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安倍総理の志は死なない!!

習近平は動揺している…中国共産党の「プロパガンダ」から透けて見えた「本音」 「ペロシ訪台」の衝撃を分析すると

中国のホンネとタテマエが見える
ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問は、中国に激震を与えている。中国人民解放軍は8月8日、軍事演習の続行を発表し、中国共産党系の新聞、グローバルタイムズはいまも、ペロシ批判一色で紙面を埋め尽くしている。彼らはいったい、何を訴えているのか。

© 現代ビジネス台湾を訪問したナンシー・ペロシ米下院議長[Photo by gettyimages]
グローバルタイムズは、中国共産党系の「環球時報」の英語版だ。このコラムでも、たびたび紹介してきたが、英語で発信しているので、中国語版より読みやすく、私はすっかり愛読者になった。中国理解のために朝日新聞を読むくらいなら、私はこちらをお勧めしたい。
中国のタテマエ(裏側に潜むホンネも)がよく分かるし、朝日のように妙に気取って、ネジ曲がった「良心」を押し付けるようなところもない。自分の意見と違うのは当然だが、中国共産党の新聞と割り切れば、朝日と違って、べつに腹も立たない。
そこで、今回は8月7日時点で公開されていた記事(電子版)を紹介しよう。なぜかと言えば、この日は異様なほどペロシ批判の記事が満載されていたからだ。それは、読まれた記事のランキングに表れている。
ランキングの輝く第1位は「台湾海峡の緊張をめぐる中国に対する根拠のない非難について、米国は同盟国から限られた支持しか得ていない。それは『1つの中国原則』が国際的な共通理解になっている証明だ」と題する記事だった。
署名入りの記事は、こう指摘していた(一部要約)。
〈米国は、ペロシ下院議長の訪台を受けた中国の軍事行動を非難するのに、米国と同じスタンスをとるよう、同盟国に働きかけた。だが、限られた影響力しか発揮できていない。日本やオーストラリアは米国と歩調をそろえているが、欧州の同盟国や韓国は、はるかに慎重な姿勢だ〉
〈ドイツの外務省報道官は、いかなる非難もせずに「問題は平和的に、すべての関係国による合意で解決されるべきであり、地域の緊張緩和が必要」と述べた。別のスポークスマンは会見で「ドイツは1つの中国政策にコミットしている」と語った。これは少なくとも、G7の声明より中立的で、微妙な違いがある。韓国の外相も「1つの中国」政策を支持し「台湾をめぐる緊張激化に懸念」を表明した〉
〈中国外務省の報道官は会見で「ペロシ訪台の後、160カ国以上が訪問を深刻で向こう見ず、無責任な挑発と批判し、1つの中国原則への支持と、中国の主権と領土の一体性を守る努力を支持した」と語った〉
興味深いのは、日本の林芳正外相の名を挙げて「米国、オーストラリアとともに、中国を非難している」と批判した点だ。私に言わせれば、親中姿勢が顕著な林氏は、到底、米国やオーストラリアと同じとは言えない。だが、記事は同列に扱っている。
これは、林氏を「対中強硬派」として扱うことで、日本の世論を誘導する狙いだろう。林氏を中国自らが「親中派」と認定してしまったら、日本国内の保守派から反発を受けて、林外相の座が危うくなりかねない。そうならないよう、あえて「強硬派」として扱っているのだ。
中国らしい深謀遠慮である。逆に言えば、だからこそ、林氏は正真正銘の親中派と言える。中国に援護射撃してもらえるほど、彼らには大事な存在なのだ。
岸田政権への批判に隠された本心
ランキング第2位は「日本の不安心理は日本自身が作り出したものだ」と題した6日付の社説だった。これには、米国人を載せた人力車を一生懸命、日本人が引っ張っている風刺画が付いている(この絵はたびたび掲載されている。よほどお気に入りのようだ)。
〈ペロシ氏が韓国に登場したとき、彼女は一度も「台湾」という言葉を使わなかった。ところが、日本では一変して、注目を集める態度をとった。彼女は記者会見で、訪台は地域の現状変更を意味したものではなく、中国の「台湾孤立化」を阻止するためだ、と語った〉
〈この対照的な態度は、彼女が日本を「腹心の友」とみているからだ。だが、米国の政治家の腹心の友であることは、日本に恥辱と破滅をもたらすだけだ。岸田文雄首相は中国を名指しして、ミサイル演習を「日本の安全保障に衝撃を与える深刻な問題」と語った〉
〈地理的な近さから、日本が台湾海峡の平和と安定を懸念するのは、当然のように思える。だが、日本はペロシ氏の台湾訪問にしっかり反対すべきではなかったのか。当局者は「日本はコメントする立場にない」と言った〉
