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安倍総理の志は死なない!!

「インボイス」はやっぱりダメだった…!民間コスト急上昇のウラで税収アップ、しかし日本に「メリットなし」というヤバすぎる現実

民間を叩いて「税収アップ」
2023年10月からインボイス制度が導入された。


この是非はかねて議論が百出しているが、どんなメリットがあるのか私見を示しておきたい。結論から言えば、日本全体にメリットはなく、むしろ民間に徴税協力コストが大きく、国が少しの税収増を得るだけという「金勘定の視点」の抜けた制度だと言える。


財政学では、税は効率、公平、簡素でなけれならないとする。簡素とは、政府の徴税のための行政コストと徴税に協力する民間のコストの両方を足したものが低くあるべきということである。これを踏まえて、まずはインボイス制度の内容から見ていこう。


インボイス制度の導入により、仕入れ時に払った消費税額を売上にかかる消費税額から差し引く「仕入れ税額控除」を受けることができる。しかし、インボイスは課税事業者でなければ発行できない。売上1000万円未満の消費税免税事業者は、控除を受けられない。
多くの識者は、付加価値に課税するという消費税の仕組みから言って、「仕入れ税額控除」は当然のことであり、かつ、消費税を導入にしている国ではほとんどでインボイスを導入していることなどからこの制度に賛成している。


しかし、インボイス制度の導入によって、どれだけのコストがかかり、それによってどれだけ税収が増加するかという本質的な議論はあまり見ない。


キツイ…!民間企業は4兆円の「コスト増」
税収増については、財務省が国会において増収見込み額は2480憶円、161万社が課税事業者に転換するだろうと答えている(第198回国会 財務金融委員会 第3号(平成31年2月26日)。では、この増収を得るための政府と民間のコストはいくらだろうか。


まず、政府は民間のインボイス処理後の税務申告書をチェックするだけだから、コストはかからない。


民間はどうだろうか。


不思議なことに、これに関する試算はほとんどないようである。


私がやっと見つけた試算によると、インボイスの請求書支払処理が15分増加し、経費精算処理が5分増加し、日本全国で月あたり約1.4億時間の業務負担増になり、毎月約3413億円の人件費負担になるという。3413億円は月のコストだから、年間では4兆956億円かかることになる。


(上記は、「税収の16倍以上のコスト! 年2480億円のために年4兆956億円の「インボイス対応コスト」発生の可能性【LayerX調べ】」を参照した)


なおここで1枚当たりの処理時間から全体の処理時間を計算するには、宮本勝浩「請求書の電子化による経済効果」(『現代社会と会計』第15号、2021年 3月)の請求書発行枚数の推計値を用いている。


これが正しいのかどうか私にはよく分からないが、会計事務所の方々に聞いてみると、手作業でやればそのぐらいかかかる、慣れれば短くなるが、その半分ぐらいはかかるだろう、とのことである。


もちろん機械でやればそんなにはかからない。しかし、10分の1にはならないのではないかとのことだった。すると年間で4兆円ではなくても4000憶円はかかるということである。零細業者であれば手作業ですることになるので、それなりの時間コストはかかるだろう。


実際に、会計事務所では、インボイスで仕事が増え、インボイス残業が発生しているとのことである。


日本全体で見ると「デメリット」になった…!
事業者にとってはコストだが、会計事務所にとっては売上だから、日本全体で考えればこれはこれで構わないのではないかという考えもあるだろう。しかし、そうとはならないようだ。


まず、インボイス処理費用はほとんどの事業者に課せられるものだから、費用は価格に転嫁できるだろう。であれば、たしかに最終的に名目GDPは上昇するが、そこには落とし穴がある。なぜなら、その分価格は上がっているのだから、実質GDPは増加しないのである。


原油価格の上昇で物価が上がり、名目GDPが上がっても実質GDPは上がらないのと同じ理屈である。


2480億円の税収増に対して、4000億円程度の民間の徴税コストの増加があると、民間にとっては合計の6480億円の負担となる。


民間は踏んだり蹴ったりであり、日本全体にとってもうまみなどない。


もちろん、この試算には、異論があるかもしれない。


しかし、私が不思議に思うことは、ある政策を採用する時にこの国ではそれにいくらのコストがかかるのかという金勘定の議論をしないことなのだ。


さらに後編記事『「年収106万円」問題の解決が「家庭の貧困」を救う…!インボイスで見えた!カネの計算が苦手な政府の「落とし穴」、そのヤバすぎる中身』では、インボイス制度だけじゃない、日本のコスト意識のなさや全体的なメリットを計算しない悪しき弊害の例をさらに詳しく見ていこう。