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安倍総理の志は死なない!!

中国の若者失業率が想像以上に厳しい!ゼロコロナ終了でも経済復活は遠い

中国の実体経済は厳しい状況に直面している。コロナ禍の発生は、共産党政権主導で産業を育てIT分野などで雇用を生み出す経済運営を行き詰まらせた。生産年齢人口の減少や、不動産バブル崩壊も重なった。2023年の労働市場には過去最多となる1158万人の大学卒業者が供給されると予想されているが、16~24歳の若年層を中心に、中国の雇用環境はデータ(22年11月で16~24歳の調査失業率は17.1%)が示す以上に厳しいと考えられる。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
中国経済の先行きは慎重に考えるべき
 2022年12月以降、中国共産党政権は厳格に運営していたゼロコロナ政策を緩和し始めた。23年1月8日には入国後の隔離措置も撤廃し、事実上、ゼロコロナ政策は終了した。
 背景には景気減速、さらなる景気失速の阻止、コロナ検査などにかかる地方政府の負担軽減、都市(地区)封鎖に対する不満解消などがあるだろう。そうした状況下、世界の金融市場では中国経済の先行き楽観論が高まり始めた。中国の株式や商品市況の上昇はその裏返しといえる。
 ただし、それは一時的な期待先行で資産価格が上昇し、景況感が高揚している可能性が高い。中国経済の先行きは慎重に考えるべきだ。コロナ感染者が短期的ながらも急増する展開は大いに考えられるし、中国の不動産バブル崩壊の後始末は長引くだろう。加えて、共産党政権は社会と経済の統制強化のためにIT先端企業への影響力を一段と強めると予想される。
 また、米国ではFRBが追加利上げを行い、個人消費が減少するだろう。それは中国の輸出を圧迫する要因になり得る。中国経済が持ち直す道のりは、険しいものになりそうだ。
雇用環境を中心に厳しさ増す中国経済
 足元、これまでに増して中国の実体経済は厳しい状況に直面している。要因の一つとして、人の移動が制限されたことによる経済的な負の影響は大きい。特に、雇用環境はかなり厳しい。報道によると22年、中国の都市部新規雇用は1206万人であり、政府によると目標は達成されたという。
 しかし、19年(コロナ禍が深刻化する以前)の同1352万人は下回っている。コロナ禍の発生は、共産党政権主導で産業を育てIT先端分野などで雇用を生み出し、国民の所得を増やす経済運営を行き詰まらせた。加えて、生産年齢人口の減少や、不動産バブル崩壊などの負の要素も重なった。それらの結果として、高度成長期は終焉を迎えつつある。
 23年の労働市場には過去最多となる1158万人の大学卒業者が供給されると予想されている。経済成長率の低下に伴い、雇用環境がさらに厳しさを増す可能性は高い。その状況下でゼロコロナ政策を続けていては、雇用を下支えしてきた中小企業への向かい風は強まるに違いない。特に、飲食や宿泊、交通などのサービス業の経営悪化は避けられない。中国全体で採用は手控えられ、コストカットのための人員削減に追い込まれる企業が増えるだろう。
 共産党政権は金融緩和などによって中小企業への資金繰り支援を強化している。しかし、新規の融資は予想されたほど増えていない。コロナ感染再拡大による防衛本能を背景に個人消費も停滞している。
 中国経済を取り巻く外部環境の不安定感も一段と高まっている。特に、FRBによる利上げによって米国の個人消費は徐々に減少している。22年の年末商戦では、多くの企業が夏頃から積み上げた在庫を圧縮するために値下げを余儀なくされた。
 米国の需要減少によって中国の輸出も減少傾向にある。中国の雇用創出力の低下、その後の内外需の縮小をベースに、16~24歳の若年層を中心に考えると、中国の雇用環境はデータ(22年11月で16~24歳の調査失業率は17.1%)が示す以上に厳しいと考えられる。それもあって、中国はゼロコロナ政策を続けられなくなったとみられる。
