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安倍総理の志は死なない!!

コロナ入院調整に我関せず、「後手後手」の小池都知事に高まる批判

80代で持病があっても入院できず、都内の自宅で亡くなったコロナ患者がいる。人口や感染者が多いとはいえ、医療資源もまた豊富な東京都でなぜ、こうした悲劇が起きるのか。パフォーマンスに終始してきた小池百合子都知事や、入院調整が後手後手に回って来た都への批判が高まっている。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)


都民ファ都議がここぞとばかりにアピール


都立病院転院の妊婦への支援が突如決定


「小池知事からも広尾・荏原・豊島の都立病院のコロナ対応で転院が必要になる妊婦さんへの支援が正式に発表されました」――。小池百合子東京都知事の「右腕」を名乗る都民ファーストの会の藤井あきら都議会議員は1月14日深夜、ツイッターでこのように投稿した。


「小池都知事の右腕」とツイッターの自己紹介文で自称する藤井あきら都議のツイート


https://t.co/gic6EngsSi


— 藤井あきら デジタル都議 都民ファーストの会 (@fujiiakiratokyo) January 14, 2021
 正確には、荏原と豊島の2病院は、都立ではなく公益財団法人東京都医療公社が運営している。さらに都病院経営本部によると、この2病院では新型コロナウイルス患者の受け入れ拡大後も周産期医療を続けるため、妊婦の転院への支援は現状、都立広尾病院のみとなる。


 都はコロナ患者の増加を受けて、都立と公社が運営する病院での受け入れ病床を1100から1700に増やすため、上記3病院でのコロナ以外の診療を大幅に休止し、コロナ患者の受け入れを拡大すると決めた。


 ところが広尾病院で出産予定だった妊婦による、転院に要する費用が自己負担になるとの訴えがツイッター上で広がった。これを受けて小池知事は14日昼過ぎ、民間病院に転院する際にかかる医療費の差額や紹介料、タクシー代などを都が支援するとぶら下がり会見で突然発表したのだった。


 都民ファの都議たちは、これらは自らの会派による小池知事への要望が実現した結果だと14日午後にSNSで発信。ダイヤモンド編集部の調べでは、都民ファの都議49人中、21人がツイッターなどのSNSで小池知事自身のツイートをリツイートしたり、要望書の写真をアップしたりなどして“手柄”を誇った。


80代で糖尿病でも入院できず死亡


受け入れ病院「偏在」で都に集まる批判


 コロナ禍の中での出産への不安は大きく、妊婦への一定の支援が実現したこと自体は歓迎されるべきだ。それにしても、7月に都議選を控える都議たちが、ここぞとばかりにアピールにいそしむ姿が目立ったのも事実である。


 ちなみに妊婦以外の患者の転院費用は支援対象外だ。小池知事はその理由について、健康保険の適用の有無に触れ「出産についてはその対象にはなっておりませんので、その違いが他の疾病を抱えておられる方の入院者とは違うという点であります」と語った。妊産婦と同等かそれ以上のハイリスク患者もいるはずだが、支援の手が差し伸べられることはない。


 既存の入院患者に負担を強いても、それだけコロナ患者の効果的な治療につながるのであれば、まだ理解できるというものだが、そうではない。


 都によるコロナ患者の入院調整が十分に機能していないという現実は、「入院・療養等調整中」とカウントされるコロナ患者が都内で7539人、自宅療養が8966人(いずれも19日午後8時現在)おり、80代で糖尿病の基礎疾患があるコロナ患者の男性の入院先が見つからず、今月11日に自宅で死亡した事案からも明らかだ。


 読売新聞は1月20日付朝刊の1面トップと社会面で、都内のコロナ患者の入院先について、都内に14ある高度医療が可能な「特定機能病院」のうち、8病院の受け入れが3人未満と少なく、一部の病院に負担が大きく偏っていると報じた。快方に向かって人工呼吸器が取れた患者を系列の中規模病院に移しているという病院関係者の「本来、こうした調整は都が行うべきだが、全くできていない」というコメントも紹介している。


墨田区、松本市は独自の工夫で病床確保


小池知事は“広報係長”に徹したが


 一方で東京都墨田区は、重症者向けの病院に入院していた患者のうち、回復した患者を一般病床に移せるよう、受け入れ先の医療機関に補助金を出す方針を決定した。高度医療が可能な病院で重症者を受け入れるキャパシティーを少しでも増やすのが狙いだ。


 長野県松本市と周辺の8自治体でも、コロナ重症者を大規模病院が集中的に受け入れ、他の病院で中等症の患者やコロナ以外の患者を受け持つという役割分担をする「松本モデル」を実現した。


