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安倍総理の志は死なない!!

人口減少が始まった中国…「ブルーカラーの労働者が足りない」という「まさかのピンチ」が到来していた

ついに中国の人口が減少に転じた。
世界の国々がこの「巨像」の動向を注視している。
13億という巨大な人口を抱えるこの国で、今後、どのように人口が減っていくのか。そして、それは中国社会にいったいどのような影響を与えるのか……。
ところで、こうした「人口減少」に関連して、中国では「労働者不足」という問題も懸念されされている。とりわけ、製造業にたずさわるブルーカラー層で問題は深刻だ。
2018年の段階で中国の人口問題に光を当てていた『未来の中国年表』より一部を抜粋、編集し、この深刻な問題の本質に迫る。
同書の著者であり、中国ウォッチャーとして知られ、著書やテレビ出演も多い近藤大介氏は、中国の人口問題をどう見るか。
製造業の人手不足
中国の製造業における「用工荒(ヨン ゴン ホアン)」(人手不足)は、日増しに深刻になる一方だ。
「用工荒」に関して、私はいまでも鮮明に覚えている光景がある。北京の駐在員時代に勤めていた日系文化公司のオフィスは、北京駅の真向かいのビルの中にあった。その北京駅の前の広場は毎年、春節(旧正月)の連休明けになると、「人山人海(レンシヤン レン ハイ)」(黒山の人だかり)で、歩くのもままならないほど混み合っていた。
そこまで混雑するのは、全国に2億8000万人いると言われた「農民工」(出稼ぎ労働者)が、故郷から戻ってくるのを目当てに、「招工(ジヤオ ゴン)」(労働者募集)のプラカードを掲げた、建設会社や工場などの人事担当者たちで埋め尽くされるからだ。
人事担当者たちは、「(月給)4000元(約6万8000円)!」「4500元(約7万6500円)!」などと声を張り上げながら、平身低頭で「農民工」の前に立ちはだかって、自社に呼び込もうとする。
故郷からの重い荷物を抱えた「農民工」たちは、そんな人事担当者たちを値踏みしながら、颯爽と進んでいくのである。中国が「労働者の国」であることを、実感させられるシーンだった。
大卒は余っている
ちょうどその頃、「白領(バイ リン)」(白ネクタイ)と呼ばれる大卒のホワイトカラーと、「農民工」の給料が逆転した。一人っ子たちは、親の期待を一身に背負って大学を卒業する。だがようやく就職しても、初任給は「農民工」にも及ばなくなったのである。
2017年夏に大学を卒業した「白領」の初任給は、一般職で6000元(約10万2000円)程度である。それに対し、2018年正月に北京で訪れた、ある大型宿泊施設の23歳のサービス係の女性に聞いたら、給料は8000元(約13万6000円)だという。しかも、寮と食事付きとのことだった。
中国の人口ピラミッドは、「一人っ子政策」によって、頭でっかちの不自然な形になってしまった。ところがこれに加えて、生産年齢人口も、下層に位置するブルーカラーよりも、上層に位置するホワイトカラーの方が多いという、頭でっかちの構造になってしまったのである。その結果、待遇の逆転現象が起こっているのだ。
日系企業の深刻な悩み
2018年1月に深圳を訪れた時、ある大型の日系企業の工場を視察した。その時、日本人の董事長(会長)は、最近の工員たちの特徴について、次のように述べた。
「10年くらい前までは毎日、早朝から、50人、100人と職を求める若者たちが、工場の門の前にあふれていたものだ。それで当時は、5000人もの工員を抱えていたが、いまやこちらから必死に募集しないと来てくれないので、3000人まで減った。慢性的な人手不足で、それはオートメーション化で補っていくしかない。
一昔前までの工員たちは、家賃のかからない寮に暮らして、一日三食、工場で無料の食事をし、必死に故郷に仕送りしていた。しかしいまの若者たちは、逆に親から仕送りをもらっているありさまだ。寮生活も肌に合わないようで、自分でアパートを借りる若者が少なくない。
また、以前は少なくとも2年、3年と働いたものだが、いまの若者は、きっちり3ヵ月で辞めていく人が多い。つまり、新しいスマホを買いたいとか、何らかの目的があって、そのために3ヵ月間、我慢して働いているという感じだ」
確かに工場内を見学しても、董事長の言葉が理解できた。約20年前に深圳で大型の日系工場を視察した時は、工員たちの表情が生き生きしていたのを記憶している。次に、約10年前に天津の濱海新区で、やはり日系の大型工場を視察した時には、工員たちは無表情で働いていた。
そして2018年の時は、工員たちが男女の別なく、曇った表情をしていて、やる気のなさが滲み出ていた。それはこの工場に問題があるわけではなくて、「一人っ子世代」の特徴なのである。
この時の深圳視察では、日系企業各社の総経理(社長)10人近くに会ったが、誰もが大同小異の話をしていた。
工場労働者がなかなか集まらない。集まらないから、彼らの給料が右肩上がりで上がっていく。するとコストがかかりすぎるから、工場を東南アジアにも作り、「チャイナ+1」の体制を敷く。
だが、東南アジアは中国と違って、部品の現地調達率が低いから、中国工場から必要な部品を送る。そうすると輸送費がかかって、さらにコストが上がってしまう……。日系企業の悩みは尽きないのである。
中国では、各都市ごとに毎年、最低賃金を発表している。2017年の場合、北京が月額2000元(約3万4000円)、上海が2300元(約3万9100円)、深圳が2130元(約3万6210円)である。だいたいこの2倍が、工場労働者たちの給料の目安となるため、4000元から4600元くらいとなる。日本円で7万円から8万円のイメージだ。
ちなみに、2012年の3大都市の最低賃金は、北京が1260元(約2万1420円)、上海が1450元(約2万4650円)、深圳が1500元(約2万5500円)だった。つまり、5年で1・4倍から1・6倍にハネ上がっている。習近平政権は、「2010年に較べて、2020年の所得を2倍にする」という公約を掲げているので、毎年10%以上、強制的に最低賃金を上げ続けているのである。
中国の進む道
このように、人口ピラミッドと生産年齢人において、どちらも逆三角形現象が起こっているのが、現在の中国の特徴だ。そんな中で、中国が今後、製造業を発展させていく方法は、つまるところ二つしかない。
一つは、もっと貧しい国から移民を受け入れることによって、労働力をカバーすることだ。
だが、もともと人口の少ないヨーロッパの国々と違って、世界最大の人口大国である中国は、海外からの移民の受け入れについては、抵抗感が強い。現在の14億の国民を管理するだけでも精一杯だというのに、さらに外国から移民を受け入れようという意見は、共産党政権の内部からは上がって来ていない。
もう一つの方法は、ロボットやAIなど最先端技術を発展させることによって、機械に人間の労働の肩代わりをさせることである。李克強首相が「中国製造2025」で目指しているのは、まさにこの方向なのである。