Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

日本の「医療崩壊」は偽善の政治的産物?

 新型コロナウイルス感染症が騒がれ始めた2020年初めから、国民には心身の非常事態が続いている。


 経済活動も停滞し、長引けばボディブローとして日本国家の疲弊(極論すれば沈没)につながりかねない。国会では法改正で強制や罰則が議論されようとしている。


 日本に比して桁違いに感染者や死者が多い(数十倍~数百倍)米欧諸国では一時的に医療崩壊が懸念されたところもあったが、日本では1次感染の時以来ずっと「医療崩壊」が叫ばれている。


 反政権側に立つメディアが政権いじめと視聴率稼ぎに、真実に探りを入れることなく囃し立て、国民を扇動している面もあろう。


 しかし、コロナ患者を受け入れている病院などのパニック状態や喧騒ぶりは確かであるが、日本全体を俯瞰した現実はさっぱり分からなかった。


 新型コロナウイルスがいかなるものかはっきりせず、中国の武漢の病院から伝わってくる映像情報からは「感染症2類相当」*1指定もやむを得なかったし、医療従事者の対処も大仰なものにならざるを得なかった。


 これらの指定に基づく対処で、日本は「世界の奇跡」とまで言われるほど桁違いに少ない感染者や死者しか出さなかった。


*1=2類は結核やSARS。ちなみに1類はエボラ出血熱やペストで、インフルエンザは5類


自粛要請を受け入れた「恐怖心」
 コロナ患者を受け入れた病院や医療従事者がパニック状態になったことは確かであろう。ゾーニングや普段あまり活用の機会がなかったECMOが引っ張り出されるなど、状況の急変と現場の混乱をもたらしたからである。


 日本の医療従事者や医療器具などは充実しており、世界の最先端にあると聞かされてきたので、一部のパニック状態を以って「医療崩壊」というにはあまりに短絡しすぎのように思えていたが、ダイヤモンド・プリンセス号の船内での混乱状況が「医療崩壊」の前兆に見えたのは確かであろう。


 日本医師会の中川俊男会長は「必要な時に適切な医療を提供できない」状況を医療崩壊といっている。この定義からは、船内の状況はまさしく医療崩壊に等しいものであったかもしれない。


 しかし、その後の米国やイタリア、発生源の中国などでは渡航往来の制限や外出・営業の禁止など罰則を伴う施策が講じられ、国によっては都市のロックダウンなども行うが、日本はどこまでも「要請」による「自粛」でしかなかった。


 医療崩壊を叫びながら要請・自粛で済ます状況に感覚のずれも感じられた。


 結果的に死者の少なさなどから外国では日本の「民度の高さ」と評価された。


 手洗い習慣やマスク着用への抵抗感のなさなど生活習慣の違いも影響したであろうが、実際は法律上の「強制」ができなかったこと、さらには平和しか知らず生命至上主義で生きてきた日本人の死に対する「恐怖心」がすすんで自粛させた面も大きかったに違いない。


 客船の混乱が一段落した3月から4月になると、志村けんや岡江久美子など人気芸能人の訃報もあり、多くの国民には「死」が他人事ではないように感じられてきた。


 何の兆候もなく迫りくる死の恐怖を感じた日本人は、不要不急の外出などを控え、企業もステイホームのテレワークなどをすんなりと受け入れ、積極的に協力した。


実効再生産数1以上もたらす「コロナ慣れ」
 こうした結果、前年や緊急事態宣言が出される前に比べて、70%前後の行動削減となり、実効再生産数を1以下に抑えることができた。


 ところが、夏場の2次、特に秋から増加し始めた第3次の感染拡大で第2回目の地域特定の緊急事態宣言が出されたが、行動抑制は普段の10~30%低減くらいでしかなく、宣言地域も前回の宣言時に比べると20~50%増大して、実効再生産数は軒並み1以上である。


