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テスラ「終わり」の始まり、2035年全面EV化はやはり無理だ やがて一本足打法でずっこける

2035年全面EV化はやはり無理
昨年8月20日公開「中国、韓国『EV電池』の発火が相次ぐ一方、『何もしていない』ように見える『日本の製造業』はやはり凄かった」で「燃えるEV」の話をしたが、8月11日にも、川口マーン恵美氏の「積荷のEVが発火…!? 『自動車運搬船火災事故』を機にドイツで噴出した“EV危険かもしれない論”の危険性」との記事が公開された。
「積荷のEVが勝手に燃え出した?」との疑惑があるのだが、2月27日公開「日本はこのままトヨタを失ってしまってもいいのか!?」3ページ目「しかも、電池はよく燃える」で述べたように、例えば航空機での(積み荷の)バッテリー火災事故は珍しくない。原因が「謎」とされるマレーシア航空370便墜落事故も、実はバッテリー火災が原因であったのではないかとの説が近年浮上している。
前記マーン氏記事5ページ目で「EUが『35年目標』を見直す可能性」と述べられているが、3月22日公開「結局2035年までの完全EV化など無理だ!ということに世界はやっと気づき始めた」のは明らかだ。
これまで「EV化一辺倒」の流れが続いていた欧州でも、この動きが顕在化してきた影響は大きい。
欧州の「黒歴史」
世界に(自分たちに有利な)「規格」を広げて、その「規格縛り」で優位なビジネスを進めるのが欧州のお家芸である。この分野では、日本はなかなか太刀打ちできない。
だが、自動車分野で欧州は「黒歴史」を持つ。前記「結局2035年までの完全EV化など無理だ!ということに世界はやっと気づき始めた」3ページ目「ディーゼル車の二の舞か」で述べた「ディーゼル車」である。
環境車と喧伝していたディーゼル車が実は「不正ソフト使用」によって作り上げられた「虚像」であったことが明らかになったのだ。ちなみにこの不正を暴くのに使われたのが堀場製作所の測定器(参考:ニュースイッチ2015年10月11日「VWの不正見抜いた測定器。『検知はしたがジャッジはしていない』(堀場会長)」)である。
この「ディーゼル不正問題」の後に、それを無かったことにするかのように、大慌てで欧州が推進し始めたのが「EV=電気自動車」である。
そもそもの動機が不純であるし、ディーゼル車同様、EVが(社会全体として)「環境に良い」という科学的根拠も見かけない。むしろ、8月13日公開「自家用車の9割!? CO2輸出が支えるノルウェー『高EV普及率』の闇」4ページ目「EVは、結局環境に悪い」のように、京都大学を始めとする研究機関が「EVは(全体として)環境にむしろ悪影響を与える」というレポ―トを出している。
EVが(全体として)環境に悪いのであれば、「全面EV化」など無理筋であり、「ディーゼル車」と同じ運命をたどると言える。
EUの「規格化戦略」は中国の猛攻に敗れた
しかも、トヨタ自動車を始めとする優秀な「日本メーカー潰し」の意図があったと考えられる「EV化」が、中国メーカーを大躍進させる事になる。
なぜかと言えば、「環境に良いとは言えない」だけではなく、経済合理性にも乏しい「共産主義的政策」である全面EV化は、中国のような独裁国家に向いているからだ。
前記「自家用車の9割!? CO2輸出が支えるノルウェー『高EV普及率』の闇」で述べたように、不便なEVを優遇策や補助金、さらにはガソリン車へのペナルティによって「強権的に普及」させている現状を見れば明らかである。
独立行政法人経済産業研究所「EVシフトをテコに日本を追い上げる中国の自動車産業-注目すべき新興民営企業の台頭と生産のモジュール化-」記事中「図表6 世界のEV販売台数上位10社(2022年)」によれば、世界のEV販売台数の上位10社のうち、中国企業が6社を占めている。その内、BYDの販売台数は185万台に達し、グローバルシェアが18.3%と、テスラ(販売台数が131万台、グローバルシェアが13.0%)を抜いて、世界一位に躍り出たのだ。
日本勢を潰すために投げたブーメランが、中国勢と米国のテスラを利するという形で返ってきた。欧州は、中国に市場をとられるくらいなら、恥も外聞もなく、ディーゼル車の時と同様、全面EV化からの転換を始めるであろう。
そして、これまでは勢いを持っていたテスラの将来にも暗雲が立ち込めている。
「安売り戦略」でテスラのブランドを毀損 
これまでのテスラの販売戦略は素晴らしかった。「高級EV車」というカテゴリーを創出し大きなシェアを占めたのだ。
EV車は不便で割高な乗り物だ。しかし、ロレックスなどの機械式腕時計が、デジタル式に比べて不便で割高だが、あえてそれを身に着けることが「ステータス」であるのと同じ販売戦略をとったのだ。そしてその戦略が「意識高い系」の富裕層にアピールし大成功したのである。
しかし、「意識高い系」にアピールしていた「EVは環境に優しい」という欺瞞は、これまで述べてきたように崩れ去りつつある。そして「高級EV戦略」も自ら放棄し始めた。
前記「自家用車の9割!? CO2輸出が支えるノルウェー『高EV普及率』の闇」5ページ目「テスラ・バブルも終わる」で述べたように、販売価格の引き下げが目立つ。
さらに、日本経済新聞8月16日「テスラ、高級モデルに廉価版 航続距離縮め1万ドル安く」との報道もある。
