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安倍総理の志は死なない!!

「リニア妨害」川勝知事が議会で激ヅメ…過去に否定した“解決策”を今さら主張する自己矛盾


リニア中央新幹線の着工を認めない川勝平太静岡県知事の出した解決策が、波紋を呼んでいる。かつて本人が否定していた「部分開業」案だったためだ。静岡県議会では川勝知事が激ヅメされるシーンも目立ってきたという。(イトモス研究所所長 小倉健一)


「仮定だらけの飛躍した結論」


県議会で川勝知事への厳しい糾弾


 その言い草はまるで「『飛行機が墜落するかもしれないから乗るな』と言っているような議論にしか聞こえない」と議会からも厳しい指摘を受けるようになった、リニア工事着工を妨害し続ける川勝平太静岡県知事。圧勝した静岡県知事選挙から2年半が過ぎて、だんだんと包囲網が狭まっているようだ。
 12月7日に行われた静岡県議会で、「リニアトンネル工事による国の有識者会議と県の専門部会との意見対立が続いておりますが、県の専門部会は川勝知事の意向をくんだ学者やコンサルもおり、その会議たるや、仮定だらけの飛躍した結論で、極論すれば、まるで『交通事故で死ぬかもしれないから車に乗るな』『飛行機が墜落するかもしれないから乗るな』と言っているような議論にしか聞こえてきません。工事をやらせないように遅らせようとするネガティブな議論しかしてないように思われます」と川勝知事を糾弾したのは、桜井勝郎県議(無所属)だ。



過半数を超える自民党が


県知事選では負け続けるのは奇妙


 川勝平太静岡県知事は、これまでに何度も失言や暴言を繰り返してきたにもかかわらず、現在4期目を迎えている。この事実は静岡県の政治環境の特異性を示している。県議会の議席は本来68席だが、現在は1人の欠員があるため、実際には67人の議員がいる。自由民主党(会派名は自民改革会議)は41議席を持ち、半数を大きく超えている。一方で、川勝知事を支持する「ふじのくに県民クラブ」は17議席、公明党は5議席、無所属が4議席となっている。


 このように自民党が静岡県議会で大きな力を持っているにもかかわらず、県知事選では連続して敗北していることが、静岡県の政治状況の特異さを示している。県議会において自民党がここまで圧倒的な勢力を保持しているのに、県知事選や国政選挙では同じ傾向が得られないのは、奇妙である。


“県議会のドン“が不在で


会派はバラバラの状態


 地方レベルの選挙では自民党が圧倒的優位に立つが、より大きな規模の選挙では異なる結果が出るのは、地域住民の投票行動の違いや、候補者の資質、政治的なイメージなど、さまざまな要因が絡み合っているからだろうが、自分以外の選挙や、県議会での意思決定で、一つにまとまれないのは静岡自民党の体質かもしれない。


 静岡県議会が川勝氏を知事職からいまだに引きずり下ろすことができない状況の中で、2025年6月に予定されている次の静岡知事選に、自民党から強力な対抗馬が出るのかどうかが問題となっているが、静岡県選出の自民党国会議員の存在感はない。


 比例復活で当選した塩谷立衆議院議員(安倍派・座長)は、2017年の前々回の知事選で細野豪志衆議院議員(当時民進党、現在自民党)の立候補の意思を黙殺し、2021年の知事選では1年前から準備したにもかかわらず有力候補を立てられずに大敗を喫した。さらに、最近の安倍派の裏金問題で、当面の間、表舞台に立つことはできないだろう。


 塩谷氏以外にも、静岡県には、上川陽子外相や城内実自民党静岡県支部連合会会長などがいるが、彼らは国政において外交分野の経験が多く、川勝知事への対抗に積極的な動きを見せていない。彼らには県内の重要な問題に対する熱意が不足しているように見える。


 先日、採決された川勝知事への不信任決議案は、地方自治法第178条の規定により、議員数の3分の2以上が出席し、その4分の3以上の賛成が必要だが、1票足らず否決された。自民党職員の一人はこう解説する。


「川勝知事を支持する『ふじのくに県民クラブ』会派の議員たちが、もし1人でも反対に回っていれば、不信任決議が可決された。しかし、これを実現できるような寝技を得意とする自民党の議員がいなかった。静岡県は東部、中部、西部と地域ごとに異なる気質を持っており、自民党の県議団にもそれぞれの地域から声の大きい議員がいる。しかし、全体をまとめ上げることができるような強力なリーダー、いわゆる“県議会のドン“が不在で、結果として会派はバラバラの状態にある。議会は県政に絶大な力を持つにもかかわらず、川勝知事の好き勝手を許してきたのは議会の責任だ。現在、世論は川勝知事に大きな反発を示しているのだから、議会がもっとアグレッシブに行動すべきだ」


