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安倍総理の志は死なない!!

国防の危機 日本の戦闘機開発は〝周回遅れ〟 中国は航空機産業に莫大な資金を投入…「軍民両用」の開発を急がなければ世界から取り残される

© zakzak 提供 三菱重工が公開した先進技術実証機「X―2」。岸田首相は「軍民両用の開発」を進められるのか
中国広東省珠海で11月8日から13日まで、国内外の軍関係者やサプライヤーが集う「国際航空宇宙博覧会」が開かれた。今年は実戦配備されている第5世代のステルス戦闘機「J―20」が編隊飛行し、また多数の新型無人機が展示されて、各国の前で熱心に売り込みをかけた。
同じ博覧会で8年前、ステルス戦闘機「J―31」が初披露され、実際に飛行した姿を見て、筆者は現地で軽いショックを受けたものだ。
それから約1年2カ月後(2016年1月)、三菱重工が初公開した「X―2(先進技術実証機)」を、愛知県の工場で取材した。当時はメディアで「心神」と呼ばれ、「平成のゼロ戦」と騒がれていた。
だが、X―2はあくまでステルス形状がレーダーにどのように映るかを計測するための実験航空機であり、それ以上でも以下でもなかった。
この機体は、防衛省が三菱重工を主契約企業として開発にあたった。しかし、現在の航空自衛隊「F―2戦闘機」の後継としての国産戦闘機が実用化されるのは、2030年代で別のプロジェクトである。
中国政府は、国内の航空機産業に莫大(ばくだい)な資金を投入し、博覧会を2年に一度開催するなどの熱の入れようだ。これに比べると、日本の戦闘機開発は周回遅れを多少感じた。
ようやく日本でも、自民党国防議員連盟が今年6月、防衛産業や技術力の抜本的強化を図るための政府への提言案をまとめた。「防衛予算における研究開発費を5年以内に1兆円程度とする」ことなどを盛り込んだ提言を岸田文雄首相に申し入れた。現在、防衛省の開発予算は全体の3・2%の1644億円の低水準だ。
もちろん、予算だけで解決しないのは言うまでもない。
技術開発には、官産学での協力が必要だ。軍事と日常生活での技術的な垣根が無くなりつつある現代では、民生技術の研究は重要だ。いまや官民挙げて「デュアルユース(軍民両用)の開発」を急がなければ、日本は世界から取り残される。
例として挙げるならば、米国防総省の国防高等研究計画庁(DARPA)の日本版を創設することだ。大統領と国防長官直轄のこの組織は、インターネットやGPS、最近では掃除機ルンバや自動運転技術を開発したことでも有名だ。
同庁の年間予算は約5000億円。アイデアなどの一般公募では、米国内外から3000人以上が参加する。職員を確保するリクルーターは来日もして、先端技術に携わる企業や個人にコンタクトしている。
要は、国が成功失敗関係なくリスクを負ってでも、軍事や民生へ応用できる新技術を育てる仕組みである。
日本の科学関係予算は年4兆円超だが、約5割は文科省が握っており、硬直化しているだけに省をまたいだ連携が必要だ。
だが、政府の予算配分の司令塔である内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)に、防衛省や国家安全保障局(NSS)のメンバーは入っていない。省庁をまたいで科学技術関連予算に関与する仕組みをつくるのは政府の役目だ。
「国力としての防衛力」を掲げる岸田内閣にとって、研究開発の多様化は不可欠要素である。 (軍事ジャーナリスト 世良光弘)
=おわり