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人手不足深刻で路線バスの減便・廃止が首都圏でも 「バス運転手を長年、ぞんざいに扱ったツケが来た」

「運転手不足」が深刻化し、全国の路線バスの減便や廃止が相次いでいる。


帝国データバンクが2023年11月22日に発表した「特別企画:全国『主要路線バス』運行状況調査(2023年)」によると、今年だけでバス会社の8割が「減便・廃止」を行った。


調査担当者は「長年、バス運転手を『ぞんざい』に扱ってきたツケがきた」と強調する。いったい、どういうことか?


東京、埼玉、千葉でも減便相次ぐ
今年(2023年)9月、大阪府富田林市など4市町村を走る金剛バス(本社・富田林市)が、運転手不足を理由にバス事業を廃止し、12月20日で全15路線の運行を終了すると発表した。
国内最大級の約2700台のバスを保有する西日本鉄道(本社・福岡市)も、やはり運転手不足を背景に今年10月から福岡市や北九州市を走る32路線を減便、1路線を廃止している。


人口密集地の首都圏でも例外ではない。たとえば、東京都や埼玉県で路線バスを運営する国際興業(本社・東京都中央区)は、今年10月までに池袋駅や高島平駅、浦和駅を発着する路線などで減便を実施した。千葉中央バス(本社・千葉市緑区)も今年10から鎌取駅や土気(とけ)駅を発着する路線で大幅な減便を行っている。


帝国データバンクの調査は、路線数が2022年度末時点で30本以上有する民営バス事業者127社が対象だ。高速バス路線のみの事業者は除いた。その結果、約8割にあたる98社(77.2%)で2023年中に1路線以上の「減便・廃止」を実施することが判明した。24年に予定・検討中を含めると計103社(81.1%)に上り、全体の8割を超えた【図表1】。


帝国データバンクでは、127社合わせて約1万4000路線のうち、約1割に相当する路線で、減便や廃止による影響が及ぶと推計する。減便や廃止となった理由として、ほぼ全ての事業者が「運転手(人手)不足」をあげた。これまで都市間高速バス路線などを廃止し、コストカットに努めてきたが、運転手の高齢化や人手不足の深刻化で限界に達したのだ。


さらに、ドライバーの時間外労働に年960時間の上限が課される「2024年問題」に対応するためにダイヤ改正を行ったケースや、沿線の人口減による不採算化を理由としたケースもみられた【図表2】。


運転手の残業が減る「2024年問題」が現実化すると、さらに多くの運転手が必要となる。日本バス協会が今年9月に発表した調査によると、現在の路線網を維持した場合、2024年には2万1000人、2030年には3万6000人の運転手が不足するという計算だ。


橋下徹・元大阪市長の「給与カット」が元凶の1つに
これからのバス路線は、いったいどうなるのか。J-CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した帝国データバンク情報統括部の飯島大介さんに話を聞いた。


――運転手の人手不足が深刻ですね。やはり、賃金の低さもあるのでしょうか。国土交通省の交通政策白書によると、2022年のバス運転手の年間所得額は平均399万円で、トラック運転手より57万円低く、全産業の平均よりも98万円低い額です。


これでは、他の業界にどんどん人材が流れますよね。


(以下引用)


飯島大介さん そのとおりです。特に路線バスの運転手は給与が安いため、現在、コロナ禍が終わり、観光需要が伸びている観光バスの運転手に人手が流れている状態です。観光バスのほうが比較的給与が高いですから。


長年、バス運転手をぞんざいに扱ってきた日本社会のツケが、ここに来て、一気に問題を大きくしている気がします。


(以上引用)


――どういうことですか。


(以下引用)


飯島さん バス運転手は、ある意味、飛行機のパイロット同様に人の命を預かる重い責任を持っているに、ここ十数年、賃金がコストカットの対象にされてきました。象徴的な出来事が、日本維新の会の橋下徹氏が大阪市長だった2012年、大阪市営バスの運転手の給与を、一挙に4割カットを打ち出したことです。


