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川勝知事が持ち出した解決策がデタラメすぎる…リニアが開業できない「ほんとうの原因」

JR東海は12月14日、東京・品川、名古屋間の2027年開業を、静岡工区の未着工を理由に、開業時期を「2027年以降」に変更すると発表した。
静岡工区着工が決まり、品川、名古屋間の工期見通しが立った段階で、改めて開業時期を明らかにする、としている。
今回の発表で、2027年に開業できない理由が「静岡県の対応にあること」を明確にした。
この発表に対して、翌日の15日、川勝知事は「2037年の全線開通を一刻も早く実現するために、できるところから開通していくべきである」という珍妙なコメントを出した。
12日の県議会一般質問で、中田次城県議(自民)とやり取りをした川勝知事は「『ルート変更』は念頭にない」とした上で、
「現在、甲府駅と橋本駅(神奈川県)は72キロあるが、43キロの実験線ができているから、甲府駅まで6キロ、残りの20数キロを神奈川県まで延ばせば、実験線が実用線になる。これでどうですか」
と『部分開業』を示唆していた。
「解決策は持っているが言う立場にない」
当然、中田県議は、静岡工区着工についての解決策を聞いている。
それなのに、全く関係のない甲府駅と橋本駅の『部分開業』を川勝知事は解決策として提示したのだ。
このため、中田県議は「知事会見で言った解決策は何なのかと聞いている。その場で解決できる具体的なものではない。それならば発言を撤回すべきだ」と突っ込んだ。
川勝知事は「解決策は持っている。これは申し上げたところで、わたしは意思決定者ではない。従って、それを言うのは失礼であり、資格がない。ただ勝手なことを言っているだけになる」などと逃げた。
具体的な解決策の回答を求めているのに、川勝知事は逃げてしまった。その直後、議会運営委員会で協議を行い、あらためて川勝知事の答弁を求めた。


リニア問題の解決策を「部分開業」と答弁する川勝知事(静岡県議会、筆者撮影)© 現代ビジネス
4度目の答弁に立った川勝知事は「現行ルートを前提にした上で、できるところから、つまり開通できる状況になった区間から開通させることが解決策となる。
わたしは実験線の延伸、完成が1つの例示となると申し上げた。これは社長にしかできない」と、『部分開業』が10月の知事会見で述べた解決策だとした。
翌日の13日の会見で、中日新聞記者が「JR東海の意思決定者が川勝とひざを突き合わせて話して、その場で解決策を出せる自信もあると知事は発言した。県議会でも静岡工区に関することを想定して聞いていた。静岡工区の解決策が『部分開業』では理解できない、つながらない」と疑問を投げつけた。
川勝知事は「静岡工区の解決はJR東海、それから国とわたしどもの関係で、この環境影響に関わることをじっくりとやっていくというのが申し合わせで、そういう形で、国の有識者会議が継続し、また県専門会議もやっているわけで、それ以外のことをやることを考えていない」と何ともわからない理屈をつけて静岡工区の解決策についてはごまかしてしまった。
部分開業は単なる思いつきに過ぎない
「部分開業」については、雑誌『中央公論』2020年11月号で、東京、甲府間の「部分開業」も選択肢だとして、「できるところから始めてはどうか」と唱えたところから始まった。
静岡県のリニア問題が解決できないならば、「う回ルートへの変更なり部分開業なりを考えるのは『国策』をあずかる関係者の責務でしょう」と結論づけていた。
昨年9月7日、リニア実験線の稼働する山梨県と隣接する神奈川県駅までの「部分開業」が可能かどうかを確認するために、川勝知事は、神奈川県駅などの建設現場を視察している。
翌日8日の定例会見で、川勝知事は「関東車両基地の用地取得が進んでいない神奈川県の現状を見れば、静岡県がリニア開業を遅らせているというのはJR東海がつくった風評だ」などと怒りをぶちまけた。
さらに「2027年の開業をお題目のように唱えても、題目は実現しない。題目は題目でしかない」とJR東海を批判していた。
そして1年以上もたってから、再び、「部分開業」を俎上に載せた。
13日の会見で、テレビ静岡記者が「先月、丹羽社長にインタビューしたが、『部分開業』は現実的ではないとはっきりと述べていた。それなのに、知事はこれからも、『部分開業』を強く発信していくのか」とただした。


川勝知事の「部分開業」を問題にした12月13日の記者会見(静岡県庁、筆者撮影)© 現代ビジネス
また日経新聞記者が「リニア事業は固定費が非常に高いので、『部分開業』をしてもほぼ確実に赤字になる。丹羽社長も否定している状況下で、『部分開業』の実現性は限りなく低い。他にリニアを解決する、あるいは推進する一手が何かあるのか」と尋ねた。
いずれの質問にも川勝知事は回答をごまかしただけである。
翌日の14日の県議会くらし環境委員会で、この問題に質問が集中すると、事務方は、「川勝知事の述べた『部分開業』がリニア問題の解決策が、県の公式見解となった」と答えている。
この結果、JR東海の開業時期「2027年以降」発表に対して、「2037年の全線開通を一刻も早く実現するために、できるところから開通していくべきである」と何ら実効性もない意味不明の知事コメントを盛り込んだのだ。
雑誌『中央公論』で川勝知事は、「静岡工区のリニア問題の解決ができないならば『部分開業』を考えろ」と主張していた。
つまり、「部分開業」は、静岡県のリニア問題に注目させるための単なる思いつきに過ぎない。
静岡県の公式見解とは、「屋上屋を架す」のたとえ通りに、ムダな議論を重ねることを求める、あまりにも無責任な思いつきなのだ。
無責任と言えば、大井川流域が高く評価したリニア・水資源保全の解決策「田代ダム案」への対応である。
川勝知事の求めてきた「県境付近の全量戻し」が、田代ダム案によってようやく解決に向かうのだと誰もが考えていた。
ところが、蓋を開けてみれば、田代ダム案は県専門部会に戻され、この先も意味のない不毛な議論が続けられることになってしまった。
実際のところ、水資源の保全策、生態系保全策について国の有識者会議で議論は終わり、影響はほとんどないことがわかっている。
となれば、静岡県のリニア問題が解決できないのは、「頭の中での思いつき」をそのまま発言する川勝知事という「権力者」が存在するからに他ならない。
2020年6月、金子慎JR東海社長(当時)が初めて静岡県庁を訪れ、川勝知事に準備工事を認めてもらうことを要請した。当時、2027年開業を目指すタイムリミットであり、すぐにでも静岡工区の工事に入る必要があった、という。
結局、川勝知事は首を縦に振らなかった。
それから3年経過したが、いまだに準備工事にさえ入っていない。いま工事に入っても3年遅れ、2030年開業となってしまう計算である。今後、さらに遅れていくことは避けられない。
それなのに川勝知事のリニア妨害はとどまることを知らない。
リニア静岡問題を解決するのに、「ああ言えばこう言う」川勝知事の誠意を期待するのは全くムダである。今回のように対決姿勢を明確にするしかない。
「2027年のリニア開業ができないのは、川勝知事が着工を認めないからである」。さまざまな公的な文書にそのように盛り込んで、静岡県の無責任体質を批判していくべきである。