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安倍総理の志は死なない!!

国防に不安あり 「自国を守れるのは自国だけ」ウクライナ侵攻で明確に 日本も〝反撃能力〟保有を

© zakzak 提供 海上自衛隊の観艦式。日本にも危機が迫っている
岸田文雄政権は6月、2022年の経済財政運営と改革の基本方針「骨太方針」を閣議決定した。凶弾に倒れた安倍晋三元首相は生前、「国防費をGDP(国内総生産)比2%以上に」という明記を強く要求していた。
ロシアによるウクライナ侵攻に危機感を高めたNATO(北大西洋条約機構)諸国は、同様の目標を掲げている。過去20年間、国防費を1~1・4%の低水準で抑えていたドイツですら、今年度の国防費を2%超とすると発表した。
国連の安全保障理事会は2月、ロシア軍の即時撤退などを求める決議案を採決したが、常任理事国であるロシアが拒否権を行使し、決議案は否決された。国連総会の民間人保護を求める決議は成立したが、無抵抗非武装の民間人虐殺が多数報告されている。国連は無力だ。
1991年にソビエト連邦が崩壊し、独立したウクライナには当時、1240発の核弾頭と、176発の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を保有していたとされる。米露に次ぐ、世界第3位の「核保有国」だったが、この軍事力を維持することはできなかった。
ウクライナは94年、核兵器を放棄する代わりに、米国と英国、ロシアが安全保障を約束する「ブダペスト覚書」を交わした。強固な軍事力を失ったウクライナに対し、締結国であるロシアは2014年、クリミアを併合し、さらに軍事侵攻を続けている。
ウクライナ軍には日本と同様、敵地攻撃能力がほとんどない。ミサイルや銃弾が降り注ぐのは、自国の住居や工場、商店、学校、病院などである。ロシアの生産力を破壊することはできない。ウクライナの国土は一方的に焦土と化し、多くの人命と生産能力を失っている。
ブダペスト覚書は反故(ほご)にされたが、米国も、英国も、NATOも、ロシアが「核兵器使用」をちらつかせると軍事介入を躊躇(ちゅうちょ)した。条約は守られず、世論では戦争は止まらない。現実として、「自国を守れるのは自国だけ」と証明された。自分たちを命がけで他国軍が守ってくれるなんて、虫のいい話だった。
戦いが長引き、ロシア軍の弾薬不足も指摘されている。いずれ、一時停戦をしてロシア国内の軍需産業をフル稼働して弾薬を十分に生産したのちに、軍事侵攻を再開するだろう。繰り返すが、ロシアは生産能力を維持し、ウクライナは軍事工場どころか食料の作付けも難しい。
日本政府が7月22日の閣議で了承した「2022年版防衛白書」には、初めて相手国のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)が明記された。しかし、政府が「保有を検討する」などと消極的表現すぎる。
非武装のウクライナ民間人を背後から撃つ、ロシア軍兵士の動画が公開されている。岸田首相には、日本国民をそんな残酷な目に遭わせないと約束してほしい。反撃能力保有を成し遂げてくれることを祈りたい。
■小笠原理恵(おがさわら・りえ) 国防ジャーナリスト。1964年、香川県生まれ。関西外国語大学卒。広告代理店勤務を経て、フリーライターとして活動。自衛隊の待遇問題を考える「自衛官守る会」代表。現在、日刊SPA!で「自衛隊の〝敵〟」を連載中。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。