ウクライナ戦争の【戦術的勝利】【戦略的敗北】
全世界のRPE読者の皆様、こんにちは!
北野です。
(@ごく一部、北野の有料講座のPRが含まれます。)
今回は件名に【重要マーク】をつけました。
というのも、今回の話を熟読することで、皆さんの視点が
ガラリと変わるかもしれないからです。
まず、読者の鳥人さまからのメールをご紹介します。
【 メール転載ここから▼ 】
〈いつもお世話になっております。
鳥人です。
昨日ウクライナで仕事をしていた友人から
「ウクライナはもうダメだ。
ロシアの圧勝。
ウクライナはこれまで健常者だけの徴兵だったが、今や障
碍者も含めて徴兵し戦場に送り込んでいる。
どう考えても持たない」
という話を聞きました。
北野さんの収集されている情報ではどんな感じなのでしょ
うか?
ウクライナは致命的な戦略的失敗をしてしまったとのこと
ですが、
「ロシアの負けは決まっている(戦術的成功、戦略的失敗)
」
と仰っていた北野さんのコメントを希望にしていたのです
が、今後の展開はどうなると予想されていますか?
(以下省略 @@@つづきは、「おたよりコーナー」で)
【 メール転載ここまで▲ 】
鳥人さまありがとうございます!
このメールは、非常に重要な内容を含んでいます。
まず、ウクライナの戦況をざっくりお話ししましょう。
2023年1月、プーチンは、ゲラシモフ参謀総長をウクライ
ナ特別軍事作戦の総司令官に任命しました。
ゲラシモフは、ロシアの「ハイブリッド戦争理論」を考案
した世界的に有名な戦略家です。
それで世界の軍事関係者は「プーチンがいよいよ最終兵器
を出してきた!」と思ったのです。
プーチンはゲラシモフに「3月中にルガンスク、ドネツク
州を完全制圧しろ!」と命令しました。
ところが、ゲラシモフはそのミッションを完遂できません
でした。
4月頃になると、民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジ
ンとロシア軍の対立が激しくなってきました。
5月、プリゴジンは、
「弾薬が70%不足している!
ショイグ!(国防相)
ゲラシモフ!(参謀総長)
弾薬はどこだ~~~~~~~~~~~!?!?!?!?
!」
と絶叫していました。
覚えておられる方も多いでしょう。
そして6月23日、彼はいわゆる「プリゴジンの乱」を起こ
したのです。
ゼレンスキーは6月、「反転攻勢を開始する!」と宣言し
ました。
上記のように、ロシア軍はボロボロに見えた。
それで、「ウクライナ軍いけるのではないか??」との期
待が高まりました。
しかし結果として、2023年の反転攻勢は失敗に終わったの
です。
理由について、ここでは解説しません。
ウクライナ軍は、「致命的戦略ミス」をしました。
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ださい。
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(@ウクライナの致命的戦略ミスは、来月号で話していま
す。)
そして、10月から「イスラエルーハマス戦争」がはじまり、
アメリカはイスラエルも支援しなければならない。
欧米のウクライナ支援の情熱は2022年ほどではなくなって
います。
結果、2024年は「停戦の話」がたくさんでてくるようにな
るでしょう。
欧米は、ゼレンスキーに、
「クリミア、ルガンスク、ドネツク、ザポリージャ、へル
ソンを『ロシア領と認めろ』とは言わない。
だが、現状維持で停戦してくれ」
と迫るようになるでしょう。
そして、ウクライナにとって最悪なのはトランプさんが大
統領に返り咲くことです。
トランプさんは、「大統領になったら真っ先にウクライナ
支援をやめる」と公言しています。
そして、彼なら実際に支援をやめる可能性が高いでしょう。
というわけで、ウクライナの未来は厳しいものがあります。
ここまでがウクライナ戦争の現状と展望です。
しかし、ここからが本題です。
▼私は、何を言っていたのか?
鳥人さんのメールに戻ります。
〈「ロシアの負けは決まっている(戦術的成功、戦略的失
敗)」
と仰っていた北野さんのコメントを希望にしていたのです
が、今後の展開はどうなると予想されていますか?〉
ーー
そうです。
私は、2022年2月24日に戦争がはじまる前から、
「ロシアがウクライナに侵攻すれば、戦略的敗北は不可避」
と書いてきました。
しかし、それは「ウクライナ軍が勝つ」という意味ではあ
りません。
たとえば、『現代ビジネス』2022年2月16日
(@つまり侵攻がはじまる8日前)の記事。
タイトルは、
『全ロシア将校協会が「プーチン辞任」を要求…! キエフ
制圧でも戦略的敗北は避けられない』
↓
https://gendai.media/articles/-/92504
です。
後半「キエフ制圧でも戦略的敗北は避けられない」
とはどういう意味でしょうか?
普通に考えたら、
「キエフを制圧したら勝利ではないのか?」
と考えませんか?
そこで、次のフレーズ、【 戦略的敗北 】が重要になっ
てきます。
▼戦術的勝利が戦略的敗北につながるとは?
皆さん、仲の悪いAさんとBさんをイメージしてください。
Aさんはある日、Bさんを突然襲って、ボコボコにしまし
た。
Bさんは血まみれで道路に倒れていいます。
Aさんは、「俺はBに勝った!」といいました。
Aさんは、嫌いなBさんをボコすことで、
【 戦術的勝利 】
をおさめたのです。
しかし、この【 戦術的勝利 】がAさんの苦しみの原因
になります。
まずAさんは、傷害罪で逮捕されました。
AさんがBさんをボコしたことは、ニュースに出てしまい
ました。
そして、取引先から、「あなたの会社とはもう取引できな
い」と関係を切られてしまいました。
「犯罪者の会社からはもう買わない!」とお客さんの数は
激減しました。
Aさんは、確かにBさんをボコして【 戦術的勝利 】をし
ました。
しかしその結果、前科者になり、取引先と顧客を失い、貧
乏になり、社会的に孤立することになったのです。
そう、Aさんは、嫌いなBさんをボコしたことで
【 戦略的敗北 】を喫したのです。
ここまで、ご理解いただけたでしょうか?
