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安倍総理の志は死なない!!

ロシア“41に分裂”の現実味 求心力がなくなったプーチンにあるのは遠心力

ウクライナのブダノフ情報総局長が、ロシアの地図を描いたケーキにナイフを突き立て言った。「この地図はロシアの未来で彼らはいずれ分裂することをわかっている」その地図とはブダノフ氏が描いたとされるウクライナ戦争後のロシア分裂地図だ。ロシアの国土はわずかとなり、東3分の1が中国。真ん中の広い面積には“中央アジア共和国”なる国名が記されている。北方領土は日本だ。この分割には根拠も真実味もないが、戦後のロシア分裂は今、各所でまことしやかに囁かれている。その可能性を議論した。
「ロシア軍の死傷者が・・・イスラム圏で不釣り合いに発生している」
1991年、ソビエト連邦が崩壊して、ウクライナ・ベラルーシ・カザフスタン・ウズベキスタン・トルクメニスタン・タジキスタン・キルギス・ジョージア・アルメニア・アジェルバイジャン・モルドバ・エストニア・ラトビア・リトアニア、そしてロシア、15の国に分裂した。
中でも広大な国土を持ったロシアは今も21の共和国から構成される連邦国家だ。民族は実に195に及ぶ。(因みにロシアはクリミアやドネツク、ルハンスクを入れ24の共和国と言っている)
このロシア連邦が、ウクライナ戦争で敗れた場合、ソ連が崩壊した時同様15~20の国に分裂する可能性を指摘するのはイギリスのシンクタンク『王立国際問題研究所』のアッシュ氏だ。
『王立国際問題研究所』 ティモシー・アッシュ氏
「ロシア軍の死傷者がロシアの貧しい南部地域、特にイスラム圏で不釣り合いに発生している。ウクライナ戦争で、そうした地域は不釣り合いな犠牲者を出し、何千人もの人が亡くなった。兵士たちは民族の同胞が不公平な被害受け経済的にも保障されていないことに不満を持って帰ってくる。そうなればその地域で独立運動が起きるかもしれない。しかし、それでもロシアは依然として存在し、1億を超える人が領土の大部分を持ち続けることには変わりない。(中略)この戦争はプーチンによる“ソビエト連邦の再創造”という帝国的プロジェクトだった。そして多くのロシア人は“大ロシア”への回帰であり、ロシア系民族が住む土地の奪還だと主張してきた。しかし現実は厳しくこの戦争が“小さなロシア”をもたらすかもしれない。経済的、政治的、地政学的にかなり弱体化し、縮小された国になることは皮肉なことだ」
確かに少数民族の不満は我慢の限界かも知れない。例えば人口10万人当たりの戦死者を見ると、モンゴル国境近くのトゥヴァ共和国57.4人。隣のブリャート共和国55.6人に対して、モスクワ州は0.9人だ。
それでもロシアは依然として存在するというアッシュ氏の予測よりも辛辣な分裂地図を表したのは、ウクライナ・キーウでコンサルタント会社を運営するマガレツキー氏。彼が創設した『ポストロシア自由民族フォーラム』はロシアの崩壊を前提に戦後の平和を考える取り組みをしている。このグループが発表したロシア領土の新しい地図には“ロシアという国は無い”。戦後ロシアは41の国に分裂するという。面白いのは、半年前は35の国に分裂していたが、今回は41に増えたことだ。
『ポストロシア自由民族フォーラム』 オレグ・マガレツキー氏
「この地図はコンセプト。どのような国が生まれるのか…、どのような隣国があるのか…。歴史的経緯や民族の過去、占領された地域の住民の現在、将来…。つまり独立した国家を反映している地図だと思っている。(中略)地図は生き物のように変化している。この半年で“独立したい”という民族が新たに現れたので41か国に増えた。各地域のリーダーたちと経済・通信・交通などについて議論した結果だ」
マガレツキー氏はすでにいくつかの地区のリーダーと話していてこの地図ができていて去年は35だった分裂が41に増えたという。まだ強いリーダーがいない、独立の機運が高まらないといった地域もあるので、これからまだ増えるかもしれない。今は“機が熟している最中”だという。
「今のロシア連邦で遠心力が働いているのは間違いない」
“連邦からの独立”について、ソビエト連邦とロシア連邦、日本語ではどちらも“連邦”と訳すが全く別物だと前の駐ウクライナ大使、倉井氏は言う。
前・駐ウクライナ大使 倉井高志氏
「ロシア人の使う言葉だと、ソビエト社会主義共和国連邦の“連邦”は“ソユーズ”なんです。ロシア連邦の“連邦”はフェデレーション。大きな違いを一言で言えば脱退が認められるかどうかなんです。ソ連は脱退が認められた。ソユーズだから…。レーニンがソ連を創ろうとしたとき、民族自決主義に則って、それぞれの民族の自由意志で構成される連邦“ソユーズ”とした。しかし、スターリン以降力で抑えていた。憲法上は脱退することができるんだけれど、事実上はできなくなった。それがロシア連邦になって法律上もできなくなった。それが大きな違い…」
ソ連が崩壊した時14の国が独立した時は、憲法で保障された独立なので堂々と独立できたが、ロシア連邦からの独立となると簡単ではないという。それでも独立への機は熟しているのか…。
前・駐ウクライナ大使 倉井高志氏
「今のロシア連邦で遠心力が働いているのは間違いないと思うんです。中央との関係で実現するかはこれからの問題なんですが、これまでより緩んでることは確かだと…」
防衛研究所 兵頭慎治 研究幹事
「そもそもロシア連邦っていうのは、ロシア民族やロシア正教の割合が圧倒的と言いながらも多民族で多宗教国家。さらに今のロシア連邦の国境線沿いに限定される国家統合の要素は厳密にいうと無いんです。ですから強い指導者が必要になってくる。だからプーチン氏の指導力、統率力が弱まってくると分離主義的傾向が強まる」
二人の専門家によればカディロフ首長が率いるチェチェン共和国までもロシアから独立する可能性はあるという。プーチン氏が大事にしているロシア民族でもなければ、ロシア正教でもなく、プーチン氏の力が衰えれば一緒にいる方の理由ないといえるというのだ。
分裂した地域のうち地下資源が豊富な場所には、中国が手をのばし、そしてイスラム教の共和国はトルコになびく…そんな現象も考えられるという。プーチン氏にそんな遠心力が働くのか…それはウクライナの今後の反転攻勢の趨勢にもかかっている。