Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

スクールバス導入よりも大切なこと

From 施 光恒(せ・てるひさ)
    @九州大学




こんにちは~(^_^)/(遅くなりますた…)


自民党は最近、全国の公立小学校にスクールバスの導入を検討しています。
スクールバス導入を、自民党が作ろうとしている「こども庁」の目玉政策にしたいという思惑もあるようです。
(「スクールバス導入を要請 自民勉強会が緊急決議案」『産経新聞』2021年6月8日付)
https://www.sankei.com/article/20210608-EOKVODXN4FNBZMY3KATMTI3URE/


報道では、子どもの安全確保ということが前面に出ていますが、スクールバス導入案が出てきた背景にあるのは、少子化や過疎化に伴い、小学校の統廃合がどんどん進んでいることです。


特に、地方では人口減が著しいこともあり、多くの小学校が閉校となりました。全国の小学校数は、1990年(平成2年)には2万4827校でしたが、2020年には1万9738校となりました。実に、20%以上も減ったのです。5校に1校はなくなったわけです。


小学校が減るに従い、児童の通学距離は伸びていきます。特に、田舎ほど影響が大きいでしょう。それを補うために、スクールバスを導入しようというのです。


小学校の統廃合のため、児童の通学距離が伸びているという現状を考慮すれば、スクールバス導入は理解できなくはありません。スクールバスが必要となった地域は多いでしょう。


しかし私が危惧するのは、スクールバスが導入されれば、ますます統廃合が進むのではないかということです。


おそらくそうなるでしょう。統廃合に反対する保護者や地域の関係者を説得しやすくなるからです。統廃合の流れにこれまで以上に拍車がかかるのではないでしょうか。


ここで強く思うのは、一応、「保守政党」と目されている自民党の政策がこれでいいのかということです。自民党は、いったい何を保守したいのでしょうか。


本来、「保守」が守るべきは、国や地域社会の文化や伝統、大切にされてきた価値といったものでしょう。文化や伝統、価値観といったものを継承し、次世代に伝えていく主な場は、家庭や地域社会です。ですから、保守は、家庭や地域社会を大切にしなければならないはずです。


しかし、スクールバス導入の背後にあるのは家庭や地域社会の衰退です。双方とも衰退し、維持できなくなった表れが少子化であり、過疎化なのです。


小学校は地域社会の中核です。小学校がなくなれば、祭りや学校行事、伝統芸能、つまり地域の文化がなくなってしまうことが多いのです。


例えば、山本由美氏(和光大学教授、教育行政学)は、統廃合問題について扱った新聞記事のなかで次のように指摘します。


「学校は、地域の伝統芸能を伝承する重要や役割も果たしている。神楽や田植歌などを子どもたちが継承し、祭りや学校行事で演じている。統廃合で閉校すると、その伝統や文化が消えてしまう」(「進む学校の統廃合、まちづくりに影響 拠点廃止に不安の声」『朝日新聞』2020年1月29日付朝刊)。


また、山本氏は「小学校区のエリアは住民自治の基礎単位。長年、福祉や保育などはこのエリアごとに運営されてきた。学校がなくなることで、地域の活力を失いかねない」とも、同記事中で述べています。


したがって、自民党が本当に地域の文化や伝統、あるいは地域社会の活力を守りたいと思う保守の政党であるならば、学校統廃合には慎重でなければなりません。また、統廃合を進めざるを得ない現状を招いた責任を重く受け止め、近年の政治のあり方を問い直すべきでしょう。


短期的政策として、つまり対症療法としてスクールバス導入を進めることはいいとしても、中長期的には、スクールバスの話など出てこないような政策、つまり家庭や地域社会が存続し、栄えるような政策をとる必要があります。


現在のところ、自民党が保守しようとしているのは、「自由貿易」路線でしょうし、グローバル化路線でしょう。さらに言えば、事実上、自民党が守ろうとしているのは、グローバルな投資家や企業の利益なのです。


米国では現在、保守派のなかでも、自由貿易路線やグローバル化路線に疑念を抱く勢力が強くなっています。市場経済の行き過ぎをこのまま認めていくと、家庭や地域社会が完全に崩壊してしまうという懸念のためです。


前回の本メルマガでも触れた米国の若手保守論客オレン・キャス氏は、政策パラダイムの次のような転換を訴えています。


つまり、政策の中心的目標とすべきは、人々が自分の家庭や地域社会をしっかり支えていくことを可能にする労働市場をつくり出し、維持することだというのです。こうした労働市場の存在こそ、国や社会の長期的繁栄のカギだと主張しています(Cass, O., The Once and Future Worker: A Vision for the Renewal of Work in America (Encounter Books, 2018))。


このような労働市場をつくり出し、維持することを中心的政策目標として設定し、この目標達成の手段として貿易や金融、社会保障、教育などその他の政策のあり方を考えていかなければならない。そう主張しています。


「保守」とは、国や地域社会の文化や伝統を守り、その発展を重視する立場だとすれば、キャス氏の議論は筋が通っています。


自民党など日本の保守派も、新自由主義的なグローバリズム路線と決別し、家庭や地域社会の存続と繁栄を可能にする経済社会の構築を、政策の第一目標に据えるべきでしょう。そして、そのために、労働市場はどうあるべきか考える必要があります。
(加えて、こういう政策目標を追求するためには現行の国際経済秩序を変革しなければなりません。そのための国際的アピールも必要となるでしょう)。


公立小学校へのスクールバス導入など検討しなくていい社会を作ることこそ、自民党が目指すべきものなのです。


長々と失礼しますた…
<(_ _)>