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韓国に激震!日本〝半導体王国〟復活の兆し 産業弱体化の背景に度重なる米圧力 今後は材料と製造装置がカギを握る

日本の半導体産業の「落日」が叫ばれて久しい。だが、日本企業の経営や政府の政策が劣っていたから台湾や韓国など海外勢に後れを取ったとの論調に疑問を呈するのは、国際投資アナリストの大原浩氏だ。大原氏は緊急寄稿で、材料や製造装置などの分野では「産業の基盤を今でも押さえている」と強調する。
歴史を遡(さかのぼ)れば、日本が世界の「半導体覇権」を握っていた時期があった。1986年の半導体売り上げ世界ランキングはNEC、日立製作所、東芝と、トップ3を日本勢が占め、富士通、松下電子工業、三菱電機なども上位という圧倒的強者だった。
それに危機感を抱いたのが当時の米国政府だ。ミサイルなどの製造には半導体が必要不可欠で、その全てが日本製になれば「安全保障上のリスク」が生じると考えた。
71年のランキングでは、1位がテキサス・インスツルメンツ、2位がモトローラ、3位がフェアチャイルドと米国企業が上位を独占していたのに、15年ほどで日本勢が追い越したことから「日本脅威論」が高まった。
85年に米半導体工業会が「日本の半導体メーカーが不当に半導体を廉価販売している」と主張、米通商代表部(USTR)に提訴したことなどをきっかけに、86年に日米間の「第1次半導体協定」が結ばれた。それでも日本勢の勢いは衰えず、91年に「第2次半導体協定」が結ばれた。
さすがの日本勢も、度重なる米国の圧力に抗しきれず、92年に世界首位の座を米国・インテルに明け渡した。さらに、米国の圧力を受けていなかった韓国が躍進し、98年には日本の半導体と韓国の半導体の年間売上高が並んだと伝えられる。米国が望んだ通り、日本の半導体産業が弱体化したのである。
だが、日本勢がやられっぱなしであったわけではない。2019年7月、フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素という半導体製造に不可欠な3品目の「輸出管理強化」が韓国半導体業界に激震を走らせた。
フッ化水素の「99・9999999999%」(トゥエルブ・ナイン)という純度を実現できるのは現在のところ日本企業だけだ。
製造装置でも世界トップテンの中に東京エレクトロンをはじめとする日本勢が4社ランクインしている。中韓、台湾などは製造装置を輸入して工場に置いているだけといえなくもない。「完成品」分野で米国の圧力に屈した日本だが、半導体産業の基盤を今でも押さえているといえる。
「パワー半導体」と「ミニマルファブ」
さらに今後、日本の半導体産業を発展させると考えられるのが「パワー半導体」と「ミニマルファブ」だ。
パワー半導体とは「ロジック」などの「計算」を行うのではなく、簡単にいえば電気の制御(スイッチの役割)を担う。家電製品などに多用されているが、重要なのは「車載」である。自動車の電子化が進行しており需要は膨大だ。車載半導体は気温150度を超えるような環境からマイナス50度程度でも作動しなければならない。
そこで「日本品質」のもの作りが生かされる。例えば、一時は経営的に厳しかったルネサスエレクトロニクスは、トヨタ自動車やデンソーの支援も受けて躍進中だ。
「ミニマルファブ」は、5000億円から1兆円以上もかかる台湾積体電路製造(TSMC)などの「大量生産工場」とは真逆で、「多品種少量生産」のためのコンパクトかつ安価な工場だ。
大型工場は、半導体市況によっては大けがをする。リスクの高い分野は韓国や台湾企業に任せ、「首根っこ」を押さえるのが、日本の半導体王国復活の近道だと考える。
■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。