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安倍総理の志は死なない!!

岸田政権が目論む大増税計画 インボイス制度導入が「消費税増税への布石」となるワケ

 岸田政権が危機に瀕している。重要閣僚が相次いで辞任し、支持率は内閣発足後最低の33%まで下落。そんな風前の灯火である岸田文雄・首相に残されたのは、「聞く力」ならぬ「言いなりになる力」のみ。その結果、財務省が主導する「大増税」が着々と進められようとしていた。
 高齢者の資産を狙った「相続税・贈与税」の増税として、生前贈与の非課税枠の撤廃や縮小などが議論されているが、サラリーマン増税も目白押し。こちらの標的はまず退職金だ。
 現行制度では、退職一時金に関する税制は勤続20年で分かれる。勤続20年以内であれば勤続1年につき40万円までは非課税(所得控除)とされ、20年を超えた年数は1年につき70万円まで非課税となる。つまり勤続20年で退職すれば800万円、勤続40年なら2200万円まで非課税となる。
 議論の舞台となっている岸田首相の諮問機関「政府税制調査会」では、多様な働き方を選びやすくするという理由で、「勤続年数で差を設けず一律にすべきだ」という議論がなされている。
 退職金の所得控除が勤続1年につき40万円に一本化された場合、勤続40年で退職した人の非課税枠は1600万円に縮小され、それまで税金がかからなかった600万円分が新たに課税されることになる。
 さらに退職金は控除額(非課税枠)を超えた金額の「2分の1」にしか課税されないため、所得税額が大きく減るが、この「2分の1」課税の制度も廃止論がある。
 そうなれば「勤続40年、退職金2500万円」のケースの所得税・住民税を合わせた税額を試算すると現在の60万円程度から、387万円に上がる【※注】。退職金大増税だ。
【※注/「勤続40年、退職金2500万円」なら現行制度では課税所得150万円(2500万円-控除2200万円)×1/2)。所得税率20%、住民税率10%の30%課税で試算すると税額60万円。一連の制度改正後は、課税所得900万円(2500万円―控除1600万円)で所得税率は累進課税で33%にアップし、住民税率10%と合わせた43%課税で試算すると税額387万円】
 所得税も引き上げられる。防衛力の抜本的強化を掲げる岸田政権は防衛費の増額に乗り出した。自民党税制調査会の宮沢洋一・会長はその財源として「所得税、法人税」の増税論をぶち上げた。
 いったいどのくらいの増税になるのか。
 現在の防衛費は5.5兆円でGDP比で約1%だが、自民党はNATO並みのGDP比2%に倍増させることを目指している。そのためには年約5兆円の財源が必要になる。それを所得税・法人税(合計税収33.7兆円)の増税で賄うには、15%増税する必要がある。
 その先にあるのが年金生活者にも現役世代にも厳しい消費税増税だ。
 消費税は2019年10月に税率10%に引き上げられ、当時の安倍首相は「今後10年間は上げない」と約束し、岸田首相も昨年の総裁選で「10年程度は上げることを考えていない」と語っていた。ところが、政府税調は10月26日の総会で増税議論を解禁。「今後の高齢化の進展に合わせて、遅れることなく、消費税率の引き上げについて考えていく必要がある」(委員)と見直し議論に着手した。
 経済ジャーナリストの荻原博子氏が語る。
「政府税調は増税とは謳っていないが、税率引き上げを視野に入れているのは間違いありません。すでに布石は打たれている。来年10月に本格導入されるインボイス制度【※注】です。
【※注/消費税の仕入税額控除の方式の1つで、課税事業者が発行するインボイス(売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額などを伝える請求書)に記載された税額のみを控除することができる制度】
 消費税率10%に引き上げられた際、食品などに8%の軽減税率が適用され、複数の税率があるために企業や税務署の作業が大変になった。インボイス方式を導入すると、税を取る側は事務手続きがかなり楽になり、食品は8%、生活必需品は10%、贅沢品は15%などの複数税率が容易になる。商工業者の批判が強ければ、軽減税率をなくしてもいい。
 そうすれば食品も税率一律10%にすれば増税です。いずれにしても、消費税の税率を上げやすくなる」
 年末の税制改正では岸田首相が総裁選で打ち出した株の譲渡益や配当に課税する金融所得課税の強化も議論される。増税のオンパレードなのだ。
※週刊ポスト2022年12月2日号