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安倍総理の志は死なない!!

どうやら岸田「増税メガネ」政権は瓦解しそうだ 今回の所得減税案はいったいどこがダメなのか

岸田文雄首相は「増税メガネ」という自らのあだ名が気になって仕方がないようだ。そして、あだ名の払拭のためには何はともあれ減税するといいのだろうとばかりに、主に所得税で減税を行う案を10月24日にメディアに報道させた。


より正確には、所得税で3万円、住民税で1万円の定額減税を1年間の期間限定で行い、主に住民税非課税になる低所得世帯には7万円を給付する案を提示した。


なぜ岸田首相は「メガネ」だけが印象に残るのか
岸田首相は、10月24日の衆議院本会議では、減税案について語らず、同日のテレビ番組で減税を説明した。25日の参議院の代表質問でも詳しい答弁を避けた。
一部の税制関係者と内容を詰めたのだろうが、自由民主党内の検討は経ていない。どうやら、「減税を言ったのは岸田だ」という印象を国民に与えたいらしい。


注目すべきは、自民党の参院幹事長である世耕弘成氏の代表質問だ。同氏は「支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待する『リーダーとしての姿』が示せていないことに尽きる」「首相が何をしようとしているのかまったく伝わらなかった」と苦言を呈した。まるで野党の質問のようだ。


自民党の最大派閥である安倍派に所属し参議院を仕切る世耕氏を味方につけられていないことは、岸田氏にとって相当にまずいはずだ。不人気で無策な岸田首相から、安倍派として支持しないとは言わないまでも、ある程度の距離を取ることを示したことは、世耕氏にとって政治的な得点になったのではないか。


ちなみに、岸田首相が人間でありながら「メガネ」呼ばわりされる理由は、世耕氏が指摘するとおり、リーダーとしての「姿」が国民から見えていないからだろう。いかにも官僚が書いたとおりに「しゃべらされている」印象を与える岸田氏の記者会見の発言や国会答弁は、まるで空箱がしゃべっているようであって、表情にも顔にも注意が向かない。それ自体は細いフレームなのに、顔が見えないから、メガネだけが印象に残る仕掛けである。


加えて、過去の自民党総裁選での発言や、財務省の影響が強いとみられる政権運営、防衛費の増額や、「異次元の少子化対策」の財源に対して垣間見える増税姿勢などが加わって「増税メガネ」があだ名になったものだろう。


では、今回の減税案があだ名の払拭に役立つかというと、まったくダメだろう。「増税メガネ」というあだ名に共感していた民は、例えば次のように言うのではないか。


「増税メガネの所得減税は、どうせあとから増税して取り返す“偽装減税”にすぎない。だまされないぞ」と。


今回の所得減税案のどこがダメなのか
「偽装減税」とまで今の段階で言うのは、さすがに悪意がすぎるかもしれない。しかし、今回の減税案は、経済的にも政治的にもまったくダメな代物だろう。


では「金額4万円、一律定額減税、期限1年、低所得者に7万円」のどこがダメなのだろうか。最大の欠点は「期限1年」だ。


経済的には、1回限りの給付金では恒常的な所得の増加期待につながらないので、多くが支出されずに貯め込まれてしまって消費にも景気浮揚にも効果が乏しいことが予想される。コロナ禍の最中の一時給付の効果が、いかにショボかったかを思い出すといい。


また、「4万円」にも関係することだが、今回の減税は税収の上振れの還元策だということになっている。しかし、「今年はこんなに税金を取る予定ではなかった。見込み違いがあったのでお返しします」と言われて、国民はうれしいだろうか。


税収の上振れをそもそも何に使うべきなのかという議論はさておくとしても、国民の期待は「物価高への対策としての生活支援」であるはずだ。岸田氏が本気で物価高と国民生活を心配していると信じるためには、減税の期限は「物価高を上回る賃上げが確認できるまで」であるべきだ。


今回の案では、1年限りの減税と給付金とすることで、下げた税率を元どおりに戻せなくなるリスクを避けようとしている財務省的な振り付けが透けて見える。すなわち、「この空箱男は財務省にコントロールされてしゃべっているだけだ」と国民が気づいてしまう。今回の減税案が政治的にまったくダメなゆえんである。一部に税収の上振れ分を利用するとしても、方法にも、政治的発信にも、もっと工夫があっていい。


ついでに検討しておくと、定額の減税ないしは給付というやり方自体は悪くない。この支出に対する将来の税金負担は高所得者のほうが大きくなるはずなので、「差し引き」で見ると何の問題もない。一律のほうが手続きが簡単でかつフェアだ。いつものように「所得制限を付けるべきだ」という愚論の横槍が入ってくるだろうが、一律が圧倒的に好ましい。