〈そもそも、日本には、台湾問題で発言をする資格がない。台湾を長い間、植民地支配しただけでなく、そのことを反省もしていない。日本が中日共同声明を含む4文書を無視しているのは、裏切りである。米国の戦略に歩調を合わせているのは、賢明ではない。日本が歴史の教訓に学ばず、平和と安定を望む地域の期待に応えないのは、道義に反する〉
この記事がランキング2位を占めたのは、それだけ、中国が日本の反応を気にしている証拠である。
ここでも、岸田首相の親米反中路線を非難しているが、これも岸田政権の「親中姿勢」を見抜いたうえで、そんな政権にできるだけ長続きしてもらうためには、中国があからさまに応援して、日本国内で反岸田世論が高まってもらっては困る。そう読んだうえで、あえて政権を批判してみせているのだ。
軍事面でも中米関係は悪化しているが…
続いて、第3位は何だったか。それは「台湾問題で米中軍事関係が4回も悪化したのは、米国の責任」という署名記事だった。以下のようだ。
〈ペロシ訪台を受けて、中国は8つの対抗措置を発表した。そのうち、3つは軍事関係である。すなわち、中国は米中戦域司令官協議と防衛政策調整協議、海上安全保障対話メカニズムの3つをキャンセルした〉
〈最近の中米関係において、両軍関係の安定は、中米関係が制御不能に陥るのを防止する「ブレーキパッド」の役割を果たしてきた。だが、ペロシ訪台にともなって、軍関係は急速に悪化している。これほど低下したのは、これで少なくとも4回目だ〉
〈最初は1995年から96年にかけて、当時の台湾の指導者、李登輝氏が訪米したとき。2008年10月には米国が台湾に60億ドル相当の武器を売却した。2010年1月にも、同じく64億ドル相当の武器を売却した〉
〈現場レベルの対話チャネルである防衛政策調整協議と海上安全保障対話メカニズムは、軍事的コミュニケーションを図るうえで、重要な役割を果たしてきた。だが、今回の措置によって機能不全に陥るだろう。誤解と予期せぬ出来事を招く可能性を高めるが、それは米国の責任だ〉
記事では、習近平総書記(国家主席)が7月28日にジョー・バイデン米大統領と電話会談した際の発言と同じ言い回しで、専門家が「中国の行動は米国に対する『火遊びをすれば、やけどする』という警告だ」と強調した。
ただし、最後に「中米軍事関係はどん底だが、すべてのコミュニケーション回路が閉じられたわけではない。ホットラインはいまも生きている。緊急時の対話は可能だ」と付け加えている。これが本心のように見える。
中国の宣伝戦の「したたかさ」
第4位は「ペロシ氏の訪台後、アップルが部品供給者に中国の関税ルールに従うよう求めた」という記事だった。これは日経アジアの記事の紹介だ。
アップルは中国が貿易制裁を強化する事態を懸念して、事前に台湾の部品供給者に対して、供給する部品には「made in Taiwan」を避けて「Taiwan,China」あるいは「Chinese Taipei」と表記するよう求めた、という。
記事は、これまであまりチェックは厳しくなかったが「中国の当局者が規則の執行を厳格にすれば、台湾からの部品が中国本土で没収される可能性がある」と報じた。
第5位は「台湾の緊張が沖縄の人々の懸念を高めている、と日本の研究者が指摘している」という署名入りの記事だ。この記事には、龍谷大学の教授で、政治活動家のM氏が実名入りで登場する。
M氏はグローバルタイムズに対して「台湾は中国の領土であり、日本のものでも米国のものでもない」ので、台湾問題に日本や米国が介入する権利はなく、歴史に批判されるだろう、とコメントしている。沖縄では「ペロシ氏の挑発的で危険な行動に対して、怒りが広がっている」そうだ。
記事には「軍事基地強化を絶対阻止しよう」と書かれたプラカードを手にしたデモ隊の写真が添えられていた。沖縄の米軍基地反対運動が「中国に都合がいい」のは、言うまでもない。
第6位は「パキスタンは『1つの中国原則』と、鉄の兄弟が主権と領土の一体性を守る努力を固く支持する」というパキスタンの駐中国大使に対するインタビュー記事だ。「鉄の兄弟」とは「パキスタンと中国は、鉄の団結を約束した兄弟」という意味だ。
以上6本の記事には、すべて「8月6日公開」のクレジットが入っていた。つまり、なんとトップから6位までが、軍事演習の真っ只中に書かれたペロシ訪台の関連記事なのだ。これを見ても、いかに中国がペロシ訪台に衝撃を受けたか、を物語っている。
しかも自国の専門家だけでなく、各国の反響、日本の政治活動家、日本のメディア報道も動員して、対日、対米批判を大展開したのだ。7日付電子版では、キューバの駐中国大使のインタビューやニューヨーク・タイムズの記事も紹介して、批判した。
日本も宣伝戦で負けてはならない。