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安倍総理の志は死なない!!

日本人が基盤築いた台湾パイナップル ケーキ輸入で支援を

© 牛島 要平 日本人が基盤築いた台湾パイナップル ケーキ輸入で支援を
中国による禁輸措置のため窮地に陥った台湾のパイナップル産業を支援しようとする取り組みが広まる日本。日本人が台湾のパイナップル産業を築いた歴史もある。その伝統の製法を今も誇りに生産を続ける畑からパイナップルケーキを日本に届けようという動きもある。中に詰まったパイナップルゼリーは南国の香りを運び、濃厚なバターの風味がたまらない。新たな日台交流の象徴となるか-。
「総督府の評価が今も誇り」
台湾でパイナップル栽培が始まったのは17世紀中ごろといわれるが、本格的に産業として育成したのは日本人だった。
1895(明治28)年、日本は日清戦争の講和条約(下関条約)で台湾を領有。大阪市出身で台湾に渡り、食品雑貨業を営んでいた岡村庄太郎は研究を重ね、1902年に台湾で初めてパイナップル缶詰工場を開設した。岡村の成功により30年代にかけて現地で缶詰産業が活況を呈するように。台湾総督府も工場の統合を進め、パイナップル産業を支援した。

© 森口 友也 日本人が基盤築いた台湾パイナップル ケーキ輸入で支援を
10年代にはハワイやマレー(現マレーシア)などから新品種「スムースカイエン」を導入し、20数年間の試験栽培を重ね、大規模に栽培が始まったのは30年代の終わりという。
「曾祖父、祖父が総督府によるパイナップルの品評会で1等を受賞したのは誇り」
19世紀からパイナップル栽培を続ける台湾企業「緣親旺梨小鎮」を経営する藍優盡さん(58)は、当時の賞状の写真を商品パンフレットに載せる。
ひとつひとつ手で作業
その後、台湾のパイナップル産業は59年代後半~70年代にパイナップル缶詰の輸出が最盛期を迎えたが、80年代からはフィリピンなど東南アジア産との価格競争に敗れ、海外市場を急速に失った。このため台湾では、缶詰にとどまらないパイナップルの多様な商品展開を図ってきた経緯がある。

© 牛島 要平 日本人が基盤築いた台湾パイナップル ケーキ輸入で支援を
パイナップルゼリーをクッキー地で包んだパイナップルケーキもその一つ。戦前から地元のお菓子として親しまれてきたが、近年、台湾政府は特産品としてパイナップルケーキの生産を大々的に支援してきた。
緣親旺梨小鎮も、台湾西部の彰化県と南投県で無農薬栽培するパイナップルを利用して、「くるみとクランベリーのパイナップルケーキ」などを展開している。
パイナップルのカットは「機械で行うと果肉が崩れて味も変わってしまう」と、一つ一つ手作業。ゼリーはとろ火で10数時間かけて炊く。クッキー生地は地鶏の卵とバター、小麦粉を使用し、添加物は一切入れていないという。
「パイナップルの酸味と甘さのバランスが取れているでしょう」
大阪府泉南市の中山友恵さん(38)は「以前住んだ台湾の魅力を日本人に知ってもらいたい」とこの商品の日本での販売を計画。今月29日までインターネットによるクラウドファンディングで資金を募っている。
きっかけは、台湾産生食パイナップルの輸出先の約9割を占めた中国が今年3月、防疫を理由に台湾産パイナップルの輸入を停止したことだった。
「生きる希望をくれた台湾にどうしたら恩返しできるか考えていたとき、これだと思った」
パイナップルケーキの国内展開を模索する中山さんはそう語る。約8年前から4年間、家族の仕事の関係で台湾で生活した。言葉がまったく分からず、幼い子供を抱え、「毎日泣いて暮らしていた」。そんなとき、周囲の人々が救ってくれた。車でスーパーマーケットまで連れて行ってくれたり、食事を持ってきてくれたり、「家族のように接してくれた」という。

© 森口 友也 日本人が基盤築いた台湾パイナップル ケーキ輸入で支援を
帰国後は日本を訪れる台湾人や中国人観光客らを相手に通訳などとして働いていたが、新型コロナウイルスの影響でその仕事もなくなった。新しくできることを求めて、台湾からさまざまな商品を取り寄せた中に、パイナップルケーキがあった。
中山さんの取り組みに、藍さんからはコロナワクチンの緊急支援への感謝とあわせて「日本謝謝(日本、ありがとう)」と書いたイラストがスマートフォンに送られてきた。「パイナップルには台湾の人々の思いがこもっている」。
パイナップルが結ぶ日台の絆はますます強まる。(牛島要平)
「救おう」購入急拡大
財務省貿易統計によると、令和2(2020)年のパイナップル(生鮮)輸入量のうち、1位はフィリピン産が約15万2970トンで全体の約97%を占め、2位の台湾産は約2144トンに過ぎない。スーパーマーケットで台湾産を探すことすら難しかった。
ところが、中国が今年3月に台湾産パイナップルの輸入を停止したことがニュースになると、日本では「台湾を救おう」などとパイナップルを購入する動きが急拡大した。
大手スーパーの西友は3月上旬~5月下旬に1本500~600円前後で販売。フィリピン産より割高だが、同社広報室によると「売れ行きは非常によかった」という。
同社は台湾産を3~5月の「旬の打ち出し」として扱っているが、中山友恵さんによると「夏に収穫したものが甘味と酸味のバランスが取れて一番おいしい」。市場が広がれば、台湾産を味わう機会が増えそうだ。