しかし、繰り返すが、1回きりだと効果が乏しいのだ。ダメなのは一律給付ではなく、継続性のない給付なのだ。


そもそもお金によるバラマキが悪いのではない。むしろ、バラマキ方がフェアでなかったり、効果が乏しかったり、行政コストがかかりすぎたりすることがいけない。


そもそも「(富や所得の)再分配」は財政にとって必要な機能である。現物を再分配するよりは、現金のほうが、使途が自由である分、効用が高いはずだ。ついでに言うなら、低所得者に対する給付の増額は、基準が明確でフェアなら、そう悪くはないだろう。


唯一の活路は消費税率の無期限引き下げ
所得税の減税という政策が、政治的にどの程度有効なのかについても疑問がある。今後論議される中で露呈するだろうが、話が複雑で国民にわかりにくい。しかも、年末まで検討して、来年の通常国会後の実施となるのだから、時間が間延びして、トータルで見て国民へのアピールに欠ける。


「岸田首相を応援したい」という意図は筆者にはまったくないが、「減税の岸田」を印象づけて「増税メガネ」のあだ名を返上し、さらに支持率を上げて、巷間言われるような解散総選挙を可能にする政治的状況を得たいのであれば、唯一、消費税率の期間を限定しない引き下げを打ち出す以外に方策はないように思われる。引き下げは「10%から5%へ」でいいだろう。


消費税率の引き下げも、所得税減税と同様に、実施は来年の通常国会のあととなるとしても、「岸田は物価対策として消費税率を5%に下げます」というシンプルなメッセージなら、主張すれば直ちに国民の印象を支配できる。「買い物が5%安くなる」という直接性は、国民が「確かにわかりやすい物価対策だ」とメリットをイメージしやすい。「国民のための物価対策」であることがわかりやすく伝わる。


実際の経済支援効果は買い物を通じてじわじわ広がるものなのだが、5%分値札の価格が下がるのだから、国民には極めてわかりやすい。しばらくの間は、効果を毎日実感することができる。


また、期間を区切らずに無期限とすることで、「物価上昇を上回る賃金上昇とマイルドな物価上昇の好循環を確認するまで国民生活を支援する」とする建前と、初めて整合性が取れる。


税率を下げるに際してのこまごまとした調整の難しさや、消費の現場で作業が増えることなどの報道がされるだろうが、これらはすべて「減税の岸田」に有利に働く。


野党は「消費税撤廃」など、もっと極端な旗印を掲げて選挙に臨むだろうが、先手を打って「5%に引き下げ」と大与党の現役の首相が言うのだから、かすんでしまうに違いない。


もちろん財務省は全力を挙げて抵抗するだろう。同省寄りの学者やエコノミスト、メディアなどが岸田批判に回るだろうが、多くの国民は首相を支持するだろうし、その様子を見て、「やっと空箱男から、中の人(財務省の人)が抜けたな」と思うのではないか。メガネでなく、その奥にある目玉や表情が初めて注目されるようになる。空箱に魂が入る。


ただし、岸田首相自身やその周辺の不祥事、スキャンダルが噴出するかもしれない。そうした悪材料を首相がどの程度持っているのかは、筆者にわからない。しかし、攻撃する側から見て、加減は難しい。「岸田さんは消費税を下げると言ったので、不当にいじめられている」という印象を国民に与えることができれば、首相の勝ちだ。


故安倍晋三元首相は第2次政権中の消費税率引き上げを、財務省に押し切られたものとして無念に思っていた。この点を指摘して、アベノミクスの継承をアピールするといい。消費税率の引き下げは安倍派の支持を得られるのではないだろうか。世耕氏も反対しないのではないだろうか。


岸田政権を誰がどのように倒すのか
しかし、正直な話、岸田首相に消費税率の無期限引き下げを打ち出す勇気はまったくないだろうと筆者は思っている。だとすると、不人気な岸田政権を、誰がどのように倒すのかが次の検討テーマになる。


首相に就任して「やりたいことは人事」だという、いかにも元銀行員らしい趣味を持つ岸田首相の「ライバル封じの均衡人事」を誰が破るかだが、首相の人気が低下すると、しっかり組み上げたつもりのブロックにも隙間ができてくる。


「誰が」は、既存の候補の中からも、新顔の中からも案外簡単に出てくるだろう。誰かが出ると、複数の総理・総裁候補者が争う政局が簡単に現出するのではないか。「増税メガネ」の次のあだ名がつく前に、岸田政権は瓦解に向かうだろう。