▼プーチンとロシアの【 戦略的敗北 】
この話がわかれば、私の言いたいこともご理解いただける
でしょう。
現状が続いていけば、ロシアは、クリミアとルガンスク、
ドネツク、ザポリージャ、へルソンを支配したまま、停戦
にもちこめるかもしれません。
そして、ロシアは2022年9月に、ルガンスク、ドネツク、
ザポリージャ、へルソンを、一方的に併合しています。
だからプーチンは、「ウクライナ特別軍事作戦で、ロシア
の領土が増えた!だからロシアの勝利だ!」と宣言するこ
とはできます。
しかし、それはしょせん【 戦術的勝利にすぎない 】と
いうことです。
ウクライナ侵攻によって、ロシアとプーチンに何が起こっ
たか、少し振り返ってみましょう。
●国際的に孤立した
・2022年3月2日、国連総会はロシア非難決議案を採択し
ました。
これを支持した国(つまり反ロシア国)は、141か国。
これに反対した国(つまり親ロシア国)は、わずか4か国
でした。
ベラルーシ、北朝鮮、シリア、エリトリアです。
ロシアの位置づけは、これら「ならず者国家の親分」です。
・プーチンは、「戦争犯罪容疑者」になった
国際刑事裁判所(ICC)は2023年3月、プーチンに「逮捕
状」を出しました。
ウクライナの子供たちをロシアに誘拐した容疑です。
そうプーチンは、ICCの「戦争犯罪容疑者」になったので
す。
これでプーチンは国際刑事裁判所の加盟国124か国に行け
なくなりました。
行けば逮捕されるからです。
ちなみにプーチンは、2度と日本にこれません。
日本はICCの加盟国なので、来日したプーチンを逮捕する
義務があるからです。
●NATOが拡大した
「ウクライナ侵攻」の理由の一つは、「NATO拡大を阻止
すること」でした。
ところが、プーチンはNATO拡大を阻止するどころか、
NATOを拡大させてしまいました。
ウクライナ侵攻に恐怖した中立国のフィンランド、スウェ
ーデンがNATO加盟を決めてしまったからです。
フィンランドは2023年4月、NATO加盟国になりました。
スウェーデンについては、トルコやハンガリーの反対でて
こずっていますが、近い将来加盟するでしょう。
●ロシアは、「旧ソ連の盟主」の地位を失った
プーチンは、旧ソ連圏を「ロシアの勢力圏」と考えていま
した。
ところが、ウクライナ侵攻でロシアは、「旧ソ連の盟主」
の地位を完全に喪失しました。
旧ソ連各国の動きを見ると、
・ウクライナ、モルドバ、ジョージアが、「EU加盟申請」
をした。
・アルメニアは、2022年、2023年に、アゼルバイジャンと
戦争をした。
この時、ロシアを中心とする軍事同盟CSTOは、アルメニ
アを助けなかった。
それでアルメニアは、CSTOから脱退する意向を示してい
る。
・中央アジア諸国(カザフスタン、ウズベキスタン、キル
ギス、タジキスタン、トルクメニスタン)は、ロシアを捨
てて中国についている。
昨年5月「中国中央アジアサミット」が開かれ、
「中国中央アジア運命共同体」の創設が決まった。
現状「ロシア圏」にとどまっているのは、ベラルーシだけ
でしょう。
●ロシアは、中国の属国になった
ウクライナ侵攻の結果、最大顧客だった欧州がロシア産原
油、天然ガス、石炭を買わなくなりました。
またロシアは、SWIFTから追放され、ドル、ユーロでの貿
易が困難になりました。
結果、ロシアは、
原油、天然ガスを中国に、大量に激安で【 人民元 】で
輸出するようになりました。
そう、ロシアは、人民元圏に組み込まれ、中国の属国と化
したのです。
どうですか皆さん?
ロシアは、完全に戦略的に敗北しています。
そしてこうなることは、プーチンがウクライナ侵攻を宣言
する前からわかっていたことなのです。
▼戦術脳と戦略脳
というわけで、ロシアが現状維持で停戦を実現したとして
も、
ロシアの【 戦略的敗北 】は決定済みなのです。
ちなみに最近、「中国が勝つのではないですか?」という
質問が増えています。
長くなるので、これについては別の機会に。
しかし、皆さん思い出してください。
1940年、ヒトラーは1カ月で大国フランスを降伏させまし
た。
それを見た日本人の多くは、「ナチスドイツ勝つんじゃね
?」と思った。
それで、日独伊三国軍事同盟締結という大失敗を犯したの
です。
今、「中国が勝つんじゃね?」と主張している人たちも、
当時「ヒトラー勝つんじゃね?」と主張していた人と同じ
と言えるでしょう。
日本も、「満州事変」や「真珠湾攻撃」など
【 戦術的大勝利 】が【 戦略的敗北 】
につながる例がありました。
「戦術脳」は、短期的、近視眼的です。
「戦略脳」は、長期的、大局的です。
30年代、40年代の日本の指導者は、「戦術脳」だったので、
敗北したのです。
今の指導者は???
「戦術脳」」と「戦略脳」。
これは非常に重要なテーマなので、本を出すことにしまし
た。
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