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なぜ東京に? 台湾の巡視船 が10年ぶりに寄港中 “台風から避難”は表向きの理由か

意外に新しい組織の「台湾海巡署」
 東京港の晴海ふ頭に2023年8月8日から17日にかけて台湾(中華民国)の巡視船が接岸していました。船名は「巡護八号」。中華民国海洋委員会海巡署の艦隊分署に所属する1000トン級遠洋巡護船です。台湾の巡視船が東京港に入ることは非常に珍しく、「巡護八号」が日本に寄港したのはおよそ10年ぶりとなります。
 海巡署は、日本の海上保安庁やアメリカの沿岸警備隊に相当する組織で、2000年1月に国防部海岸巡防司令部、内政部警政署水上警察局、財政部関税総局に分散していた船艇と権限を統合して発足しました。台湾は長らく不法船舶の監視や密輸・密漁の取り締まり、海上犯罪の捜査、海難救助などを、軍と警察、そして税関が行ってきましたが、それらの任務を海巡署に集約することで、効率的な沿岸警備体制の構築を図っています。
 2018年には海洋安全保障から環境保護、資源調査まで海洋政策を包括する中央省庁として海洋委員会が設立され、海巡署は海洋保育署や国家海洋研究院と共にその傘下に置かれました。



晴海ふ頭に接岸中の台湾巡視船「巡護八号」(深水千翔撮影)。© 乗りものニュース 提供
 一方で海巡署が発足した当初は、1970年代に日本の臼杵造船所で建造された巡防救難艦「德星」を始めとした老齢船が現役のままであり、急速な経済成長を背景に勢力を拡大する中国と対峙するには、明らかに力が不足していました。こうした背景から海巡署は老朽化した船舶の退役を進めつつ、新造船を配備していくことを決定。その結果、生まれたのが1000トン級遠洋巡護船3隻でした。
 今回、晴海ふ頭に接岸した「巡護八号」は、中信造船集団で建造された1000トン級遠洋巡護船の2番船に当たります。
 満載排水量は1914.8トン。漁業取締船として、台湾本土から離れた公海上で長期間のパトロール任務にも就けるよう居住性にも気を配った構造となっており、エンジンの振動と騒音が低減されているといいます。また、太平洋の厳しい海象にも耐えられる船体構造を採用しており、速力は20ノット(約37km/h)以上出すことが可能で、航続距離は1万5000海里(約2万7780km)以上。武装は20mm機関砲1門と12.7mm重機関銃2挺などで、このほかに船尾には救助用のボートが搭載されています。
台湾本土まで戻るよりも日本の方がベターなワケ
「巡護八号」の船体は各国の巡視船と同様に白を基調としつつ、側面にローマ字で「TAIWAN」「R.O.C. COAST GUARD」と国名と所属機関が大きく書かれています。このうち「TAIWAN」という文字は2021年に追加されたもので、最新の塗装が施されているのがわかります。
 一方、船首両舷には献身を表す「赤」と、台湾を表す「T」、海を表す「青」で構成された三色のレーシングストライプが描かれています。船首には海巡署のエンブレムを中央に配置した旗が掲げられていました。



台湾の巡視船「巡護八号」の船体側面。所属が大きく書かれている(深水千翔撮影)。© 乗りものニュース 提供
 今回、なぜ「巡護八号」が東京港へ寄港したかというと、これは連続して発生した台風とパトロールエリアが関係しています。
「巡護八号」は7月15日に台湾の高雄を出港し、太平洋上で漁船の違法操業を監視するためパトロールを実施中です。これまで海巡署の巡護船が公海でパトロールを行う場合は、外交関係を持つマーシャル諸島やパラオといった国々に寄港して補給を行っていました。今回は日本周辺を含む西太平洋地域で活動していたうえ、台風6号と台風7号が相次いで発生し海象条件が悪くなったため、台湾へ戻るより東京港へ寄った方がより確実に整備と補給ができると判断したのでしょう。
 補給と整備を終えた「巡護八号」は、東京港を出港して再び公海パトロール任務を行い、9月12日に台湾へ帰港する予定です。8月21日には農業部漁業署の漁業訓練船「漁訓貳號」が東京港に寄港しており、晴海ふ頭は台湾の官公庁船が相次いで接岸することになりました。
 ちなみに北太平洋の公海上では、サンマやサバなどを保存管理する北太平洋漁業委員会(NPFC)の加盟国・地域である日本、カナダ、ロシア、中国、韓国、アメリカ、バヌアツ、台湾、EU(ヨーロッパ連合)が、相互に乗船検査を行えるようになっています。同エリアには中国と台湾の漁船が数多く進出していることから、台湾政府も操業の実態把握と自国民の保護を目的にパトロール強化を図っています。
 そのため、今後も台湾の巡視船が、本土に戻るより距離的に近い日本の港に寄る方が良いと判断すれば来日する可能性が高いです。ゆえに、ひょっとしたら近い将来、東京港にまた台湾の巡視船が来航するかもしれません。