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中国の攻撃的“戦狼外交”復活、なぜ日韓だけ「差別的入国制限」と批判?

コロナ禍で約3年国境を閉ざしていた中国。しかし人の行き来が再開するとともに、中国政府の得意な攻撃的外交「戦狼外交」もまた再開したようだ。日本と韓国に対し、差別的な入国制限措置を取っていると批判、中国もまた同等の措置を取る、と通達してきたのである。(フリーランスライター ふるまいよしこ)
まったく違う日韓の措置、中国は「差別的」と非難
 1月初め、中国の国境が再び開くとともに、さっそく中国政府の外交も以前の「にぎわい」を取り戻した。
 1月10日、韓国及び日本の中国大使館が、当日から中国入りするそれぞれの国々の人たちへのビジネス、旅行などの短期ビザ発行を見合わせ、同時にこれまで認められていた事前ビザ申請なしでの短期滞在も無効とすることを明らかにした。
 同日、中国外交部の報道官は、定例記者会見でその理由を問われると、「少数の国々が中国に対して差別的な入国制限措置を取っていることに反対し、我々も同等の措置を取ることとした」と答えた。
 確かに韓国の駐中国大使感は昨年末に、1月2日から月末まで(当初の予定)で「中国から訪問する人たち」向けの短期滞在ビザ発行を停止することを発表している。だが、日本は今のところ、そうした公式発表は行っていない。
 また、韓国はそれ以外の入国者に対し、「中国出発48時間前以内のPCR検査による陰性証明」あるいは「出発24時間前以内の抗原検査による陰性証明」の提出を求め、さらに入国後1日以内に訪問客が自費でPCR検査を受け、もしその際に陽性となれば一時的な集中隔離を行うとしている。
日韓だけではない、PCR検査結果提出を求める国々
 一方、日本の場合は、「WHOのリスト(中国国産ワクチン含む)にあるワクチンを3回以上接種していれば出国前の陰性証明は不要だが、ワクチン接種が条件を満たしていなければ必要」としており、どちらのケースも日本到着時にはPCR検査などのチェックは行わないとしている。ただし、通常の入国時に使用されている検査機器による発熱チェックは行われているので、そこで発熱が明らかになるなどすれば別途検査を行い、陽性と分かれば隔離療養施設に入ることになる。
 つまり、「中国に対して差別的な入国制限」と一言でくくられたものの、韓国と日本では措置は大きく違う。
 だが問題は、中国国内メディアの報道によると「中国からの入国者」に対して出発前の陰性証明提出や入国後の検査を求めているのはこの他にも、アメリカ、カナダ、オーストラリア、フランス、イギリス、スペイン、イタリア、イスラエル、インド、カタールなどがあることだ。日本とほぼ同条件なのである。
香港でも、中国からの入境には陰性証明などが必要
 さらにやはり1月8日から次第に中国からの入境者受け入れを始めた香港でも、到着48時間以内のPCRまたは抗原検査による陰性証明と、到着後24時間以内の抗原検査結果アップロードが義務付けられている。これは香港の担当者が中国との折衝の結果決めたものであり、中国政府がそれに抗議したという話はもちろんない。
 また、こうした検査の対象は「中国からの入国者」であり、「中国国籍者」に限ったものではない。韓国も日本も、中国から入国する中国人だけではなく、米国人、日本人、韓国人、その他の国々のパスポートを持つ人にも同様の要求をしている。だが、中国国内の多くのメディアが「中国人に対して差別的な措置を取る日韓」と書きたて、多くの中国庶民の“コンプレックス”を刺激した。
 さらには香港で長い間、「リベラル紙」と形容されてきた「明報」までがその詳細を見極めないまま、「差別的な日韓の入国制限への中国の報復措置は合理的で適度なものである」とする社説を掲載している(但し、「明報」は1990年代からマレーシア系親中資本の所有となっており、特にその社説は中国政府の顔色を伺うものが多い)。こうした動きが中国国内に中国外交部の言い分を「筋の通ったもの」という印象を付けている。
 一方で、昨年12月に同紙に10年あまり書き続けてきたコラムを中国政府の圧力で閉鎖された、台湾在住の香港人コラムニスト、曾志豪さんは、「中国国内の感染状況のひどさを懸念しているのは外国人ではない。中国国内のSNSで実際に多くの中国人が、葬儀場がいっぱいで、病院は大混乱で、周囲に感染者が激増していると訴えているじゃないか。(中国の外にいる)我々はそこから、中国国内の感染事情を理解しているだけだ」と反論してみせた。
中国政府も認める、国内の「ひどい感染」事情
 韓国はまた、短期ビザ発給の一時停止とともに、中国からの入国者のうち31%が陽性だったことを措置の根拠に挙げている。また、日本でも中国が正式に自由な人員往来を再開する前の1月初めの時点で中国からの入国者の8%が陽性、また13日には4%だったことを明らかにしている。
 中国が政策的に「コロナゼロ化」をやめて海外の往来を再開したことと、実際の感染率とは直接の関係性はない。またそれぞれの国が感染症に対して水際対策を取るのはそれこそ当然の「国内措置」であり、それを一方的に「中国人への差別」と言い放つのはかなり無理筋といえよう。
 加えて、1月14日には中国政府は国内の対コロナ措置緩和(実質的にはすべての措置の撤廃)から約1カ月で5万9938人、つまり約6万人が新型コロナおよびその合併症で死亡したと発表。それまでほとんど公式には触れられてこなかった死亡者数が突然、万単位の数字で発表されたことに衝撃が走った。
 だが、その一方で昨年12月25日に「全民PCR検査を停止したため、詳細な統計が取れなくなった」ことを理由にすべての数値発表をストップした政府がいかにして死者数を統計したのかも焦点となった。
 経済メディア「財新網」では、今回発表されたのは病院での死亡者数の統計であり、医療が完備していない農村の死者や自宅で亡くなった人などは含まれておらず、さらに感染周期が2週間から時には8週間であることから、「12月末から地域別に次第に感染ピークを越えた」とする専門家の判断を踏まえると今後も死者数は増え続けるはずだ、としている。
中国「戦狼外交」の再開
 ここで米国の大学で教壇に立つ、中国出身の友人のSNSへの書き込みをご紹介したい。「やっと米国に戻った。今年の上海の冬はひどいものだった。多くの家庭が愛する家族を新型コロナで失った。わたしもまだ74歳のおじを亡くし、家族はまだそのことに打ちひしがれている。高校時代の恩師も亡くなった。仲良しの友人が2人、両親を失った。他にも病院で危篤状態の両親を看護している友人たちがいる。わたしにとってこれらの記憶はいまだに新しく、今キャンパスを見渡してもマスクをしているのはわたしだけ」
 これに似た体験談が、ネットにはゴロゴロ流れている。亡くなったのは本当に「たった」6万人なのか?いや、それが6万人であろうとも、60万人であろうとも、多くの人たちが失った家族や知人を想う回数はそれっぽっちで済まないはずだ。
 だが、中国政府は国際往来の再開とともに、すぐさま「戦狼外交」を再開した。まるでそれが、中国のあるべき姿だ、世界はそれを黙って受け入れるべきだ、というように。
 きっぱりとした態度を取った韓国よりずっと温和な(弱腰、ともいえる)日本の水際対策をビザ規制のターゲットにしたのは、岸田首相が欧米歴訪をした時期と一致する。「中国の膨張」を視野に入れたその外交姿勢にかみ付いてみせたというのが、その本意なのだろう。中国の「戦狼外交」が戻ってきた。
国交断絶が吉!!