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安倍総理の志は死なない!!

一体どこで免許証を取得? 訪日中国人観光客がレンタカーで起こした死亡事故の闇 未熟でもどんどんやってくる中国運転免許事情

筆者が目にした、およそ免許取得者とは思えない運転
2022年12月21日(水)の午後2時頃、埼玉県三郷市にあるコストコ新三郷店2階の立体駐車場では出口へ向かう車が大渋滞を引き起こしていた。この日は平日にもかかわらずクリスマス前ということもあってか、駐車場は空きスペースを探す車であふれていた。筆者一家はどうにか空きスペースを探し、息子が運転する車を駐車してから1階のコストコ入口へ向かうエスカレーターに乗るための長い行列に並んだ。その行列の横には出口へ向かう車が長い列を作っていたが、その車列は渋滞し、全く前進できない状態に陥っていた。
車はどうして前進せず渋滞しているのかと思いつつ前に進むと、渋滞の理由が分かった。そこには1台の軽自動車が通路脇の駐車スペースに直角駐車を試みて、何度も失敗を繰り返していたのだった。軽自動車の運転席には若い女性が座っていて、懸命にハンドルを回していたが、はっきり言ってハンドル操作が恐ろしく下手で、直角駐車ができなくても当然かと思われた。誰が見ても至って普通な車庫入れであり、日本の自動車免許証を持っている人ならそれができないはずはないのだ。
そのうちに聞こえてきたのは、その軽自動車から外へ出て停車位置に車を誘導していた若い男性と運転席の女性の会話であった。それは日本語ではなく、中国語の普通話(中国の標準語)の会話であり、彼らの外見から判断しても男女は共に中国人であった。運転席の女性は明らかに焦って泣きべそをかいていたが、そこから醸(かも)し出される雰囲気は、自分の運転技術が未熟だからではなく、車の性能が悪いのだというような感じで、今にもヒステリーを起こしそうだった。そうこうする間に5分以上が経過し、車の渋滞はますます深刻なものとなっていった。
ついにはこれを見かねた男性が並んでいた行列を離れて、運転席の女性に代わって軽自動車の車庫入れを行い、一発で成功させたのだった。この結果、通路通行の障害が取り除かれたので、車の渋滞は立ちどころに解消されたのだった。軽自動車の車庫入れが成功したのを見届けた時に、1階入り口へ向かうエスカレーターに乗る順番になったので、筆者は運転席にいた女性が助けてくれた男性に感謝表明をしたかどうかを見届けることはできなかったが、恐らく女性は男性に対して自分の運転技術の未熟さを認めることはないように思えた。
エスカレーターに乗って1階入り口へ向かう途中で筆者は次のように考えた。
(1) 中国人の女性ドライバーがどこから軽自動車を運転して来たかは知らないが、あの未熟な運転技術でコストコ新三郷店まで事故を起こさずに来られたのは奇跡的と思える。
(2) あれ程までにひどい運転技術ということから考えて、彼女が日本の運転免許証を取得しているとは思えないので、恐らく国際免許証を持っているのだろう。しかし、中国の運転免許証を持っていても、日本で通用する国際免許証を取得することはできないはずなので、彼女がどのような運転免許証を根拠に日本で自動車を運転しているのか疑問である。
ちなみに、日本は世界的な道路交通に関する条約である「ジュネーブ条約」に加盟しているので、加盟国・特別行政区等同士であれば国際運転免許証(International Driving Permit <略称:IDP>)(以下「国際免許証」)を取得することで加盟国・特別行政区等内における自動車の運転が可能となる。しかし、中国はジュネーブ条約を締結していないので中国発行の自動車免許証や国際免許証では日本国内で自動車の運転はできない。
とにかく、筆者は彼女が未熟な技術で車を運転して、くれぐれも日本で事故を起こさないで欲しいと祈った次第であったが、一体全体彼女はどこで自動車免許証を取得したのか。
中国人一家観光客による死亡事故
話は変わるが、4月14日に岐阜県下呂(げろ)市の国道で乗用車同士の衝突により女性2人が死亡する事故が発生した。当該事故を報じたメディアの記事を取りまとめると以下の通りになる。
14日午後3時20分頃、下呂市小坂(おさか)町の国道41号で、北へ向かって走っていた中国籍で自称銀行員の龍天佑(りゅう・てんゆう)容疑者(44歳、以下「龍容疑者」)の運転する乗用車が対向車線に飛び出したことにより、対向車線を走行して来た乗用車と正面衝突した。この結果、対向車線の乗用車を運転していた愛知県春日井市神領町の花井美智子さん(70歳)と助手席にいた藤田初美さん(76歳)が心臓破裂などの原因で死亡した。
