Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

習近平の「傍若無人」が招いた中国の「ヤバい国難」…独自の悪法「反スパイ法」の乱用で日本人17人を「拘束祭り」の一方、「外資頼りの中国経済」の「大矛盾」…世界中があきれ果て

9人は実刑判決
雲行きの怪しい中国経済に、不動産不況に続く、新たな火種が浮上してきた。今年7月1日付で施行した「改正反スパイ法」の危うさ、である。先週木曜日(10月19日)、中国政府は、北京で今年3月に拘束した日本人男性(アステラス製薬の現地法人幹部。50歳代)をスパイ容疑で正式に逮捕したことを明らかにした。


この日本人男性について、中国政府はこれまで「中国は法治国家だ。法に基づいて適切に処理する」「確たる証拠を得ている」などと繰り返すばかりで、具体的にどんなスパイ活動をしたのかをまったく明らかにしていない。
日本の外務省によると、中国では、2014年のオリジナルのスパイ防止法の施行以来、日本人がすでに17人も拘束を受け、このうちの12人が逮捕された。9人は実刑判決を言い渡された。米国企業でも、今年3月に信用調査会社ミンツ・グループの中国人従業員5人が拘束され、事務所を閉鎖。同4月にはコンサルティングのキャップビジョンが蘇州オフィスのほか、北京市、上海市、深圳市で一斉調査を受けた。


このような傍若無人な行為が繰り返されるようでは、経済活動は委縮する。多くの外国企業が対中不信感を強めて、中国への進出や投資に二の足を踏むだろう。既に進出している企業が事業の縮小や撤退、投資の回収を始めても何ら不思議はない。


中国が折からの不動産不況を克服するには、積極的な外資の導入が不可欠なのに、中国政府は逆なことをしていると言わざるを得ない。事態は深刻である。


経緯を振り返ると、中国当局に逮捕されたアステラス中国現法の幹部は今年3月、帰国しようとしたところを、国家安全当局に「反スパイ法と刑法に違反した」として拘束され、北京市内の収容施設で監視下に置かれた。


日本政府はお手上げ
同26日。アステラスは北京市で拘束された50代の日系企業の男性が同社の社員であることが判明した際に、広報担当者が「どのような経緯で拘束されたかは現時点ではわからない」「関係する皆さまにご心配をおかけしております。外務省を通じて情報収集をしており、適切に対応していきます」とコメントした。


今年4月には林芳正外務大臣(当時)が中国を訪問し、中国の李強首相に拘束に抗議したうえで解放を要求したものの、実現しなかった。


これまでの間、日本大使館員による領事面会が月に1度のペースで、合計6回実施された。ただ、当初は対面での面会を拒まれ、モニター越しの面会だった。このため、日本政府が対応の改善を求め、7月から対面での面会が実現した経緯がある。社員の健康には問題がないという。


一方、すでに述べたように、中国政府はこれまで、男性の具体的な容疑内容を明らかにしていない。10月19日の記者会見でも、中国外務省の毛寧副報道局長は、日本人男性について「スパイ活動に関与した疑いがあり、法に基づき刑事強制措置をとった」との説明を繰り返しただけだ。


このほど事態がエスカレートし、社員が逮捕されたことによって、起訴や裁判などの手続きに突き進み、拘束が一段と長期化するのは避けられないとみられている。


これに対し、日本政府はお手上げ状態だ。松野博一官房長官は10月19日の記者会見で、男性が「10月中旬に逮捕されたことを確認している」と、中国政府から通知を受けたことを明かしたものの、「早期解放を強く申し入れており、働きかけを継続する」と述べる以外の手が無かった。


オリジナルの反スパイ法やそれと密接に絡む国家安全法を、中国の習近平政権が制定したのは2014年のことだ。以後、中国の市民や社会に対する統制と、外国人への監視、取り締まりは厳しさを増す一方だ。


一般国民に「通報義務」
今年7月に施行した改正反スパイ法の最大のポイントは、「スパイ行為」の対象を拡大した点にある。オリジナルの反スパイ法は「国家機密」の提供に限定していたが、改正により「国家の安全と利益に関わる文書、データ、資料、物品」の提供や買収に取り締まりの対象が拡大した。ところが、肝心の「国家の安全と利益」については具体的な定義がなく、当局の恣意的な運用を許すものとして憂慮されてきた。スパイ行為の疑いがあれば、該当者の手荷物や電子機器などを強制的に調べられる仕組みになっている。


また、犯罪の対象としては、インフラなどのサイバーセキュリティーも重視している。


取り締まりの体制強化も特色だ。中国の公的組織や法人、一般の国民は、スパイ行為を見つけた場合、通報義務を負うことになった。また、中国メディアは反スパイの宣伝・教育活動を義務づけられた。


中国と対峙する米国のバイデン政権は、改正反スパイ法の施行の前日にあたった6月30日、国家防諜安全保障センター(NCSC)が米国企業向けの注意喚起文書を公表。その中で、スパイ行為の対象が曖昧な問題に触れたうえで、外国の企業、記者、学術関係者、研究者に法的リスクがあると警鐘を鳴らしていた。


あわせて、中国が2021年にサイバーセキュリティー法、個人情報保護法、反外国制裁法などを相次いで制定しており、これらを根拠に、中国当局が中国国内で活動する外国企業のデータへのアクセスや管理に乗り出し、通常のビジネス活動をスパイ行為とみなして罰則対象にされかねないとの危惧を露わにしていた。


これらの法律については、外国企業で働く中国人従業員が中国政府の諜報活動に協力を迫られる根拠にもなりかねないという。


こうした状況が深刻なのは、外国人が中国への二の足を踏みかねない状況を生んでおり、経済活動を停滞させ、低迷する中国経済をさらに押し下げる要因になる問題でもある点だ。


もともと中国経済の低迷は顕著で、国際通貨基金(IMF)は10月10日公表の「世界経済予測」で、今年(2023年)の中国の成長率見通しを前回予測より0.2ポイント低い5.0%に、来年(2024年)のそれを同じく0.3ポイント低い4.2%に引き下げた。米国と中国のデカップリング(経済分断)や不動産市場の混乱への懸念が主な背景だった。


この結果、すでに外資の中国向け投資は減る一方になっている。中国国家外貨管理局によると、外国企業が今年4〜6月に中国で工場建設などに投じた「対内直接投資」額は49億ドルとデータが確認できる1998年以降で過去最少となった。落ち込みも激しく、前年同期と比べた減少率が87%と過去最大を記録した。中国政府による今年1月のゼロコロナ政策の撤回も不発だったと言わざるを得ない。


加えて、アステラス社員の逮捕にみられるような改正反スパイ法の恣意的な運用が改めて浮き彫りになったことから、投資の縮小を加速しかねないとの見方がある。


例えば、中国に進出している企業が会員として加盟している中国日本商会が10月12日に発表した会員企業へのアンケート調査をみても、今年の対中投資を「しない」もしくは「昨年より減らす」と回答した企業が全体(1410社)の5割近くに達しており、「去年と同額」という企業の4割を上回った。


事業環境の満足度に関連して中国企業と「同等に扱われていない」と回答した企業がそう思う分野として「規制執行」をあげるところも多かったとしている。


アステラス社員の拘束以来、日本政府は様々なレベルで中国に対して即時開放を求めてきたが、実現していない。


習近平政権は自らの権力基盤の維持に躍起なのだろうが、こうした行為は外国企業の意欲を委縮させて一段の成長力低下を招き、自ら中国経済の首を絞める行為だと自覚すべきだろう。