前述のように、販売台数では中国・BYDの方が上回っているのであるから、「安売り」で自らの「高級ブランド」を毀損するのは誤った戦略だ。ロレックスがどんどん値下がりし、誰もが身に着ける腕時計になった場合を考えればよくわかる。
国策会社に成り下がったテスラ
日本経済新聞8月10日「躍進テスラ、EVプラットフォーマーへの道 政権と蜜月」との記事がある。
「風雲児」と評価される事の多いイーロン・マスク氏が、実は「長いものに巻かれる」人物であったとの印象がぬぐえない。
AFPBBニューズ2021年4月22日「中国で米テスラ批判強まる、上海モーターショー騒動めぐり」という「事実上の中国政府によるバッシング」と考えられる騒動への、マスク氏のへっぴり腰の対応にも違和感を感じたが、今度はバイデン民主党政権にすり寄っている。
結局、テスラといえども「自由市場」でEVを普及させるのは難しく、バイデン民主党政権(あるいは中国共産党)の「強権的政策」に頼らざるを得ないということだろう。「自動車の品質」と「消費者ニーズ」を武器に、世界中の「強権的政府」と闘いながらシェアを伸ばしているトヨタ自動車とは真逆の存在だ。
前記「躍進テスラ、EVプラットフォーマーへの道 政権と蜜月」記事中で、充電ステーションの覇権問題が論じられている。もし、テスラが充電ステーションで覇権を握ることができるとすれば、前記「自家用車の9割!? CO2輸出が支えるノルウェー『高EV普及率』の闇」2ページ目「充電ステーション問題」で述べたように、経済合理性に欠ける「採算の合わないビジネス」だからだ。
「高級路線」で得た利益や政府の補助をつぎ込むことによって覇権を握るわけだが、EVそのものが普及しなければ、充電ステーションは世界中に点在する「無用の長物」になる。しかも、採算の合わないビジネスだから、永続性も無いと考えられる。
パソコン・スマホと自動車は違う
全般的には、イーロン・マスク氏の「大胆な戦略」を高く評価している。ツイッター(X)の買収では大きな混乱があったが、ツイッターに改革が必要であったことは間違いが無い。長期的には、マスク氏の戦略は正しかったといえよう。
だが、このマスク氏のキワモノ的ともいえる「大胆な戦略」は「国民車」には向かない。
8月17日公開「製造業出身の基盤を残すゲーム・エンタメ企業、ソニー~アップル超えの『逆ソニーショック』はあり得るか?」6ページ目「懸念は自動車産業への進出」でも述べたように、「安全性・信頼性」は人命にかかわる「自動車ビジネスの根幹」である。しかし、マスク氏にはその認識が充分に備わっていないと思われる。
ツイッターには斬新な発想が必要だが、自動車には地道な安全性と実用性の追求が必要ということだ。
それにも関わらず、価格引き下げでシェア拡大を目指せば、多数販売されるテスラ車の安全性の問題がよりクローズアップされる。人命にかかわる「自動車」はシェアが大きくなり存在感が増すほど、「安全性」が求められるのだ。ブランド戦略と安全性の両面で、「価格引き下げ」は悪手なのである。
例えば、Gigazine8月7日「テスラが車両の航続距離について虚偽の宣伝を行っていたとして集団訴訟を提起される」と報道されている。
EVの電池残量表示については、他社製のEVでも問題があるようだが、電池(燃料)切れも重大な事態を引き起こす。パソコンやスマホの電池切れとは違う。高速道路の真ん中で立ち往生することを考えればすぐにわかる。
消費者が求める「企業の誠実さ」の水準が、自動車においてはパソコンやスマホとは違うのだ。
トヨタを上回るのは異常だ
また、時価総額がトヨタ自動車をはるかに上回るのは奇妙だ。トヨタ自動車の約1000万台の販売台数に対してテスラの販売台数は130万台程度だから、おおよそ8分の1である。
確かに、Response 6月6日「テスラの販売台数1台あたりの営業利益は国内自動車メーカーの何倍?」によれば、販売台数1台あたりのテスラの営業利益は約116万円で、トヨタの4倍に相当する。
だが、それを考慮してもテスラの時価総額は高すぎる。しかも「値下げ戦略」によって今後1台当たりの利益は減少すると考えられる。
日本経済新聞8月16日「EV製造のビンファストが米国上場、時価総額でGM超え」と報道されているが、「EVバブル」は異常な状態である。
最後の勝者はトヨタ自動車
結局のところ、独裁的政府(政治家)の強要するイデオロギーに負けずに、「日本はこのままトヨタを失ってしまってもいいのか!?」のように闘い続けたトヨタが「最後の勝者」になると考えられる。
2018年8月27日公開「騙されるな、空前の電気自動車(EV)ブームは空振りに終わる」で述べたように、次世代自動車の本命はハイブリッドである。
前記「製造業出身の基盤を残すゲーム・エンタメ企業、ソニー~アップル超えの「逆ソニーショック」はあり得るか?」8ページ目「アップルを追い越せるか?」において25倍以上もあるアップルの時価総額をソニーが上回ることができるかどうかは未知数だと述べた。
それに対して、日本経済新聞7月8日「テスラ、EV覇権へ攻勢 時価総額はトヨタの4倍」という状況が激変し、トヨタ自動車の時価総額がテスラを大幅に上回る日はそれほど遠くないと考える。
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