 新型コロナに対する国民の意識が変化したとしか思えない。


 前回は死に対する恐怖が国民に共有されたが、今回は前回に比して著しい感染者と死者の増大にもかかわらず、国民は冷静になりインフルエンザなどとの比較も念頭に置きながら、感染防止に努力はするがさほど恐れることもないといった感覚ではないだろうか。


 もう一つは、日本よりも1桁も2桁も感染者や死者が多い外国で医療崩壊の危機は伝えられたが実際に崩壊したという報道はほとんどなく、外国に比してはるかに充実した医療体制にある日本の「医療崩壊」に国民が疑問を抱き始めたことである。


 実際、月刊誌や週刊誌などでは医療専門家でもないタレントや活動家などがテレビ(例えばテレビ朝日の「モーニングショー」)で恐怖を煽り続けてきた実態を検証・批判する報道も出回ってきた。


医療崩壊防止とは「救える命を救う」こと
 こうして、新型コロナ騒動も1年を経過し、感染者と重篤者、死者の比率などからは2類相当よりもフレキシブルに対処できるのではないかとみられるようになってきた。


『週刊新潮』(2021.1.21号)は、米国のアルバート・アインシュタイン医科大学教授を兼ねる東京慈恵会医科大学外科統括責任者で対コロナ院長特別補佐・大木隆生教授(血管外科医)の主張(「医療崩壊はしていない! 『神の手』外科医が訴える『コロナの真実』」を特集している。


 教授は米英などの医療状況にも通暁しており、日本の現状を世界の大局から俯瞰して政府に独自の見解(医療体制の強化、経済との両立、コロナとの共生)を提案し、後には政府の未来投資会議民間議員に抜擢された。


 大木教授はコロナ患者であろうと他の患者であろうと、「救える命が救えなかった」というのが医療崩壊だという。


 これは中川日医会長の「必要な時に適切な医療を提供できない」のが医療崩壊だとみる定義と異なる。


 会長の定義では大学病院で3時間待ち3分診療や手術で長期間待たされるのも医療崩壊となるのかと教授は反問しつつ、新型コロナでイタリアがトリアージで命の選別をせざるを得なくなった状況こそが「医療崩壊」だと述べる。


 教授は自身の執刀を半年待つ患者も多数いるが命には別段の影響がないので、こうした状況は「医療崩壊」ではないという考えである。


医療資源の活用不全がもたらす崩壊騒動
 教授は、大事なことはコロナによる死者を減らすことだという。


 重症化した人が最終的にICUに入ることができ、人工呼吸器やECMOを使えるなら、救えるはずの命が救えない事態は防げるわけで、このための手段を講じるべきだと主張する。


 東京都はベッド4000床のうち三千数百が埋まっており使用率は9割、ICUベッドも250床のうち129床(1月10日)が埋まっており5割超と述べてきた。


 ところが教授の調査では、ベッド数自体は都内に10万6240床、また都内のICUとHCU(準集中治療管理室)は2045床あり、これを分母とすると、使用率は3.3%と6.5%でしかないという。


 ベッド4000床とICU250床は東京都が慈恵医大(8床)などの医療機関に問い合わせて出てきた数値でしかないが、国民はベッド使用率9割、ICU使用率5割超に仰天し、政府は国民の反応も考慮して緊急事態宣言を発出するなどしている。


 日本全国のICUは1万7377床で、重傷者数は850人で、使用率は4.9%であり、大木教授は50%を目安に、オールジャパンの態勢を構築すべきだと主張する。


 米国ではICU患者が2万人強(日本の人口に換算して8000人)、英国ではベッドの28%がコロナ患者に使われ(日本に換算すれば2万8000床)、ICU1380床(日本換算2117床)のところに1300人の患者で埋まっているが、米英とも医療崩壊には至っていないと教授は述べる。