「なめられてるんだよ、完全に!」


県議会と知事の緊張関係


 とはいえ、川勝知事に吹く風向きは随分変わってきたようだ。文化事業「東アジア文化都市」の発展的継承センターの建設に関して、川勝平太静岡県知事は議会の承認を得る前に、「東アジア文化都市を継承する拠点を三島市に作りたい。土地を物色していて、『詰めの段階』に入っている」と発言し、独断で三島市に拠点を造る計画を進めていることを発表した。


 これに対して、県議会のある議員が「訂正させろ!もうちょっと闘う姿勢を見せないとだめ!なめられてるんだよ、完全に!訂正させなきゃだめ!」と強く反発するなどした結果、県議会は川勝知事に発言の訂正を求める決議案を全会一致で可決した。この状況に慌てた川勝知事は、自身の発言を謝罪し、計画を白紙に戻すと表明した。この一連の出来事は、現在の県議会と知事との間の緊張関係を浮き彫りにしている。


川勝知事の解決策「部分開業」案は


本人が過去に否定していた


 川勝知事が議会で激ヅメされるシーンも目立ってきた。10月10日の記者会見で川勝知事は「私がJRの意思決定者であれば解決策を出せる自信はある」と話した。静岡県に10年で1600億円を超える経済効果があることがわかっているリニアの開業を、川勝知事がただ妨害し時間を引き延ばしているのは、なぜなのか。関係者は一様に疑問に思っていたものの、地元で川勝知事を応援する静岡新聞を中心に、それについて聞くことを避けてきた。


 しかし、12月12日の県議会では、中田次城議員(自民)が「解決策とは一体何なのか?」と質問した。川勝知事は「JR東海との対話を速やかに進めるために、意思決定者である丹羽(俊介)社長には強いリーダーシップを持って取り組んでほしいとの思いを述べたものである」といつものようにはぐらかしたものの、中田議員は「ルート変更を意識して言ったのか?」と再度詰め寄ると「ルート変更は念頭にない」と否定した。


 そして、重ねて「解決策」とは何なのかについて質問を受けた結果、「現行ルートを前提にした上で、できるところから、つまり開通できる状況になった部分から開通させることが営業実績となり、解決策となると考えている」などと発言した。


 ゴールポストを動かし続けてきた川勝知事が、議会に激ヅメされて、この場で表明させられた「解決策」とはなんと「部分開業」だったということだ。「部分開業」が静岡工区の問題解決に一体どうつながるというのか。しかも、この部分開業案は、川勝知事自身が過去に実現が難しいものとして、すでに主張を取り下げたものだ。この答弁を聞いた誰もが耳を疑ったことだろう。


 つまり、一連の質疑を通して、川勝知事には解決策などなく、とにかく建設を止めろと言っているだけであることがハッキリしてしまった。


解決策がないのに


リニア推進を表明することの矛盾


 川勝知事は、表向き「リニア中央新幹線の工事着工を推進する」と言いながら、実際には工事を徹底的に妨害する戦略を取っていた。しかし、議会によるこの鋭い質問を受けて、その発言が単なるうそであることが明らかになった。このように二枚舌を使って事実をごまかし続ける知事に対しては、メディアも議会に負けないよう、川勝知事の発言に対してしっかりと追及する必要がある。


 静岡県知事の定例記者会見の模様はYouTubeで公開されているが、川勝知事が質問に直接答えず、関係のない自説を延々と続けることが多い。多くの場合、メディア側は2回の問い詰めで諦めてしまうことが多いが、記者たちは細かく質問を詰めていくべきだ。不信任案の決議を恐れる川勝知事は、議員の質問には真摯(しんし)に答えざるを得ない状況にある。メディアだって、その気になれば、川勝知事の本音の答弁を引き出すことが可能だろう。


 川勝知事には「解決策がない」ことが明らかになった今、明らかにしておくべきは「解決策がない(川勝知事にとってリニア計画を止めるしか道はない)のに、リニア推進を表明することの矛盾」を答えさせることだ。どんなにはぐらかしを弄(ろう)しても、詰め将棋を一手、一手打っていくような徹底した追及がここでは必要だ。


 この矛盾を認めさせることで、この2017年に始まった川勝知事の一連のリニア妨害が、ただの嫌がらせ、ムダだったことが判明する。そうなれば、この間の県政停滞の責任を取らせるべきであり、不信任決議案提出の、大きな、大きな大義となり得よう。


 知事任期満了を待つと、川勝知事の対抗馬が与野党間で乱立して、川勝知事の再選に有利に働く可能性が高い。任期途中で突然の知事選へと持ち込むことで一対一の対決ができるかもしれない。そうなれば、勝てる可能性はグンと増すだろう。