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“中国スパイ気球” 撃墜ミサイルの生まれ故郷「チャイナ・レイク」とは トップガンの舞台にも

各種ミサイルの生まれ故郷 チャイナ・レイク
 2023年2月6日(日本時間)、アメリカ空軍のF-22「ラプター」戦闘機が中国の偵察気球を撃墜しました。このとき使用されたのは、空対空ミサイルAIM-9X「サイドワインダー」です。
 実はこの「サイドワインダー」は最初のモデルであるAIM-9Aが1956年に実戦配備されて以来、実に70年近くものあいだ何度も改良が重ねられてきた実績あるミサイルで、2023年現在では第4世代に相当する前出のAIM-9Xが生産されています。

1986年4月、チャイナ・レイク海軍基地で撮影した標的機QF-4「ファントムII」(細谷泰正撮影)。© 乗りものニュース 提供
 このような息の長い「サイドワインダー」など、多くの空対空ミサイルの生まれ故郷とされている施設が、カリフォルニア州にあるチャイナ・レイク海軍航空兵器基地です。ここには実戦部隊など所在しないものの、だからこそ面白い飛行機も多く運用されています。どのような場所なのか、その歴史とともに、彼の地に配置されている珍機なども紹介していきましょう。
 チャイナ・レイク海軍航空基地があるのはカリフォルニア州南部の内陸部、ハイデザートと呼ばれる砂漠の真ん中です。チャイナ・レイクとは付近にある乾湖の名称ですが、同じように試験飛行が行われているエドワーズ空軍基地(カリフォルニア州東部)が、人里離れたミューロック乾湖(ロジャース乾湖)に造られたことに似ています。
 最近では、2022年に日本でも公開された映画『トップガン マーヴェリック』の劇中で、マッハ10を目指すべく開発されたとして登場した実験機「ダークスター」の離陸シーンで用いられていたのが、ここチャイナ・レイク海軍航空基地でした。
 以前は海軍兵器センターと呼ばれていましたが、同様な機能を持つポイント・マグー海軍航空基地に所在する太平洋ミサイル・テストセンターと1992年に統合されたことで現在の名称になりました。
 ゆえに2023年現在、チャイナ・レイク基地には兵器の実射試験と評価を行う2個飛行隊が配置されており、海軍が実戦で使用している様々な機種が配備されています。それらは発射母機とそれに随伴するチェイス機、標的として用いられる標的機など、多種多様な機体が用意されています。
関東地方がすっぽり入る広大なテストエリア
 筆者(細谷泰正:航空評論家/元AOPA JAPAN理事)が同基地を訪れた1980年代にはまだ標的機としてQF-86が飛んでいました。同機は航空自衛隊で使用されていたF-86F「セイバー」戦闘機がアメリカへ返還された際に、標的機として改造が施されたものです。そのため、妙に懐かしい気分になったのを覚えています。
 ほかにもF-4「ファントムII」戦闘機やT-38「タロン」練習機が標的機へと改造されて使用されていました。それらはさすがに退役が進み、2023年現在ではF-16「ファイティングファルコン」シリーズの初期型F-16A戦闘機が標的機に改造されQF-16Aとして運用されています。

1980年代、チャイナ・レイク基地で運用されていたT-39D「セイバーライナー」(細谷泰正撮影)。© 乗りものニュース 提供
 チャイナ・レイクでは、これら航空機を使って戦闘機や攻撃機などが搭載する爆弾、空対空ミサイル、空対地ミサイルなどの試験を行っています。なかには敵のレーダーサイトなどを破壊するためのAGM-45「シュライク」空対地ミサイルや、空中発射型の「トマホーク」巡航ミサイルなどもあり、まさに多岐にのぼっています。
 なぜ、チャイナ・レイクでこうした実弾を使った試験を行えるのか。その理由は、基地の周りに広大な土地と空域が広がっているからです。アメリカ海軍はチャイナ・レイク航空基地とその周囲に4500平方キロメートルに及ぶ広大な土地を所有しています。これは、山梨県の面積にほぼ匹敵します。さらにその上空にはR2508とよばれる制限空域が設定されていて民間航空機の飛行が制限されています。
 なお、このR2508は近くにあるデスバレー国立公園とキングス・キャニオン・アンド・セコイア国立公園の上空も含まれるため、制限空域の広さはさらに大きく、その総面積は関東地方(1都6県)のおよそ1.5倍の広さに匹敵する5万1000平方キロメートルにも達します(中国・四国地方9県とほぼ同等)。そのため、R2508は15の区画に分割され、それぞれ異なった高度制限を設定することで、各種ミサイルの試射など兵器の性能テストが行われています。
 では、そもそもなぜここがチャイナ・レイクと呼ばれているのでしょうか。その由来は1900年代初頭、中国人探鉱家たちが乾湖の湖底で硼石(ホウ砂)を採取していたからだそう。
 冒頭に記したように中国の偵察気球、すなわち「チャイナ・バルーン」を撃ち落としたのは、チャイナ・レイクで誕生した「サイドワインダー」空対空ミサイルでした。ゆえに、筆者としては今回の出来事に何か歴史的な因縁を感じてしまいました。