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リニア遅れは「国家的損失」自民・片山さつき氏 夢のエネルギー「核融合発電」に波及、安全保障の懸念も…停滞している時間はない

リニア中央新幹線の静岡工区(約8・9キロ)の着工が遅れている問題が、日本の新技術や新エネルギーの開発に大きな支障をもたらす懸念が強まっている。日本など各国が「夢のエネルギー」として開発を急ぐ核融合発電には、リニアモーターカーと同様の超電導技術が用いられているためだ。技術開発の遅れはエネルギー安全保障上の懸念となるだけでなく、国策としてリニアと核融合炉に注力する中国を利することにもつながる。この問題を国会で取り上げた自民党の片山さつき参院議員に話を聞いた。


「科学技術の進歩で『夢のエネルギー』も実現できるようになっている。日本の生き残り策の重要な産業になる」
片山氏は、核融合発電の意義について、こう強調した。


核融合発電は、太陽のエネルギーを再現して温暖化問題や、エネルギー問題を一気に解決する「夢のエネルギー」といわれる。1グラムの燃料から石油8トン分ものエネルギーを取り出すことができ、温室効果ガスも排出しない。


原子力発電は核分裂の反応を止めるのに失敗すると核暴走を起こす危険性があるのに対し、核融合は問題が生じてもすぐ止まるなど安全性の高さも特長だ。放射性廃棄物も高レベルではなく、現在の技術で処理が可能という。


現在、日本と欧州連合(EU)、米国、ロシア、中国、韓国、インドが参加して、核融合実験炉「ITER(イーター)」の建設がフランスで進んでいる。2025年の運転開始を目指して総事業費約2兆5000億円が投入される。日本も約2900億円を負担する。


片山氏は、核融合炉のメリットについて「中東の不安定な政情にエネルギー問題を左右されないだけでなく、原発よりも安全性の高い核融合炉は中東など海外にも輸出できるかもしれない。核融合発電が実現すれば、有事に大型原発が狙われる懸念も消える」と指摘する。


各国が開発競争を進めるなかで、日本の懸念材料として浮上しているのが、核融合炉と、着工が遅れるリニア中央新幹線との関連だ。核融合炉の種類には「慣性閉じ込め型」と「磁場閉じ込め型」があるが、イーターは「磁場閉じ込め型」で、リニアと同様の「超電導技術」が用いられているという。


片山氏は党の「超電導リニア鉄道に関する特別委員会」の委員長代理を務めるほか、エネルギー問題にも詳しい。18日の参院予算委員会では「(リニアの)早期実用開始が遅れることは核融合における実用的なサプライチェーン(流通網)づくりも遅れる」とただした。


岸田文雄首相は「(核融合などの)先端分野においてわが国の技術的な優位性を確保し、その安定供給を確保するために政府を挙げて取り組みを進めていかなければと考えている。経済安全保障の観点から、重要な次世代を担う産業について、引き続き国内サプライチェーン構築に万全を期していきたい」と答弁した。


片山氏に質問の意図を尋ねると「『磁場閉じ込め型』の核融合炉には、リニアと共通する超電導の技術が用いられる。リニアは実用化が遅れているが、本来は早期に毎日走行させるべきで、超電導のメンテナンスの技術や得られたデータが核融合炉の開発にとっても重要になる。リニアの部材を製造する産業にとっても重要だ」と説明する。


リニアの静岡工区をめぐっては、静岡県の川勝平太知事がトンネル工事に伴って県内の水資源や生態系に悪影響を与えると強調し、工事が進んでいない。JR東海は品川―名古屋間の開業時期を「27年」から「27年以降」に変更を余儀なくされている。


先端技術の未来のために世論喚起必要


片山氏は「次々に反対の理由を持ち出して、『止めることありき』の姿勢にみえるが、もはや遅らせることに理由はないのではないか。高温超電導技術は世界的にも最新の開発が進んでいるが、すさまじくもったいない。リニアを止めることは、結果的に国の最先端の重要技術の開発を止めているに等しい」と苦言を呈した。


安全保障上の懸念もある。中国もイーターに参加しており、技術力を吸収しながら、自国内でも実証炉建設の準備のため1000億円規模を投入しているとされる。


さらに習近平政権の産業政策『中国製造2025』の重点分野には、『先端鉄道』を挙げて、中国リニアを世界一にしようとする取り組みもある。日本に停滞している時間はない。


片山氏は「中国製の核融合炉を日本が購入せざるを得ない状況というのはメンテナンスを含めて最低最悪の状況だ。課題が生じても自前で手当てしなければならない。省庁間の協力に加え、国が静岡側に働きかけていくことも大切だ。リニアは日本の国土軸形成の未来だけではなく、先端技術の未来にもつながると世論を喚起する必要がある」と指摘した。