Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

日本の不動産を買い漁る“外資マネーの宴”の先に待つもの

 日本国内の不動産取引が活発だ。都市未来総合研究所の調査によれば、2022年度のおもな法人による国内不動産取引額は4兆4796億円で、コロナ禍前の2019年度とほぼ同じ水準に回復している。
国内不動産取引のプレーヤーに変化
 2013年から始まった金融緩和の影響から低金利・カネ余りの状況が続いたことは、巨額の資金が不動産マーケットに流れ込むこととなり、不動産取引はおおいに活性化された。コロナ禍で一時的に取引額は減少したものの、ようやく影響を脱してきたとみることができよう。
 だがコロナ禍では日本のみならず、欧米を中心として大規模な金融緩和が行われたことを背景に国内不動産取引のプレーヤーに変化が生じている。22年度の国内不動産取引の買い手側の主役は外資系の投資家たちになっているのだ。外資系法人による22年度の国内不動産取得額は総額で1兆1913億円に達し、これまでの主役だったJ-REIT(不動産投資信託)の取得額を上回った。
 身近にはタワーマンションなどを外国人が買いまくっているという報道はよく見かけるが、最近では国内の大規模オフィスやホテル、商業施設、物流施設、賃貸レジデンス1棟まるごとなど、取引はどんどん大型化、そして買い手は外国人個人のみならず外資系事業法人、投資ファンドなどの動きが活発化している。
“外資マネーの宴”の場に
 香港系の不動産投資会社ガウ・キャピタル・パートナーズは、日本において総額5000億円の不動産取得を表明したが、実際に港区の東京メトロ「青山一丁目」駅直結のオフィスビル、青山ビルヂングを840億円で取得。千葉ニュータウンの大型物流施設、ロジスティクスセンターを800億円、さらにはJ-REITであるインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人を、丸ごと3244億円で買収し、世間を驚かせている。
 シンガポールが本拠のGICは港区芝公園にあるホテル、ザ・プリンスパークタワー東京を含む31棟の不動産をバスケットにして一括で取得。取得額は1500億円といわれている。同じシンガポール系の不動産投資会社キャピタランドは墨田区にある商業施設、オリナスを420億円で買収している。
 英国系の不動産投資ファンド、M&Gインベストメンツは横浜みなとみらいにあるオフィスビル、みなとみらいセンタービルを800億円、東京都中央区にある大型レジデンス、グレースレジデンス東京をはじめとした30棟のレジデンスをこれもまとめて492億円で取得している。
 米国系のモルガン・スタンレーも有明にあるオフィスビル、有明センタービルを400億円、横浜野村ビルを2期に分けて計664億円で取得している。
 もはや日本の不動産はマンション1戸を買う個人客だけでなく、こうした外資系法人、不動産投資ファンドによる宴の場になっているのが実態だ。
日本だけが、低金利政策から抜け出せない
 欧米ではコロナ禍での金融緩和の影響でインフレが生じ、すでに金利は上昇している。直近ではアメリカの30年の固定型住宅ローン金利は7%を超える水準に及んでいる。ところが日本だけがいまだに低金利政策から抜け出すことができていない。日本と先進諸国との金利差は開いていくいっぽうであり、金利差に伴う為替安は外国人投資家の目を日本の不動産に向かわせている。安い円を日本に来て低金利で調達し、日本の不動産に投資をするという構図だ。
 かつて平成初期にバブルが崩壊したときは、価格が下がって身動きができなくなった不動産関連の不良債権を買い漁り、高値で売り逃げたのも外資系。また屑同然になったこれらの不動産をリノベーションやコンバージョンによって再生させ高値で売り抜ける手法を駆使したのも彼らである。
 今回の特徴は、オポチュニスティック型と言われるこれまでの手法を使うというよりも、国内のコア資産と呼ばれる基幹オフィスビルや大型のホテル、商業施設や物流施設などの大型不動産に触手を伸ばしていることだ。
 従来コア資産はオポチュニスティック資産と異なり、短期間でバリューアップして売り抜けるというよりも比較的長期間保有して運用利回りを享受するスタイルの資産である。
 ということは、彼らは比較的長期間、日本においてコア資産を保有して運用していくことを前提にしていることになる。こうなった場合、不動産マーケットはどうなるのだろうか。
あらゆる不動産の賃料値上げへ
 間違いなく賃料が上がることになる。彼らは冷徹な投資家だ。投資を行えば、まず投資額が確定する。利回り計算でいえば分母の部分だ。そのうえで利回りをより高くするには分子に該当する賃料収入を今よりも上げればよい。よい資産であればあるほど立地がよく、テナントの入居率も高いはずだ。つまり彼らがこれからやってくることは、テナントの賃料を大幅に値上げしてくることに帰結する。
 これはオフィスにとどまらず、賃貸レジデンス、ホテル、商業施設、物流施設のすべてに対象が及んでくるだろう。
 日本にとって大切な社会インフラともいえるコアな不動産が買い占められ、投資利回りを上げることを目的に容赦ない賃料引き上げが行われる。その結果今よりも利回りが上がれば、その先でさらに高値で売り抜けることが可能になる、彼らのシナリオはおおむねこんな感じなのである。
外国資本に翻弄される日本
 税金が上がる、社会保障費が上がるといって巷では騒いでいるが、その裏側で不動産の賃料値上がりはこれからが本番になる。賃料が上がるとはどういうことか。賃貸マンションに居住する人は家賃が上がる。オフィス賃料が上がると企業は固定費が増える結果、人件費を抑えようとする。製品の値上げに走る。物流コストが上がればモノの値段は上がる、ホテルの宿泊料も高くなる、商業テナントの賃料が上がれば、バーゲンをやる余裕もなくなる。小憎らしいことにこれを演出しているのは日本なんかには住んでいない外資系法人や不動産投資会社の連中なのである。
 現在、日本は外国資本、外国人に翻弄され、大事な優良資産まで抑え込まれ、企業は買収され、外国企業に賃料を払い続けるようになっている。日本の不動産はグローバルな視点からみてあまりにフリーマーケットである。国力が衰えるということが、どんな事態を生じさせるかについてまだ多くの国民が気づいていない。
 いつまでも先進国気取りで、胸を張っている余裕などないはずだ。緊急事態は海の向こう側ばかりではなく、足元はすでに崩れかかっているのである。
(牧野 知弘)


外国に援助している余裕はもうない!