龍容疑者は一家4人で中国から日本へ観光旅行に来たもので、運転していた乗用車はレンタカーであった。事故により龍容疑者は胸部骨折の重傷を負ったほか、同乗していた妻(33歳)と息子(6歳)の2人も肝臓損傷などの傷害を負って病院へ収容されたが、幸運にも生後9ヵ月の男の子にケガはなかった。17日、下呂警察署は龍容疑者を自動車運転処罰法(第5条:過失運転致死傷罪)違反の容疑で逮捕した。龍容疑者は当該容疑を認めているという。
地元のCBCテレビの報道によれば、現場は片側一車線の緩やかなカーブから直線になる場所で、タイヤ痕などから龍容疑者がセンターラインをはみだして衝突したと見られるが、何らかの理由で龍容疑者がハンドル操作を誤った可能性があると見て、事故原因を調査中である。
「国際免許証」という抜け道
中国のポータルサイト「捜狐(sohu.com)」は4月18日付で『中国人が日本へ観光に来て自動車を運転して死者2人、無免許運転の可能性』と題する記事を掲載した。記事は事故の全容を報じた上で、「日本と中国の交通規則の違いとして、中国は右側通行であるのに対して日本は左側通行であり、日本では右折車は道を譲らなければならない」と述べた上で、龍容疑者は中国の右側通行に慣れていたが、日本の左側通行に適応できずに運転中の不適切な切り替えが事故を引き起こした可能性が強いと報じた。
記事はさらに、龍容疑者が所持していた国際免許証に対して日本のネット上で各種の疑義が提起されていると述べた。即ち、中国は国連の道路交通国際公約である「ジュネーブ条約」に加盟していないので、中国(大陸地区)の旅行者は国際免許証を直接取得することはできない。
それなら龍容疑者はどうやって国際免許証を取得したのか。偽造の国際免許証で車をレンタルしたのか。日本で合法的に自動車を運転するには次に示す2つの方法しかない。
(1) 日本の自動車免許試験に合格して日本の運転免許証を獲得した上で中国の免許証を日本の免許証に切り替える。
(2) ジュネーブ条約の加盟国・特別行政区等(2023年1月末時点で101か国と12の特別行政区等)において国際免許証を取得して、日本での自動車運転を可能とする。

上記(1)の場合は所要時間が長く、旅行で日本へ来た龍容疑者には時間的な余裕がないので可能性は小さい。(2)であれば、先にジュネーブ条約の加盟国・特別行政区等へ行って国際免許証を取得してから日本へ入国すれば車をレンタルすることは可能である。
日本では龍容疑者が国際免許証を所持していたとの報道はないが、上記の「捜狐」は龍容疑者が国際免許証を所持していたと言明している。これは恐らく中国の内部情報を根拠にしたものと思われる。
他の中国メディアが報じたところによれば、当該メディアは龍容疑者が所持していた国際免許証がフィリピンで発行されたものかを調べたが、フィリピン側からは「龍容疑者に国際免許証を発行した記録はなく、恐らく偽造の国際免許証と思われる」との回答があったという。従い、偽造の国際免許証だった可能性は否定できない。
少し前まで韓国・済州島での取得が流行だったが
中国人が日本で通用する国際免許証を取得するにはどうすれば良いのか。中国の特別行政区である香港とマカオはジュネーブ条約に加盟しているので、本土の中国人は香港とマカオで国際免許証を取得できる可能性はあるだろうが、中国本土による管理が厳しくなっている現在では容易に取得できるとは思えない。
また、中国のネットユーザーの投稿によれば、韓国の済州島に行けば、中国人が日本で通用する国際免許証を取得できるというので、調べてみた結果は次の通り。
韓国はジュネーブ条約の加盟国なので、韓国の自動車免許証を所持すれば国際免許証が取得できる。韓国・済州島の自動車学校は短期間で卒業が可能であるだけでなく、免許試験が中国語で受験可能であり、試験に合格すれば国籍に関係なく韓国の自動車免許証を発給している。このため、数年前までは中国人が大挙して済州島へ行き、同地の自動車学校を経由して韓国の自動車免許証を取得すると同時に国際免許証を取得していた模様であった。
ただし、中国国内で韓国の自動車免許証を中国の自動車免許証に切り替えることに対する規制が強化されたので、今では済州島で韓国の自動車免許証を取得するという動きは下火になった模様である。
一家四人で日本旅行を楽しもうとしていた龍容疑者は、過失運転致死罪で裁かれることになるが、その罰則は7年以下の懲役若しくは禁錮、又は100万円以下の罰金となっている。もしも彼が所持していた国際免許証が偽造物なら、その罰則は無免許と同じで10年以下の懲役になる。これ以外に女性2人が死亡していることから、民事で慰謝料の支払いが必要となる。龍容疑者が中国で海外旅行保険に加入していたかどうかは不明だが、中国の保険会社が日本で発生した交通事故に対する賠償金の支払いを認めてくれるだろうか。
とにかく、龍容疑者は不慣れな日本で安易に自動車を運転して事故を引き起こしたことで、人生に大きな汚点を付けると同時に妻子の心身に一生残る傷痕を残したのだった。
教習所激増の裏の粗製濫造
