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中国共産党の対日スパイ機関の総本部? 秋葉原の「海外派出所」に実際に“泊まってみた”

 現在、中国の警察の出先機関とされる「海外派出所」のニュースが大きな話題になっている。理由は4月17日、アメリカの検察当局がニューヨーク市在住の中国系男性2人を、中国の「秘密の警察出先機関」を運営した疑いで逮捕したためだ。なかでも容疑者の1人は、中国の公安部に協力してアメリカ国内の中国反体制派や中国人亡命者への嫌がらせを繰り返し、帰国を要求していたとされる。
 2022年末、スペインに本部を置く人権活動団体「セーフガード・ディフェンダーズ」が発表したレポートによれば、こうした海外派出所はすくなくとも53カ国に100カ所以上。そこには日本も含まれるとされる。

海外派出所が国際問題になる以前、むしろ福州市公安局は自分たちの「サービス」を積極的に中国人民にアピールしていた。 中央下が日本の「海外派出所」メンバーらとみられる。福州市公安局が過去に公開していたPR動画より。© 文春オンライン
 同団体によれば、日本の海外派出所1施設は、福建省福州市公安局の傘下にある。地元紙『福建日報』などの情報によると、この施設は正確には「福州警侨事务海外服务站」。日本語で言えば「福州市海外華僑向け警察総務サービスステーション」といったところか(他国の施設も同様の名で呼ばれる例が多い)。私はこの問題に興味を持ち、今年のはじめごろから海外派出所について調べ続けてきた。
ホテル予約サイトで宿泊予約ができた
「セーフガード・ディフェンダーズ」のレポートに掲載された海外派出所リストの画像(もともと福州市公安局が公開した情報)を確認すると、日本の施設の住所は「日本東京都千代田区神田和泉町x-xx ●●会館」だ。
 こちらをGoogleマップで調べると、同名の建物とともに「●●ホテル秋葉原」というホテルが確認できた。さらにこのホテルを検索すると……。なんと、海外系の大手ホテル予約サイトや民泊予約サイトで宿泊予約が可能であることが判明した。
 これは泊まってみるしかないだろう。
 私は3月16日、このホテルを予約した。ホテルの口コミ評価はサイトによって幅があったが、10点満点で8点台のものもある。せっかくなら海外派出所でのステイを楽しもう。私はさっそく秋葉原に向かい、海外派出所の近所にあるスーパーでビールとつまみを買い込んだ。
 いざ住所の場所へ行くと、ペンシルビルと言ってもよさそうな細長い建物があり、壁に大きく●●HOTELと英語で書いてあった。海外派出所があるのは、このホテルの建物(物件名が●●会館なのだ)の5階である。
部活の倉庫の鍵ですか?
 施錠されていないドアを開けると、なんと1泊1万3000円(同日の価格)の宿なのに受付に誰もいない。かわりに小さなホワイトボードに、担当者の電話番号と「席を外しています」という日本語と英語のメッセージが書かれていた。
 どうやら、事前に予約サイト経由で送られた4桁の暗証番号を入り口脇のキーボックスに打ち込み、部屋の鍵を受け取る方式らしい。ボックスを開けてみると、写真のように非常に安っぽい鍵が出てきた。
 建物内に誰もいないので、写真と動画を撮りながら各フロアを見て回る。最上階の海外派出所の部屋以外、他のフロアはいずれも客室のようだ。敷地面積が狭い物件なので、部屋は各フロア1~2室である。私が泊まる部屋は2階で、フロアに1室だけだった。
どう見てもインバウンド向け民泊では…
 部屋に入ってみると、クイーンサイズのベッドがふたつあり、意外とこぎれいで広かった……。のだが、かなり異色の内装だ。ベッドの頭の方向の壁には、なぜか障子の格子があり、そのなかに和風の鯉の絵の安っぽいカラースクリーンが貼られている(写真参照)。さらにベッドの向かいの小上がりには、正方形の縁のない畳が敷かれており、なぜか掘りごたつがあった(ただしこたつ布団はない)。
 押し入れはなんと、入室の時点で引き戸が半分開きっぱなしで、予備の寝具が(いちおう畳まれていたが)乱雑につっこんであった。風呂はマンション仕様のユニットバスだ。
 従業員が常駐しない仕組みや鍵のタイプ、さらに部屋の内装や片付け方といった特徴から判断する限り、「ホテル」というカテゴリーの宿泊施設なのかは微妙なところである。コロナ前にインバウンド需要を当て込んで都内に雨後の筍のように作られた、中国人経営の民泊だと考えたほうがしっくりきそうだ。事実、部屋のWI-FIパスワードは2020年の東京オリンピックにちなんだ文字列だった。
 建物内の監視カメラは、なんと入り口にひとつあっただけで、階段や各フロアには設置されていない。受付に人がおらず入り口もオートロックなどではないため、宿泊客ではない人物でも、外部から24時間出入り自由である。もちろん部屋の鍵は例のショボいやつひとつだけだ。日本の普通のマンション以下のセキュリティである。
 他の宿泊客を観察してみると、1階に韓国人客1人、3階に中国語を話す数人の家族客(台湾人らしき印象だ)、4階に東欧系のカップルが泊まっていた。すこし会話できた韓国人客によれば、ここが「海外派出所」だとはまったく知らず、日本に旅行に来たので予約サイトで適当に見つけた宿に泊まっただけだという。
不審なアンテナとかはなかった
 あまりのユルさに拍子抜けしつつ、海外派出所を尋ねるために5階に向かった。一応、階段に立入禁止のチェーンが張られていたが、宿泊客である私はついついうっかりそれが目に入らず、チェーンの向こうに進んでしまった。最上階にドアがあったので、ノックしてみると……。
 事前に予想していたことだが、まったく反応はない。そもそも室内に誰もいないようである(翌日も尋ねたが同様だった)。実のところ、日本で海外派出所の存在が報じられた2022年末の時点から、この場所はメディア関係者の間で知られており、聞くところでは数社の記者がここにやってきたという。仮に海外派出所が過去に本部を置いていたとしても、いまやもぬけの殻なのだ。
 とはいえ、これだけで自分の部屋に戻るのはもったいない。最上階の半分は海外派出所の部屋だが、もう半分はバルコニーである。そこで、施錠されていないもうひとつの扉を開けてバルコニーに出た。海外派出所の部屋の曇りガラスの窓があったが、室内は電気がついておらず人がいる気配もない。
 海外派出所の部屋の外壁にハシゴがあったのでとりあえず登ってみたが、屋上にはエアコンの室外機があるだけであり、不審なアンテナや武器の貯蔵施設などはないようだ。
目下調査中、情報求む
 さて、いっぽうでこの施設の詳しい性質についてだが、目下(私たちも含めて)日本国内の各メディアが追いかけているところである。私個人としては、すでに一定の見立ても持っているのだが、確証がないことはまだ書くべきではないだろう。
 もっとも、具体的な活動実態がいかなるものであれ、第三国の国内に中国警察の出先機関を名乗る組織が勝手に設立されている時点で、充分に大問題なのは確かである。中国は今回の件が国際的に大きく報じられたことで、その対外的イメージが大きく傷つくことになった。
 ところで、●●ホテル秋葉原のベッドはなかなか寝心地がよかった。次回は友人と費用をワリカンして部屋を予約し、夜通しでパーティーでもやってみようと思う。すぐ裏に大きなスーパーがあるので、お酒も惣菜もたっぷり買えるのだ。
(安田 峰俊)