Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

ネコウヨ戦記 安倍総理と駆けた10年 112


私はネコである。名前はもうない。


【112】フォースか理力か?


ふたたび「スター・ウォーズ」ネタでまいります。


前回の記事では、同シリーズに登場する重要な概念「THE FORCE」について、「フォース」とカタカナで表記するより、「理力」「原力」などと意訳したほうが良いのではないかと論じました。
「フォース」は原語の発音にこそ近いものの、THE FORCE の持つ意味の広がりを伝えるものとは言いがたいからです。


意味の広がりを伝えていない以上、THE FORCE の概念を多面的に理解することは難しくなる。
ひらたく言えば、イメージが豊かにふくらんでゆかないのですね。


じつはここに、われわれが母国語を大事にすべき理由があります。
言葉は何であれ、単独で存在しているわけではなく、何らかの言語の一部をなしている。
そして言語の背景には、固有の歴史や文化が横たわっています。


言葉が持つ意味の広がりやイメージのふくらみは、歴史や文化によって支えられているのです。


裏を返せば、他の言語に属する言葉について多面的に理解するためには、なるべく母国語に移し替える(つまり翻訳する)ほうが良い。
そうすれば、新たな形で意味が広がったり、イメージがふくらんだりするからです。


いえ、意味やイメージがずれてしまうこともありますよ。
たとえば STAR WARS は当初、「惑星大戦争」という題名で日本公開されることになっていました。
アメリカでの爆発的なヒットを受けて、原題通り「スター・ウォーズ」で公開されることが決まるのですが、「惑星大戦争」名義で作品を紹介した記事も、いくつか雑誌に出ていたのです。


STAR は惑星ではなく恒星ですから、これはちょっと違う。
銀河全体の覇権をめぐる物語という、映画の内容とも合致しません。
「銀河大戦争」ならともかく、「惑星大戦争」がボツになったのは、無理からぬなりゆきと言えるでしょう。
ちなみに1977年冬、東宝が「惑星大戦争」というSF映画を公開していますが、これはボツになった題名を流用しただけであり、内容的にはまったく無関係です。


けれども「銀河大戦争」のほうが、「スター・ウォーズ」より、どんな物語か連想しやすくありませんか?
当然の話です。
「銀河」も「大戦争」も、日本語としての意味の広がりやイメージのふくらみを持っているのですから。


実際、「スター・ウォーズ」関連用語で、カタカナ表記にしないほうが良かったのでは? と思えるのは「フォース」だけではありません。
劇中の有名な小道具、「ライトセーバー」もそうです。


ご存じのとおり、これは刃の部分がレーザーになっている剣ですが、初公開当時は「光剣」「光線剣」と訳されていました。
日本人にとって、どちらがイメージ豊かな表現か、あえて言うまでもないでしょう。


「ライトセーバー」でとくに気になるのは、こんなふうに書くと、「光の剣」ではなく「光を節約するもの」のように読めてしまうこと。
英語なら前者はLIGHT SABER、後者は LIGHT SAVER ですが、カタカナ表記で両者を区別するのは事実上、無理です。


ついでにわが国において、 SABER は「セーバー」という英語読みではなく、「サーベル」というオランダ語読みで定着している。
1978年、「スター・ウォーズ」が初公開されたときの上映パンフレットを見ると、LIGHT SABER は「光線剣」と訳され、「ライト・サーベル」とルビが振られていました。


英語読みとオランダ語読みをつないだわけですが、わが国には重箱読み(「じゅうばこ」のように、上の字を音で読み、下の字を訓で読む)や、湯桶(ゆとう)読み(その逆)の伝統がありますので、これは良しとすべきでしょう。
「ライト・サーベル」なら、光の剣なんだとイメージが湧くじゃないですか。


あるいは敵側の繰り出す最終兵器、「デス・スター」。
初公開当時は「死の星」と訳されていました。


英語のDEATH には「死神」(=死をもたらすもの)という意味もあるので、「死神星」としたら、いっそう良かったかも知れませんが、「デス・スターが近づいてきます!」というより、「〈死の星〉が近づいてきます!」のほうが、緊迫感があるのは明らか。


それどころか初公開版パンフレットは、主人公たちの乗る宇宙船「ミレニアム・ファルコン」号を紹介する際も、船名をカタカナで表記したあと、「(黄金時代の鷹)」と補足しているのです。
MILLENNIUM FALCONの意味を説明したわけですが、いかにも速そうな感じがしませんか?


かりに英語で
MILLENNIUM FALCON ESCAPED FROM THE DEATH STAR
と言ったとしましょう。


これはむろん、
「ミレニアム・ファルコン号がデス・スターを脱出した」
ことを意味します。


しかしそこには、
「鷹が死を逃れた」(FALCON ESCAPED DEATH)
というイメージもこめられている。


このイメージを日本語で伝えようと思ったら、
「〈黄金時代の鷹〉号が、〈死の星〉を脱出した」
と訳したほうがいいわけです。


日本初公開から今年で38年、「スター・ウォーズ」に「惑星大戦争」という幻の邦題があったことを知るファンも、今では少数派でしょう。
けれども「フォース」が「理力」と訳され、「ライトセーバー」が「光剣」と訳されていたころの方が、日本人は「スター・ウォーズ」の世界をイメージ豊かに楽しんでいたように思えます。


われわれの母国語が日本語であることは、38年前も今も変わらないのですから。
ではでは♪