 こうした意見や主張は実態を反映したものなのかと言えば、当然のことながら、ただの思い込み、イメージ、想像・妄想の世界です。例えば東京都の飲食店の全店舗の一昨年の緊急事態宣言が発出されている期間と同じ期間の売上やコスト、利益等を実際に見て言っているのかと言えば、そうではないことは明々白々だからです。こうしたデータはある程度の規模で開示が義務付けられているような場合を除けば知ることは困難ですから当然ですね。


 ではなぜ私がそうした戯言を全否定できるのかと言えば、別の観点から、別のデータを活用することで類推しているからです。そうしたデータとは、店舗の大まかな客単価、席数、営業時間から考える回転数、家賃相場、人件費等ですが、最も手っ取り早いのは、前3者で考えることです。


 まず客単価とは、その店のお客さんが一人当たり平均していくらぐらい使うのかを表す数字であり、厳密に言えば上回ることの方が多いですが、食べログ等に掲載されている数字からも知ることができます。例えば、客単価が1万円のお店で、席数が10席の場合、満席状態で売上は10万円になりますが、営業時間が18時から23時半までの場合、同じお客さんが開店から閉店までいることはほぼありえず、大抵2回転しますから、2回とも満席として1日の売上は20万円になります。


 席数が10席ということは、カウンターだけの店か、カウンターと小さなテーブル席の規模は小さなお店ということですが、協力金1日6万円ではとても足りません。


 客単価が半分の5千円になったとしても、同じ前提条件であれば1日の売上は10万円ですからとても足りませんね。


 これが更に深夜遅くまで営業しているお店なら、例えば2次会3次会でも使われるお店として、遅い時間帯は食事はそれほど多く出ずに、おつまみ程度しか注文されないことが多いわけですが、そうした場合は客単価が単純に下がるかと言えばそうとも言えず、食は出ないが酒はよく出るということはありえます。つまり客単価は変わらないということもありえるわけです。そうなれば、なおさら1日6万円では全く足りないわけです。


 少々長くなってきたので、例示はこの辺で止めておきますが、飲食店の売上を想定するに当たっての考え方が少しはご理解いただけたのではないでしょうか。


 この辺り、飲食店に多くの友人や知合いがいてそうした話もしているとか、実際にそうしたビジネスに関わったことがあるとか、そうしたことがないと中々分からないと思います。(私は結構いますし、相談に乗ったりもしてきています。本稿には実際の飲食事業者からの生の声をしっかり入れています。)そうです、分かりにくいのです。にもかかわらず、「1日6万円は高い」などという根拠なき暴論が出ている、これが実態なのです。


 本来であれば、特に大都市圏では、6万円では足りない場合の方が多いと考えられ、そちらの方を問題視すべきなのですが、緊縮脳が蔓延した下でのressentimentが問題意識のベクトルを逆方向に向かわせているのでしょう。


 無論、6万円でウハウハのところもあるでしょう。店舗が自家所有で家賃がかからない、投資もしたが既に回収が終わっている、従業員は家族なので人件費が低く抑えられている、そうした場合が当てはまると思いますが、長年使ってきた器具は更新投資をしなければいけませんし、店内の改装が必要になるかもしれません。したがって、毎月の利益の中から、そうした場合に備えた基金のように積み立てておくことも必要です。


 ということで、「6万円でウハウハ」と言っても遊び金に使える場合は限られてくるわけですが、そうした人が遊びでもお金を使ってくれれば、それで多少はしのげる事業者もまたいるわけで、むしろいいことなのです。


 「アイツらもらい過ぎで遊びやがって」と思うのであれば、ケチケチと国民への給付を出し渋る政府・財務省に、「俺たちもよこせ!」と声を大にして訴えるのが正解だと思いますよ。


 実態も知らずに飲食店への協力金を攻撃の対象にするのはやめにしましょう。