ところで、中国政府「公安部」が2023年1月に発表した統計によれば、2022年末時点における全国の車両保有量は4.17億台であり、このうちの自動車は3.19億台であった。車両ドライバーは5.02億人であり、自動車ドライバーは4.64億人であった。2022年に全国で新たに登録された車両は3478万台であり、新たに免許証を取得したドライバーは2923万人だった。この免許証を新規に取得したドライバー中の自動車ドライバー数は発表されていない。
統計によれば、1949年10月1日に中華人民共和国が成立してから2003年までの54年間で全国の車両ドライバー(免許証所持者)は1億人に達した。2003年から2014年までの11年間で車両ドライバーは3億人に達した。2014年からは車両ドライバーは飛躍的に増大し、わずか8年間で5億人を突破したが、この8年間は毎年平均で2500万人増加した計算になる。
商社員であった筆者が初めて中国に駐在したのは1985年で、場所は北京市だったが、当時自動車免許証を所持していた人々は、徴兵されて入隊した人民解放軍時代に運転技術を学んで免許証を取得した人が大部分であった。当時も中国に自動車教習所があったかどうかは分からないが、主たる自動車教習所は人民解放軍であった。当時、筆者が交流を持った社有車やタクシーの運転手は誰もが軍隊時代に免許を取ったと言っていた。
2022年6月29日付で調査会社「企査査科技有限公司」が発表したデータによれば、2022年5月末時点における中国の自動車教習所関連企業は5318社であった。自動車教習所関連企業は過去10年間に急激に増加し、2018年には最多の879社が新規に参入し、その後は2019年:766社、2020年:756社、2021年:623社と増加した。
これを地域別に見ると、第1位:広東省(1094社)、第2位:安徽省(448社)、第3位:陝西省(381社)と続く。都市別では、深圳市(広東省):478社、西安市(陝西省):280社、広州市(広東省):176社となっている。
中国で自動車免許証を取得するにはどのくらいの期間が必要なのか。理論的には45~60日間あれば自動車教習所の授業を受けて取得可能となっているようだが、大都市では一般には3~5ヵ月かかるのが普通であり、小都市や辺境地域の都市では受験者が少ないこともあって若干短くなるという。
自動車教習所の競争が激しくなれば、短期速成で免許取得を標榜する教習所が出現して、中途半端な技能で免許証を取得したドライバーが増加することになる。先に述べた車庫入れもロクにできないドライバーはそうした環境下で生み出されたのかもしれない。
命がけ、中国の自動車事情
日本・警察庁と中国・公安部の統計によれば、2021年における日本の交通事故件数は30万839件、交通事故による死者数は2610人であったのに対して、中国の交通事故件数は27万3098件、交通事故による死者数は6万2218人であった。2022年における日本の自動車保有台数(特殊用途車両と二輪車を含む)は8217万台であったのに対して中国の自動車保有台数(上記の「車両保有量」と同義)は4.17億台で、日本の5倍以上であった。にもかかわらず、交通事故件数は何と日本の方が中国より2.7万件も多いというのである。
中国の交通状況を実際に見てきた経験から言って、中国・公安部の統計は国家統計局が発表する各種統計と同様に信用できない架空の数字である可能性が高いように思える。人口が日本の10倍以上、自動車保有台数が日本の5倍以上、各地の路上で自動車事故が頻発している中国の交通事故件数が日本より少ないなどということはどう考えてもあり得ない。死者数では中国は日本の23.8倍を示しているが、この数字も相当鯖を読んでいるものと思われ、恐らくこの倍の10万人規模に達しているのではないかと思われる。恐らく、地方の公安庁から中央の公安部へ報告される事故件数や死者数が過少な数字になっているのだろう。
ちなみに、筆者の中国駐在時代の同僚は2人も中国駐在中の自動車事故で亡くなった。1人は北京市の市街区で乗っていた社有車がゴミ収集車に衝突された事故で即死、もう1人は雲南省昆明市の高速道路で客先手配のマイクロバスが運転手のいねむり運転で崖下へ転落した事故で頭部をフロントガラスに強打して脳死状態となり、日本へ搬送されてから数か月後に死亡した。こうしてみると、中国に駐在するのは命がけと言わざるを得ない。
中国で交通事故を減少させるには自動車教習の厳格化と自動車ドライバーを含む中国国民全体の交通マナー向上が必須条件だと思える。ただし、中国の国情を勘案すると、断言するが、その実現の可能性はゼロに限りなく近いと言わざるを得ない。従い、日本国内における中国人ドライバーによる交通事故を防止するためには、国際免許証の管理を厳格化し、偽造免許証の鑑別を強化する以外に方策はないのが実情である。