Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

岸田降ろしと参院選大敗を経て自民が野党転落も

これだからねえ…


自民党はリクルート事件以来の難局に直面
塩田 潮 : ノンフィクション作家、ジャーナリスト
2023年12月26日
12月26日、自民党は政権復帰から11年を迎えた。長く「1強」を誇った自民党が、派閥のパーティー収入の政治資金収支報告書への不記載による裏金疑惑という直撃弾に見舞われ、政権崩壊の危機に直面している。
1988年に発覚した未公開株譲渡によるリクルート事件に匹敵する激震となるのでは、という見方が広がる。35年前は、当時の竹下登首相と次期総裁候補の派閥指導者が軒並み追及を受け、派閥政治が全滅状況となった。翌1989年の首相交代、参院選大敗による与野党の議席数逆転、1993年の初の非自民政権誕生という激変につながった。
リクルート事件より悪質?
今回はそれ以上に悪質という指摘もある。日本維新の会参議院議員会長の浅田均氏は2023年12月14日、インタビューで、「政治資金規正法、政党助成法を作って、それを守るべき総理大臣と政党が、率先して法を犯している。税務署長の脱税の1万倍の重い罪を背負ってしかるべき犯罪的行為、と客観的に見えます。選挙をやったら、ぼろ負けすると思いますね」と感想を口にした。
自民党総裁の岸田文雄首相はこの事態をどう受け止めているのか。漂流する泥船は沈没寸前、能力も気力も限界で、2023年12月末までに辞意表明も、という推測も飛び交ったが、何とか持ちこたえて「越年・続投」となりそうだ。
粘り強さとしぶとさを「鈍感力」と評する見方もある。首相は安倍派衰退と後継候補脱落という情勢を見て、むしろ政権維持に有利な流れととらえている可能性もある。
首相は2023年、解散・総選挙に2度、意欲を示して不発に終わった。狙いは2024年9月の自民党総裁任期満了時の再選であった。「総裁選前の衆院選」で勝利を握れば総裁再選が確実に、という計算だったが、支持率低迷で踏み切れなかった。
内閣支持率は12月調査で朝日新聞23%、共同通信22.3%。時事通信17.1%と、自民党政権復帰後の最低率を更新中だ。記録的不人気に、裏金疑惑問題が重なった。
政権は八方ふさがりだが、首相自身はこの苦境を逆手に取って、「総裁選前の衆院選」を仕掛けなくても対抗馬不在で総裁再選は可能に、と踏んでいるかもしれない。「危機突破・政権再浮上」の決意を固め、起死回生の一手を模索しているように映る。
岸田流脱出策は、高株価に支えられた景気上昇、2024年度予算の成立による経済への好影響、それに2024年春の国賓待遇による訪米計画などを想定していると思われる。
官僚依存と派閥重視に傾斜か
一方で、自民党内の反岸田感情による「岸田降ろし」の動きの封じ込めと、伝統的自民党支持層の岸田離れ阻止が政権継続の必須条件という明確な認識があるのは疑いない。持論の「現実主義的対応」で、首相就任以来の「官僚依存」と、岸田派・麻生派・茂木派の党内主流3派を頼りにする「派閥重視」に、ますます傾斜すると見られる。
だが、それで対応が可能と判断しているとすれば、「首相失格」と国民から烙印を押されるだろう。現在の自民党はリクルート事件以来の大きな難局に直面している。
首相の思惑とは異なり、自民党内の最大の関心事は、総裁選の行方ではなく、2025年10月に任期満了を迎える衆議院議員の次期総選挙と2025年夏の次期参院選で、有権者が自民党にどんな鉄槌を下すかだ。
政党が存亡の瀬戸際に立たされたときに「解党的出直し」の必要が叫ばれるが、今はその局面である。一刻も早く解党的出直しに着手し、国民の信頼を回復しなければ、1993年と2009年の野党転落の再現も、という懸念が高まっている。
向こう1カ月で変身できるか
解党的出直しの第1は、派閥政治打破である。最大派閥の安倍派は壊滅状態だが、主流3派も含めて、岸田首相が自ら全党で実質的な派閥解消を断行できるかどうか。
第2は、「官僚依存」や「派閥重視」の姿勢ではない新型のリーダーをトップに擁する必要がある。国民に向かって、達成目標や挑戦のシナリオを明示して、それを支持する民意の幅広い同意と共感を背に、命懸けで取り組む指導者が求められるが、対極のタイプの岸田首相が民意結託型に変身を遂げることができるか否か。
2つの条件の成否が政権の命運を左右する。ノーなら、新年早々にも早期交代論が噴き出すに違いない。連動して、党内で「岸田降ろし」が顕在化する展開も予想される。
残念ながら、2023年末の時点で、岸田首相からは、派閥政治打破や民意結託政治への転換の気配はうかがえない。「鈍感力」も一つの武器だが、国民も自民党内の空気も、自民党の再生・出直しに時間的な余裕があるとは思っていない。2024年1月の通常国会開幕までの向こう約1カ月がトライのぎりぎりの期間である。
35年前と同じ流れなら、2024年は首相交代、2025年の参院選は与党過半数割れ、次に自民党野党転落という場面も起こりうる。岸田首相は歴史から何を学んでいるかが問われる。