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安倍総理の志は死なない!!

コロナ病床「増床は限界」でも感染拡大の失敗を認めない小池知事

東京都は新型コロナウイルス患者専用病床を拡大したが、その分、通常医療が圧迫される。これ以上拡大できる余地はなく、医療崩壊が近づいている。2度目の緊急事態宣言を“勝ち取った”小池百合子知事だが、これまでの対策こそ問われるべきだ。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)




2日連続2000人超えの都内新規感染者
札幌、大阪より緩かった年末の対策
新型コロナウイルスの東京都内の新規感染者数は、1月6日に1591人、7日に2447人と2日連続で過去最多を超えた。8日も2392人と高い水準が続いている。7日現在の確保病床数4000床に対し入院患者数は3154人で、占有率は78%を超える。


「前回の緊急事態宣言と全く異なるステージに入った。極めて深刻だ。人流の抑制を徹底していきたい」――小池知事は1月8日の記者会見でこう力を込めた。


1月2日に神奈川、千葉、埼玉各県の知事を引き連れて西村康稔経済再生担当大臣に直談判した“成果”で、政府は8日から、一都三県を対象とした緊急事態宣言の発出を決めた。


菅義偉首相は経済活動を維持したいとの考えを持っており、1月2日時点では宣言の発出に慎重だったとされる。一方で都内の新規感染者は昨年12月31日の大みそかに1337人と初めて1000人を超えた。感染拡大の防止に手をこまねている菅首相に対し、小池氏が強い姿勢で“劇薬”の投与を迫る構図に、称賛する声が出た半面、強い反発も巻き起こった。


というのも、東京都は他の大都市と比べて、対策が緩いと見られていたからだ。北海道は昨年末、集中対策期間として札幌市の繁華街・ススキノの居酒屋やバーは午後10時までの時短営業、市全体の接待を伴う飲食店には休業を要請した。大阪府も、大阪市内の酒類を提供する飲食店に、午後9時までの時短営業を要請していた。


北海道と大阪府が厳しい対策を採っていた反面、小池知事が要請していた時短営業は一律、午後10時までだった。


政府は都に対し、営業時間を午後8時までにするよう求めていたとされるが、都は拒絶。小池知事は、12月6日にNHKの『日曜討論』に出演し「最初午後8時で切ったところ、お店側の悲鳴が聞こえた」「多くの事業者にすると午後10時までは許容範囲であるということでこの時間にした」などと述べていた。




協力要請が「行き渡らない」と発言
「アクリル板」を嘲笑ったのは小池知事
その後、都内の新規感染者数はどんどん増加。12月17日には821人、26日は949人、そして大みそかの1337人に至る。小池知事が再三、重視すると述べてきた重症者数(国の基準と異なり人工呼吸器またはECMOを使用している患者のみ)も、12月15日に78人、31日には89人に膨らんだ。


小池知事は遅まきながら営業時間を午後8時に改めるのかと思われたが、突如として政府に緊急事態宣言の発出を要請した。


小池知事は、政府が発出を検討すると表明した1月4日夜の臨時記者会見で、東京新聞の記者に「都はさまざまな対策や呼びかけをしてきたが、感染者数が減らず、緊急事態宣言の発令に至った。どこに失敗があったとお考えか」と質問された。その回答は以下の通りだ。


「ほとんどの方にはご協力もいただいておりますけれども、十分に行き渡らないままに(感染拡大に)至ったということかと思います。そしてまた、人と人との感染、接触をいかに防いでいくかということが十分ではなかったかというふうに考えております」――。


感染拡大の要因はあくまで、自分の呼びかけに従わなかった都民の側にあると言わんばかりだが、果たしてそうか。


ダイヤモンド編集部は再三にわたって、小池知事があの手この手で何度もアピールした「感染防止徹底宣言ステッカー」が実効性を担保する仕組みになっていない問題を指摘してきた。


また、小池知事は昨春以降、手洗いなどを呼び掛けるテレビCMに自ら積極的に出演してきたが、上田令子都議会議員が都に確認したところ、昨年4月から今年3月にかけて契約されたテレビCMの費用は7億6000万円、ウェブ広告などを含めると合計11億1000万円にも上るという。


特にテレビCMは、昨年7月の知事選前の4月に頻繁に放映され、「実質的な選挙運動ではないか」と批判された。8月には前述のステッカーが印字されたTシャツを着て、カメラマンの前でポーズを決めてもいた。


もっとも実効性はともかく、これらは感染予防を呼び掛ける目的で行われたものではあった。より問題なのは、感染予防に真剣に取り組んでいる飲食店や事業者を嘲笑っていると言われても仕方がない発言をしていたことだ。


7月の記者会見で「アクリル板を作ってすき焼きを食べて、おいしいかっていうのはよく分かりませんけれども」などと笑いながら発言。アクリル板は十分な高さがあれば、飛沫が飛ぶのを一定程度防ぐ効果があるとされるが、対面の机に設置している飲食店は非常に少ない。設置のための都独自の補助制度もあるが、小池知事が言及する機会は極めて少ない。


このように、不十分ともとれる“呼びかけ”しかできなかった小池知事に対して、「なぜ責任転嫁されなければならないのか」と感じる都民は少なくないのではないか。




コロナ病床の拡大はすでに限界に直面
「これ以上増えたら…」不安隠さぬ都幹部
新規感染者の増加に伴って、医療体制は危機的な状況に陥っている。小池知事は1月7日の臨時記者会見で、従来3500床だった都内のコロナ専用病床を4000床に増やしたと発表した。そのうち、都立病院と都保険医療公社が運営する病院の専用病床は1100床だ。今後はこれを1700床に増やすという。


ただし、新たな600床の増床が、必ずしも医療キャパシティーの“純増”になるとはいえない。それは新型コロナと無関係の診察や治療を中止し、医師やスタッフを振り替えることを意味するからだ。そのため、新型コロナ以外の病気やけがで本来なら救えるはずの命を、救えなくなる可能性が高まる。すでに入院している患者の転院なども必要で、1700床が達成できる時期は未定だ。


新型コロナ患者の治療を受け入れることができる病院は、十分な設備やスタッフがいる病院に限られるが、「大学病院など都内の主だった病院は、すでにコロナ患者を受け入れている」(都幹部)。多摩地域など都心より病院が少ない地域の中規模病院は、地元の救急医療を担うため受け入れは難しい。


つまり、都内の新型コロナ専用病床の準備はすでに限界に達しているということだ。前出の幹部は「これ以上、感染者が増える状況は想像がつかない。未知の領域だ」と不安を隠さない。従来、「65歳以上は原則入院」としていたルールを、「70歳未満で基礎疾患がなく認知機能に問題がない場合は宿泊療養」というルールに昨年末に切り替えてなお、この状態なのだ。


小池知事はこうした深刻な実態について、データを公表してより詳しく説明すべきではないか。政局やパフォーマンスが色濃く反映された言動に終始する限り、都民の行動変容は難しいだろう。