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リニア「大動脈輸送を二重化する意義大きい」「静岡工区、一刻も早く着工」…JR東海・丹羽俊介社長

JR東海の丹羽社長(名古屋市で)=伊藤紘二撮影© 読売新聞
 4月に就任したJR東海の丹羽俊介社長が、読売新聞のインタビューに応じた。東海道新幹線の輸送量はコロナ禍前、2018年度の9割程度まで回復した。だが、リニア中央新幹線の開業はめどが立たず、人手不足への対応も課題となる。当面の経営戦略を聞いた。
■潜在的な顧客ニーズつかむ
 ――コロナ禍で、東海道新幹線の利用が落ち込んだ。
 「当社の事業モデルは従来、ビジネス客を中心にした東海道新幹線の需要に対応して輸送力を高め、多くの座席を提供するものだった。20年3月、約5分に1本の『のぞみ』を走らせるのぞみ12本ダイヤを実現し、一つの完成形に達したと考えている。
 一方、コロナ禍を経て、働き方や生活スタイルは変わった。今後は移動につながるあらゆる可能性に対して、常にオープンでなければ潜在的な顧客ニーズはつかめない。柔軟に考え、収益拡大に取り組んでいる。
 一例が『推し旅』という旅行商品だ。アニメやゲームのファンの方々に新幹線を利用してもらって推しに会いに行ってもらう。これまでJR東海はアニメに興味を示さないお堅い会社だと思われていたかもしれない。地道な試行錯誤を続け、最近では大きな話ももらうようになってきた」
 ――労働力が不足している。
 「収益拡大と並んで取り組むのが業務改善だ。コロナ禍に総合企画本部長を務めたので、経営体力の再強化策への思い入れは強い。ICT(情報通信技術)など、新しい技術をベースに仕事のやり方を変え、単体の営業費用約8000億円の1割を10~15年かけて減らしていく。
 社内にも効率化の知恵はあるが、当社の技術分野は土木、電気、機械など多岐にわたっており、隣の部署をよく知らないということも起きてきた。部署や技術分野を横断して議論し、効率化を目指す」
■大井川の水資源、地元の懸念解消に力
 ――社運をかけて取り組んでいるリニア中央新幹線の現状は。
 「南アルプストンネル静岡工区が着工できておらず、27年の開業は難しい。工事を前に進めるには、地元の理解が必要だ。特に、大井川の水資源利用に関する地元の懸念解消に力を入れている。
 21年12月の国の有識者会議で中間報告が出され、当社は工事期間中に静岡県側から山梨県側に流出する湧水について、上流にあるダムの取水量を抑えることで大井川の水量を維持する提案を行った。
 現在はダムを管理する東京電力リニューアブルパワーと、取水抑制に関して精力的に協議を行っている。大井川流域では、懸念を持つ方々もいるので、真摯(しんし)な姿勢で丁寧にコミュニケーションを積み重ねてご理解を得ていくことが大切だ。
 難工事が予想される場所が何か所かあり、工程に少しでも余裕を持たせるため、特に難しいところから着手している。静岡工区も早い段階で着工したかったが、すでに相当年数がたってしまった。
 道路工事であれば、多くの人や設備をつぎ込むことで、工期を縮められるが、トンネル工事は工期の遅れを取り戻すのが難しい。だからこそ、一刻も早く着工したい」
 ――リニアの意義を。
 「東海道新幹線は来年、60歳になる。経年劣化や南海トラフ地震のような大規模災害への備えという必要性から、東海道新幹線とリニアで大動脈輸送を二重化する意義がある。
 社会経済の活性化にも貢献する。移動時間がドラスティックに短縮され、東名阪の3大都市圏はもちろん、中間駅のある地域経済にもプラスになる。多くの人々の生活や仕事のやり方によい影響をもたらすと考えており、期待も頂いている。一刻も早く実現させたい。
 JR東海の使命は、日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献すること。今後も、安全輸送の確保を大前提に、設備投資や人材育成を行っていきたい」
 ◆丹羽俊介氏(にわ・しゅんすけ) 1989年東大法卒、入社。人事部長、広報部長、総合企画本部長、副社長などを歴任し、2023年4月から現職。会社の吹奏楽団に所属するトランペット奏者で、JRグループ音楽連盟の会長も務める。愛知県出身。