市営バスの運転手の平均年収が739万円と、民間のバス運転手より高いとして、在阪大手私鉄バスの最低レベルに合わせたのです。当時、大阪市民たちは「市バス運転手、給料800万円なんてありえへん」と、橋下市長に喝采を送ったと聞きます。


しかし、民間も含めてバス運転手の間では、「市バスの運転手の給料が高過ぎるのではない。バス運転手の給料が低すぎるのだ」という声があったのは確かです。その後、この大阪の動きが全国のバス運転手の給与を低く抑える流れのきっかけの1つになった可能性があります。


(以上引用)


乗客の「カスハラ」から運転手を守れないバス会社
――賃金以外にバス運転手の成り手が少なくなった理由はありますか。


(以下引用)


飯島さん カスハラ(カスタマーハラスメント、悪質なクレーム客)の問題も大きいと思います。バス運転手はたえず乗客のクレームにさらされます。「急発進した。運転が荒い」「前の車と車間距離をとっていない」といった抗議電話が頻繁にバス会社にかかってくるし、SNSでも発信されます。


会社はこうした抗議に弱く、自分たちを守ってくれない、という不満を持っているバス運転手が多いと聞きます。たとえば、今年7月、中部地方のバス会社運転手が運行中の休憩時間にSA(サービスエリア)でカレーを食べていたら、SNSで「バスの運転手がSAでカレーを食べている」と発信され、会社に抗議電話が来ました。


当の運転手が「休憩時間にカレーを食べることも許されないのか。会社は対応してくれなかった」と反論ツイートを行ない、ネットで話題になりました。


(以上引用)


――社員を守れないバス会社も情けないですね。


(以下引用)


飯島さん 逆にカスハラには断固、対応して運転手を守るバス会社もあります。大阪府の高槻市営バスです。乗客から「バス停をはみ出して停車した」という抗議電話が来ると、ドライブレコーダーの映像から「バス停に駐車していたクルマがあったため、よけて停まりました」と説明。「着席しないと転倒すると、強圧的に言われた」という抗議電話が来ると、バス車内の映像と音声の記録から「バスが揺れ動く道路だったため、丁寧にお願いしました」と反論。


しかも、こうしたクレームに対する対応を、ドラレコの映像とともにウェブサイト上の「お客様の声」コーナーに公開しているのです。


(以上引用)


――すべてのバス会社が「お客様は神様」と思い込んでいる一部の客から、運転手を守ってくれるといいのですが。


(以下引用)


飯島さん 賃金の低さに加え、社員を守れない会社の環境、そして最近の物価高が、運転手たちに「もうやってられない!」という気持ちにさせているのだと思います。


(以上引用)


もうお先真っ暗、外国人やAIも頼れない
――ところで、今後どうなるでしょう。バス会社から運転手の賃上げや待遇改善の動きはみられますか。


(以下引用)


飯島さん 全国的に運賃を上げる動きが加速しています。運賃を上げた分を賃上げに反映させて、人材を確保しようと各社頑張っています。京王バス(本社・東京都府中市)では、今年9月から初乗りを180円から200円に引き上げ、11月には早くもそれを還元、運転士の初任給を年間で20万円(最大7.8%)引き上げると発表しました。


ただ、2024年から「ドライバーの残業規制」が始まりますから、これまで3人のローテーションで回していた路線に4人必要になります。正直、お先真っ暗だと思います。外国人の運転手を、という意見も聞きますが、これほど運転手の賃金が安い国にわざわざ来てくれるでしょうか。


AI(人工知能)による、自動運転バスの運行も、やっと一定の条件つきで車の運転の全てをシステムが担う「レベル4」の実証実験が始まったばかりです。完全自動運転が可能な「レベル5」はいつになるか見通せません。


私たちは、もっとバスの運転手さんを大事にするべきだったと思います。


(以上引用)


(J-CASTニュースBiz編集部 福田和郎)