Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

お金は知っている 「デジタル人民元が怖い」中国の富裕層が国外脱出 習政権が進める「共同富裕」路線にパニック

中国の国際収支© zakzak 提供
中国からの資本逃避が急増する気配になってきた。背景には、習近平政権が押し進めるデジタル人民元にある。あらゆる資金取引はデジタル情報化され、中国人民銀行を通じて監視当局に逐次把握される。そうなると、資産隠しや海外への持ち出しも禁止されかねない。富裕層を筆頭に今のうちに資産ごと海外に持ち出そうと躍起になっている。
知り合いの在日中国人Aさんは、30年以上日本に住むセレブである。そのAさんは最近、出身地の上海の富裕層の友人数人から同じ相談を受けている。東京都心で一戸3億~5億円もする超豪華マンションを購入したいという。そんな話は珍しくはなくなっているが、動機は「デジタル人民元社会が怖いからだ」という。今のうちにできる限り、日本など海外に金融資産を移す。中国からの送金は1人当たり5万ドル(約650万円)が限度なのだが、海外で設立以来10年以上の事業実績のある法人と取引すればもっと大口の資金を動かせるので、日本でパートナーを確保したい、という。
われわれ庶民の感覚では、「やれやれ、中国の金持ちはいろいろと考えるものだ、ご苦労さん」としか言いようがない。が、Aさんは「だって、資産や資金取引が当局に把握されるだけでも恐怖ですよ。いつ凍結、没収されるかもわからないのだから」と真剣だ。
そもそもカネというのは現金なら匿名性があるので安全だ。以前に、当局が不正蓄財した中国共産党幹部保有のマンションの一室に踏み込んだら、その部屋には現金が充満していたという。現金が不便なら、金(きん)など貴金属という手もあるので、中国では金への人気が根強い。一番、安全なのは習政権のコントロールが及ばない海外への持ち出しだ。
人民元がデジタル化されると、その持ち主や移動などの情報が金額数値とともに、デジタル通貨を発行する中国人民銀行のデータセンターに送られる。人工知能(AI)を使って市民を常時監視する術がお手の物の党独裁国家中国では、デジタル人民元導入でより完璧に個人を見張ることができるようになるのだ。ことに富裕になればなるほど、心配になるのだろう。
カネは人とともに動く。富裕層の海外移住は、昨年12月に習政権のゼロコロナ政策が打ち切られて以降、加速している。この背景について、西側メディアは3期目に入った習政権が「共同富裕」路線を進めるなど支配体制を一層強めたことを挙げる。それに加えて、2022年2月の北京冬季五輪で試験導入して以来、試験対象を多くの地域に広げていることが、富裕層をパニックに陥らせている。
グラフは中国の国際収支動向である。21年には5300億ドルに上った資本流出は22年、新型コロナウイルス感染拡大に伴う渡航制限もあって1400億ドルに縮小したが、今年は急増が必至だ。おまけに海外からの対中投資も低迷している。習政権は深刻な外貨難に陥りそうだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)