 政府は今国会で、コロナ患者を受け入れない病院の名前を公表できるようにする感染症法の改正案を提出しており、その是非をめぐって議論がなされている。しかし、現行法の下でも医療関係者や自治体間の工夫によって、コロナ患者により適切に対応し、救える命を増やすための努力が区や市町村レベルでなされているのだ。


 この間、東京都は一体、何をやってきたのだろうか。


「ダイヤモンド・オンライン」でこれまで何度も指摘してきたとおり、小池知事による主なコロナ対策といえば、外出や会食を控えるよう呼び掛けることだった。ところが、高齢者の会食自粛を呼び掛けたその日に85歳の財界人が参加する会食に自らが出かけるなど、言行不一致のパフォーマンスに終始してきた。


 鳥取県知事や総務相を務めた片山善博・早稲田大学公共経営大学院教授は、昨年11月に出版した「知事の真贋」(文春新書)の中で小池知事を「コロナ関係広報係長」と痛烈に皮肉っている。具体的な記述は以下だ。


「コロナ対策は実質的に都庁組織が決め、自身はキャスターとして広報活動に徹するという役割意識で自分の居場所を見つけたのかもしれません。その方が都民の目に触れる機会が増えるから、七月投票の都知事選にもよかったのかと思います」


「あまり勉強しないで独自策を打ち出そうとすると、生兵法は怪我のもとになりかねません。広報係長に徹したのは、都庁の仕事を邪魔しないという意味では正解だったと言う人もいましたが、同感するところはあります」


「東京版CDC」は庁内で連携できず


協力金も後出しで国に劣らず後手後手


 もちろん国会議員を長く務め、環境相や防衛相などの要職を歴任し、現在は都のトップに立つ辣腕の政治家である小池知事の不勉強が、今さら許されるわけがない。


 そんな小池知事は、昨年7月の都知事選で米国の疾病対策センター(CDC)をまねて「東京版CDC」の創設を公約。その後「東京iCDC」を設けるという独自策を実現したが、「従来コロナ対策に取り組んできた福祉保健局と連携できていない」(都政関係者)という。


 もっとも、入院調整の最前線に立つ都の職員は、コロナ患者の受け入れを都内の各病院に懸命に求めてきた。ところが、「民間病院は独自の経営をしており、お願いをするには限界がある」(都幹部)。通常、公務員は既存の枠組みの中でしか動けない。だからこそ政治のリーダーシップが必要になるのだが、小池知事が都内のコロナ患者の入院調整のため、自ら積極果敢に動いた形跡はない。


 舛添要一前東京都知事は、昨年12月のダイヤモンド編集部のインタビュー(https://diamond.jp/articles/-/256212)で「政府のコロナ対策がひどい状況であることは、言うまでもありません。だからこそ、首都である東京都が模範となる取り組みをすべきなのです」と語っている。東京都知事の存在感と影響力は他の自治体トップと比べても絶大で、「都庁官僚」とも呼ばれる優秀な職員を抱え、その言動は全国の自治体や政府にも影響を与え得る。


 また都内は人口も多いが、高度医療が可能な大規模病院など医療資源もまた豊富であり、前出の都幹部も「都内はまだ恵まれている方だ。神奈川、千葉、埼玉の3県はもっと深刻だろう」と話す。小池知事はなぜ、こうした医療資源を生かし、全国に先駆けた医療モデルを構築しようとしないのか。


 それどころか、政府のコロナ対策と同様に、小池知事の施策もまた「後手後手」に回っている。例えば、時短営業をする飲食店への協力金6万円を大手企業の店舗に拡大すると18日に表明したが、これも飲食大手トップがテレビ出演などで「雇用を守れない」などと苦境を訴えた後だった。なお周辺の神奈川、千葉、埼玉の3県は最初から、大手企業の店舗も支給対象にしていた。


 冒頭で取り上げた妊婦への転院支援もSNSなどで盛り上がりを受けて急きょ決まったものだ。給付金にしても同様、メディアやSNSの議論を受けて場当たり的に対応する「後手後手」の構図である。


 ちなみに小池知事は1月14日の自身のツイートで、「3つ(広尾、荏原、豊島)の都立病院のコロナ対応の実質的専用病院化で、転院が必要となる妊婦さんには、転院に伴う紹介料、出産費用の差額分、通院時のタクシー代等移動支援を東京都で負担します」と、まるで荏原、豊島の2病院でも転院が必要であるかのような書き方をしており、誤解を招きかねない。


 そもそも小池知事は、事態を正確に把握できているのだろうか。小池知事はこれで、コロナ対策に真剣に取り組んでいるといえるのだろうか。