 そもそも2類感染症相当は致死率が高く、未知で、治療法がない病気を念頭に置いているが、1年が過ぎ、治療薬もいくつか見つかり、ワクチンも開発され接種が始まっている。


 そこで、大木教授は「第2類から格下げすれば、国民に向けて、正しく恐れ、十分に注意しながら経済も回そうというメッセージになる」「より多くの病院が新型コロナの治療に参加できる」と語る。


 日本にはICUを完備しコロナ患者の受け入れ可能な病院が1000ほどあるが、2類相当指定で310の病院しか受け入れていないし、2類相当を外せば残り700弱の病院もコロナ患者の受け入れが可能となるという。


 慈恵医大でも660人の医師がおり、ナースは1000人ほどいるが2類相当が障害となって、新型コロナに直接対応している医師は数十人、看護師は60人だという。


「日本医師会の会員大多数は勤務医ではなく開業医で、新型コロナの治療にはほとんど参画できていない」が、指定が外れれば「在宅、ホテル療養している患者のケアに、もっと積極的に関与できます」と教授は語る。


医療崩壊は医師会や専門家の演出か?
 ここで、日本医師会(以下日医)や政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」(以下分科会)の見解を見てみよう。


 前出「週刊新潮」には「『悲壮の仮面』の裏で『コロナ患者』を受け入れない〝顔役″」の記事もある。


 これによると、日医の執行部の大半は開業医で勤務医の意見はなかなか尊重されないという。


 そして「日医が開業医の既得権益を守っている結果、コロナの負担が大病院に集中してしまっている。(中略)現状、軽症でもコロナや発熱患者を受け入れない開業医がほとんど」と、医療関係者が語っている。


 別の病院関係者は中川会長がいうべき言葉は「医療崩壊の危機だから〝自粛″しましょう」ではなく、「開業医もコロナやグレーの患者を受け入れましょう」というべきだと語る。


「民間病院はコロナ患者の受け入れが少ない」と記者会見で指摘された時、中川会長は「コロナ患者を診る医療機関と通常の医療機関が役割分担をした結果だ。民間病院は面として地域医療を支えている」と「苦しい言い訳をした」そうであるが、会長自身が開業医だと明かす。


 同様に、分科会の尾身茂氏が理事長を務める独立行政法人「地域医療機能推進機構」が東京都内で運営する5つの病院の病床数は1532床、首都圏に緊急事態宣言が発出される前日(1月6日)時点でのコロナ患者専用の確保病床数は84床、受け入れコロナ患者は57人となっていた。


 厚労省関係者によると、がん研有明病院は昨年末まではコロナ患者を受け入れない方針できたが、今は40床、病床比率で5.8%をコロナ患者用にし、東海大付属東京病院は入院患者すべてを他へ転院させた上で全99床をコロナ病床にしたという。


 対して、分科会長傘下の病院のコロナ用病床は5.5%で、有明病院の比率よりも低い。


 厚労省関係者が「〝首都圏は感染爆発相当″などと国民の不安を煽っている彼は、実はコロナ患者受け入れに消極的」と述べ、5.5%を「非協力的な証拠」だと語る。


おわりに:政府が主導できないもどかしさ
 中川会長や尾身分科会長のような利益代表ではなく、こうしたときにこそ、本来は最高の知能集団であり、政府の諮問機関でもある日本学術会議がすすんで提言などを出すべきなのではないだろうか。


 菅義偉政権になってからもコロナは収まるどころか、拡大の勢いを増している。そこで、強制力を持つ罰則が考慮に挙がっており、国会の開始(1月18日)をもって提案された。


 法案の成立施行までには紆余曲折が予測され、この間、最高責任者が即座に決心できない状況が続いているわけである。1次感染時は適用法律の改正までに約40日を要したが、今次の法改正もその轍を踏んでいる日本である。


 新型コロナウイルスの位置付け見直しはすでに昨年8月頃から出ていた。しかし、いまだに行われていない。


 総合的な観点からの検討が必要なことは言うまでもないが、緊急事態条項などの欠落から派生して、政治(政府ではない)の機能不全がもたらす国家の危機ではないだろうか。