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安倍総理の志は死なない!!

「寝そべり主義」 中国の若者に広がる諦め感

【AFP=時事】現代の都会のせわしない暮らしに疲れた中国の若者たちの間で、「寝そべる」という意味の「タン平(タンピン、タンは身へんに尚)」という言葉がSNSの流行語となっている。彼らは、報われない仕事に縛られた日常を捨てようとしている。
 格差は広がり、生活費は高騰する中国で、伝統的な意味での成功は手の届かないものになりつつある。そうした中から出てきたのが、最小限の仕事しかしない生き方を選ぶ若者たちだ。彼らは親の世代が抱いていた、がむしゃらな野心とは真逆を向いている。
 大勢の応募者を押しのけて仕事にありつき、長時間労働に耐え、人口過密都市で法外な家賃を払うという苦労の連続。これを避けるための道が「寝そべり主義」だ。
 4か月にわたって研究技師の仕事を探していた王さん(24)は、大学の同級生が家業を継いだことを知って、自分には「寝そべり」がピッタリだと悟った。
「履歴書を送るなんて、大海に沈んだ針を探すようなことでした」と語る王さん。フルネームは明かさなかった。「もっとリラックスした生活がしたいだけ。寝そべりは、ただ死ぬのを待つことではありません。仕事はするけど、無理はしないということです」
 中国の若者はSNSを通じて常時、新しい言葉や表現を探している。「寝そべり」は、掲示板サイトの貼バ(ティエバ、バは口へんに巴、Tieba)で匿名の投稿者が「寝そべりは、賢者の行動だ」と書いたのが始まりとされる。
 その意味をめぐる議論が、中国版ツイッター(Twitter)の微博(ウェイボー、Weibo)で圧倒的なアクセスを集めた一方で、学者や国営メディアは苦言を呈した。
 人材業界で働く林さん(24)によると「若者たちは、車やマンションを買い、結婚して子どもを持つという『人生の勝ち組』になれません。だから目標を下げて、欲求を減らすことを選ぶのです」と言う。
 フリーランスのルーシー・ルー(Lucy Lu)さん(47)は「基本的な欲求が満たされ、もっとリラックスした生き方ができるなら素晴らしいことではないでしょうか」と語った。
■「喪文化」
 急増する持たざる若者たちの間で昨年流行した言葉は、「内巻(ネェイジュエン)」だった。元は首都北京の一流大学、精華大学(Tsinghua University)の学生たちが自転車で走りながら、ノートパソコンを使う姿を写した動画をやゆする言葉だったが、今では現代生活、特に都市における競争過多を表わす日常語となっている。
 新卒者の平均初任給は1000ドル(約11万円)前後で、北京の家賃はその半分を優に上回る。
 若い世代の幻滅感は「喪(サン)文化」という言葉でくくることができる。喪文化は、1990年代以降の若者たちの敗北感を表す自虐的なサブカルチャーとして生まれた。「喪」は意気消沈、無気力を意味する。
 ノッティンガム大学寧波中国(University of Nottingham Ningbo China)の研究者、陳志偉(K Kohen Tan)氏は、ミレニアル世代が自分たちの「社会的上昇を妨害するガラスの天井」をいっそう意識するにつれ、喪文化はサブカルチャーから主流になったと指摘する。
 喪文化の初期のシンボルは、「カエルのペペ(Pepe the Frog)」だった。米国では極右勢力オルト・ライト(Alt-right)のシンボルとして重用された漫画キャラクターだが、中国では「悲しいカエル」と呼ばれ、ペペを用いたミーム(笑いを誘うネット画像や動画)が世代の幻滅感を伝えた。
 今年4月にはボーイズバンドのメンバーを発掘するリアリティー番組から、喪文化の新たなアンチヒーローが現れた。この番組に嫌々出演しながら決勝まで進んだロシア人のウラジスラフ・イワノフ(Vladislav Ivanov)さん(27)は、自分に投票しないよう何度もファンに呼び掛けていた。
 契約に縛られ、仕方なく出演するイワノフさんの姿は、自分は「賃金奴隷」だと感じている多くの人々の気持ちをつかんだ。
■「腕まくりして頑張ろう」
「寝そべり」は、習近平(Xi Jinping)国家主席が「腕まくりして頑張ろう」というスローガンで駆り立てるダイナミックな社会とは相いれない。
 敗北主義や屈しやすさは、世代間でも価値観の衝突を生んでいる。中国の高齢者世代は、極限の貧困や飢餓、暴力などを体験し、社会のはしごをよじ登ってきた。
「寝そべり」主義について、精華大学の李鋒亮(Li Fengliang)教授は「極めて無責任な態度で、親ばかりか何百万という納税者を失望させる」と述べた。現在でも、人々が競争することによって社会に流動性をもたらすことができると同教授は主張する。
 広く拡散している動画の中で、名物ニュースキャスターの白岩松(Bai Yansong)氏はこう問い掛けている。「(若者たちは)とにかく家賃が安くて、とりあえず仕事があって、何もストレスがなければそれでいいのか」
 国営新華社(Xinhua)通信は「寝そべり」文化を痛烈に批判し、12時間働くある科学者の1日を追った動画を公開。「寝そべることを拒否する86歳の科学者」とハッシュタグを付けた。今、そのハッシュタグは削除されている。
【翻訳編集】AFPBB News