期待先行で上昇する中国の株価や世界の商品市況
 一方、世界の金融市場では短期的に中国経済は持ち直すとの期待が先行し始めた。23年1月中旬時点で、世界の株式市場では中国株の上昇が顕著だ。
 22年12月から23年1月中旬までの間、世界の株式市場はほぼ横ばいで推移した一方、香港のハンセン指数は16%程度上昇した。セクター別に見るとIT関連の銘柄は買われた。ゼロコロナ政策の終了によって春節(旧正月)連休中の移動者数は、22年から倍増の約21億人と予想されている。これにより中国の旅行関連銘柄の株価も押し上げられた。
 加えて、不動産バブル崩壊の大きな要因となったデベロッパー向け融資規制、「3つのレッドライン」が緩和されるといった観測もあり、今後の中国経済は持ち直しに向かうとの楽観が高まっている。
 商品市場では、銅や鉄鉱石などの価格が上昇した。共産党政権は経済対策のためにインフラ投資を増やすとみられ、それが銅線や粗鋼の需要を押し上げることになると読まれた。
 原油価格の上昇に対しても、中国の景気持ち直しへの期待感が与えた影響は大きい。そのため、ブラジル・レアル、チリ・ペソなどエネルギーや鉱山資源を多く保有する国の通貨も対ドルで反発した。
 また、主要投資家の中には、23年終盤にかけてFRBが利下げを実施する可能性を期待する者も増えている。それも、中国と関連性のあるリスク資産を購入する心理をサポートしているはずだ。
 経済成長に関しても、徐々にではあるが中国経済の持ち直しを予想する者が増えている。一例として、投資銀行のJPモルガンは23年の中国のGDP成長率予想を、4.3%から4.4%へ上方修正した。
 以前は、中国がゼロコロナ政策を終了するのは3月の「全国人民代表大会」(全人代)を控えた頃になるとの見方が多かった。しかし、ゼロコロナ政策は想定よりも早く終了した。それに伴い、これまで抑圧されてきた生産活動は徐々に回復し、物流も持ち直すとの見方が前倒しで増えている。そうした見方も、中国経済への期待を高め、株式などへの資金流入を支える要因になっている。
中国経済の先行きを楽観するのは尚早
 しかし、今後の中国経済はかなり不安定に推移するだろう。まず、春節中に移動が急増することによってコロナ感染再拡大が深刻化する恐れがある。1月14日、共産党政権は22年12月8日から1月12日までにコロナ感染者かつ医療機関で死亡した人が5万9938人と発表した(当初発表は38人だった)。医療体制はひっ迫し、解熱剤なども不足しているようだ。なお、中国は米国製ワクチンの受け入れに否定的である。感染再拡大の状況によって、個人消費などの持ち直しはかなり緩慢になるだろう。
 不動産分野などでの債務リスクも高まりそうだ。この問題は中国経済の構造的な問題と考えられる。今のところ、共産党政権は融資規制や金融緩和による債務の延命を優先しているようだ。となると短期的に、中国恒大集団など大手デベロッパーのデフォルトリスクは低下し不動産市況は下支えされる可能性はある。
 だが、金融緩和は不良債権問題の根本的解決策ではない。不良債権問題の深刻化を背景に不動産市況が悪化し、地方政府の財政状況も不安定化した。ローン支払いを拒否する家計も増えた。長期的に、「灰色のサイ」と呼ばれる債務問題はより深刻化するだろう。
 IT先端分野の統制は一段と強まりそうだ。共産党政権はIT大手アリババ傘下企業の「黄金株」(株主総会や取締役会で重要な議案を否決できる権利が付与された特別な株式)を取得したと報じられた。中国の金融大手アント・フィナンシャルではジャック・マー氏(アリババ創業者)が支配株主から外れた。テンセントに対しても政府が黄金株取得を目指しているとみられる。類似ケースは増えるだろう。
 共産党政権はSNS上での政府批判をさらに強く取り締まり、国内外でのマネーフローもより厳格に管理・監督すると予想される。中国のアニマルスピリットは低下し、人材の海外流出は増えるだろう。台湾問題や労働コスト上昇などを背景に、生産拠点を中国からインドなどに移す企業も増えている。中国経済の回復ペースはこれまで以上に緩慢になると予想される。